ある小さな恋の物語⑨1度目のcatastropheに向けて③
軽い交流のつもりだったのだが、思いの外落ち込んだ表情を浮かべる腹違いの弟に、兄二人は兎にも角にも、ストラス公の正妻でもある"母上に逢え"と口にする。
確かに自分の勝手な都合で、厳格も優しい"義母上"に罪悪感を感じるよりも、逢いたがっているというのなら、確り顔を顔を見せる事が、親孝行の様な気がした。
「解りました、兄上。それでは、本日の公務が終わったのなら母上の所に顔を出してこようと思います。
それに、丁度スパンコーンの事も少々相談とお尋ねをしたい事もあったので、それもさせて貰おうと思います」
罪悪感に落ち込んでいた表情を持ち直し、サブノックという国のストラス家の男子ににしては、飄々とした人の良さそうな顔に戻し、そう返事をする。
最初から、真面目に公務ばかりに努める弟を揶揄うつもりもあって絡んでもいたのだが、口にも表情にも出さないが、母にとっては末っ子扱いの弟を向かわせようと考えていた兄達は笑って頷く。
「そうそう、母上は甘えられるわけじゃないけれど、相談事をされるや頼られるのは何かと嬉しいんだ」
「ついでに、結婚相手に気の強い女人を紹介して欲しいって言えばいいよ。
母上なら、サブノックでの貴婦人達の繋がりで、そういった女人というか、気の強い、尻に敷いてくれる様な御婦人を見つけてくれるさ」
弟が母の元に行くという言質を取った2人の兄は、上機嫌になってそんな事を口にしていた。
「ところで、話は戻しますが、どうして兄上達は私の御婦人の好みを知ったのですか?」
スパイクは1人、かつて自分が護衛騎士を務めた、この国の護衛騎士の賢者にしか話をしてはいないので、出所はそこでしかないと見当はついている。
ただ知れ渡るにしても賢者から発生をして、どういう流れで以て、2人の兄の元へと伝わったのかが気になった。
2人の兄も、腹違いの賢い弟が大方の見当をつけているのは見越している様で、また少し悪戯坊主の調子で言葉を口にする。
「そりゃあ、朝も早くに賢者殿が、"可及的速やかに連絡したい"からと将軍としての親父殿が尋ねてきたからだよ」
「流石に早朝ともなると、国の護衛の兵士もいないんで、俺とコイツで護衛の代わりをしながら話をきいたって事だな」