ある小さな恋の物語⑧catastropheの手前⑦
「でもある意味では、こういう状態、国の事を中からダメしている様な事を"獅子身中の虫、獅子を食らう"でしたか。そんな諺がありましたし、セリサンセウムという国の現在は、やはりそんな感じに進みそうになってしまっているのでしょうか」
向日葵に獅子をあしらった物を国旗とする大国を頭に描きながら、スパイクが隣に腰掛ける賢者に語り掛けていた。
「そんな"やはり"なんて言い回しを使っていると、まるで今の大国の現状を予見していたみたいじゃあないか、スパイク」
和やかに過ごそうとばかりに考えていた夜は、どうやらもう無理だと悟ったサブノックの賢者と、その元護衛騎士は"毒を食らわば皿まで"だという感じで、政治の方面の話しを始めていた。
ただ、賢者には話す内容にに縛りがあるので、その対象は異国の大国で、しかも言葉遊びをする様に、諺を絡めてそんな話を続ける。
「……予見をしていたのは私じゃないですし、実際していたのは"心配"で、その心配をなさっていた方は、その国の宰相をなさって"いた"人ですから」
スパイクが具体的な言葉を出さなくても、賢者の方は直ぐにその御仁が誰であるかは、直ぐに気が付いた様で、片眉を上げていた。
「何だい、じゃああんた、南国へ出張頼んだ時、"悪魔の宰相"と"会って"いたのかい?」
「"会って"と言いますか、ぶっちゃけてしまいますと、利害一致という事であの時間限定で、南国で共謀していたのが真実です。そうでなければ、あそこまで巧く1人でやれたかもしれませんが、1人でしたなら物凄い苦労する所でした」
賢者の言葉に笑顔を浮かべて、懐かしそうにに答えてはいたが直ぐに引っ込ませてしまうのは、その"悪魔の宰相"殿が辿った人生を知っているからでもあった。
「……あんたは、それなりに賢くて大人しくて優しくて強い位に思っていたんだけれどもねえ。そんな裏の裏をかくみたいな事が、出来てたんだねえ」
「賢者殿、それは褒めてるんだか貶しているだか、判りませんよ。
まあ、物事を正面から堂々と片づけたいと常々している父上の息子としては、こういった所が出きるのは、"誰に"似たんだろうという気持ちになりますけれど」
先程は、片眉を上げる程の反応をしていたのに、今度の護衛騎士の言葉には賢者はそっぽを向いていた。