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ある小さな恋の物語⑧catastropheの手前⑥

「本当は、今夜はこの仕事が終わったなら、スパンコーンにも良い子が出来たから、スパイク(あんた)も腹を括れ位を言って、からかい尽くそうぐらいに考えていたんだけれどねぇ」


元護衛騎士に灯して貰った煙管を吹かしながら、サブノックの賢者は極々残念そうにそんな意見を口にする。


「いえ、こちらに来た時から、結構揶揄われていた様に思うのですが……」

「おや、そうかい?」


スパイクが掌を胸元で挙手する形にしていたなら、老婦人はすっとぼけるように視線を右上に向けていた。


「父上に、報告をしますか?」


スパイクは自身とスパンコーンの実の父親で、この国の武将である人物に、"ストラス家"を探られている事も含めて、一度は引いた大国に戦を仕掛けようとしている一派がいるのを報告するかどうかを尋ねる。


「……普通は、私《賢者》なんかすっ飛ばして、父上《将軍》殿に報せる物だと思うんだけれどもねえ」


賢者は返事はせず、煙管に詰めた煙草がもう灰になった所で、スパイクがこの部屋の主よりも、勝手知った様子で灰皿を取り出し、差し出し、”ありがとうよ”と灰を落とした。


「……将軍殿は、セリサンセウムと戦いたいみたいだからね。

でも、今回探りをいれてきた奴らとは、全く違う、真っ当に戦いたいみたいだ」

「ええ、そうです」


煙管に煙草を詰め直しながら、スパイクの方を見ずに今度は賢者が尋ねる。


「お前は、父上の望みを叶えてやろうとは、思わないのかい」


「……ここで"セリサンセウム"と戦えると告げたなら、父上、将軍殿は多少ご自身の無理をしてもそちらの話しを聞くかもしれませんね。

あの大国殿は、真面目な為政者の眼が届く範囲ではまともなまつりごとをしてくれてはいる様ですが、その眼を掻い潜って小賢しい事をしている輩も多いですから。

特に最も目の届きにくい国境沿いに多いようで、隣接しているセリサンセウムの輩の行動に、実直勤勉のサブノックの民が苦しんでいる。

ここ最近、そのたぐいの報告が増えてきているのも事実です」


温和な自分の元護衛騎士だった青年スパイクは、至極冷静に語っているつもりであるけれども、腹に据えかねている物があるのを感じ取って、賢者は小さく息を吐き出す。


「どんなに上がまともなまつりごとをしようとしていても、これじゃあねえ」


至極残念そうに、そう言葉を零していた。


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