ある小さな恋の物語⑧catastropheの手前③
《ジニア、スパイク様はスパンコーン様の兄上だぞ。
もう少し、口の聞き方を気をつけなさい。
それに好きでもない方と娶せられても、セリサンセウムの女人は幸せだというのか?。
セリサンセウムでは自由恋愛が多いかもしれないが、こちらは保護者―――一族の代表者となる方達が決めるのが殆どだ。
そんな中で、スパイク様は相手の方を慮って縁談を結ばず、勧められた女人の想い人がいたのならそのご縁を優先させたりもしているのだぞ》
国の賢者に自分の主の恋人にまで、言葉で攻められている恩人を見かねて、サルドが言葉を挟む。
特に、ジニアが少々言葉が過ぎると感じるところもあったので、少々窘めるつもりもあって声でそんな事を伝えたなら、主の恋人は素直に頭下げていた。
「そうなんだ。
その、知らなかったといったなら、言い訳になるんでしょうけれど、申し訳ありませんでした」
「おや、スパイク、そんな事をしていたのかい?。
相変わらず、お人好しだねえ」
弟の恋人から頭を下げられ賢者がからかいの言葉をかけつつも、出来るだけ表には出さない様にしていた情報を知っている、スパンコーンの従者を驚きの表情でスパイクは見つめる。
「サルド……どうしてその事を、知っているんだい?」
《……》
弟の従者は、先ずは賢者の庵にいる全員に飲み物を配り終えた後に、一番下座に座って先ずは深々と頭を下げ、そのまま声を続ける。
《サブノックの魔導研究所から、私の水晶を使って、隠密に追跡出来る機能を試して欲しいと言われて、協力しました。
それで、その対象者の中にいたのが、そのスパイク様と御縁談の話があった御婦人が数名いらしたので、それでこれまでの縁談の経緯を知りました。
ただ、どうもその追跡する相手が、"ストラス"の家の方々が多いので早々に断らせてもいただきました。
直ぐに断った話でもあったのですが、最近、また話が来ていましたが、先日再びお断りしました》
サルドのその声に、全く同じ仕種でスパイクと賢者は両眉を高く上げたなら、視線を交わす事になる。
それから賢者は直ぐに平常を取り戻して、取りあえずこの雰囲気を悪くしない為に新たな質問をする為に口を開いたのだった。