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ある小さな恋の物語⑦振り返る影⑤

「さて。片付けようかね」


"片付ける"とサブノックの賢者は口にするけれども、精々片付けるものは、猪口が1つと空になった南の国の王が土産に持ってきた酒が入っていた、"カラカラ”というガラスの容器。

それにツマミとなる物を持っていた皿程度だった。


散々飲み明かした南国の王様になった友人は意識は確りとしながらも、足取りは覚束なかったので、護衛兼見張りとして立ってくれていた褐色の肌をした美しい護衛騎士が抱えて、引き上げて行った。


"そんじゃあ、タヌムン(頼んだよ)"


美しい、女性の騎士に支えられながら、年老いた南国の王は手をヒラヒラとさせて、サブノックの賢者に頼みごとをして、された方は頷きます。


"ああ、「賢者は自分の国の(まつりごと)に関わってはいけない」。

でも「賢者は自分の国の不利益の為に自分の知恵を使ってはいけない」という決まりはないからね。

まあ、今回は不利益というよりは、これ以上、この国の失態を止める為だけれどもね"


この頃には、元々年齢を推し量るに難しい面相ではあったけれど、還暦にという60を回る年もあって、漸く出来始めたシワの中に埋もれる目を細め、頷いていた。


こんな出来事でもなければ、出逢わなかった年齢を重ねた姿の友人が頷いたのを見たなら祖の安堵からか、確りしていた意識も足取りと同じ様に、覚束なくなっていた。

そんな自分の国の王様の酔っぱらった状態に、嫌な顔を1つをせずに女性の騎士は運んで行っていた。



「……忘れ物かい?」


そして、片付けを行おうとするその背後に、先程出て行ったはずの女性騎士の気配を感じてそう呼びかけて、南国王が酒を呑むのに使っていた"カラカラ"を指先に掴み持ち上げる。


「確かにこれは、何気に上等なものみたいだから、酒を呑まない私がもっていても意味がない。もって、返った方が良いかもしれないね―――」


そう言って"カラカラ"をもって振り返ると女性騎士が、


"最近ではすっかり廃れてしまった"


と、南国の王が少し寂しそうに口にしていた、南国独特文化が培われて造られた剣を抜き、切先をサブノックの賢者に向けて立っていました。



そして―――


「賢者という存在になれる、この世界の理屈を教えください」


と、心から懇願されたのでした。

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