ある小さな恋の物語⑥の①
サブノックの賢者に秘書としての賃金―――という名前の"お小遣い"を貰って、ジニアと、そのジニアに髪を整えて貰ったスパンコーンは、手を繋いで"初デート"を行っています。
「わあ、サブノックの定期市ってこんなにいつも賑やかなの?」
ジニアの故郷となるセリサンセウム王国でも、大きな祭りや市場があるのは話に聞いたことがありました。けれど、まだジニア自身が体験した事がないので、今スパンコーンと訪れているお祭りにも思える賑やかな市場が、初めての物となります。
「違うよ、今日は東の国の"トリの市"という時期の行事みたいな市場が重なるのと、行商のキャラバンも加わって、特に賑わっているんだよ」
ジニアの疑問にスパンコーンが丁寧に答え、序でに出店の種類やどこの国の物か説明してくれます。
その説明をジニアは聞くたびに、今の華やかな市の状況に嬉しさと興奮で、頬を染めていました。
「へえ、じゃあ、今日は幸運だったのね。
あ、それとも賢者様はこんなに賑やかなのを知っていたから、私とスパンコーンにデートしておいでって仰ったのかしら」
「それはあるかもしれないね、賢者殿は"イタズラ"や、人を驚かせるの大好きだから」
スパンコーンの言葉に、ジニアは更に頬を赤く染め、"恋人"になった少年の手を掴んで走り出します。
「わあ、待ってよジニア!、大丈夫だよ、数日はやっているだから」
「でも、スパンコーンとこうやって出掛けられるのは、今しかないんだから!。
ねえ、スパンコーンのオススメの出店ってある?」
褐色の肌をした女の子と、青い髪の男の子は2人で器用に賑やかな市場の人混みをすり抜けて行きます。
「じゃ、じゃあ何かを売るって出店じゃないけれど、ゲームで遊べて、景品を貰える所に行ってみない?ジニア」
「じゃあ、それでスパンコーンが格好良く見える出店なら、付き合ってあげる!」
「ええ!?」
「冗談よ!」
そうして幼いカップルは、青い髪の男の子のエスコートで、様々なゲームの出店や、この時期では出店でないと食べれない食べ物のお店を回ります。
中でも盛り上がったのはスリングショットで、景品を撃ち落とす物でした。
「やった!凄いスパンコーン!」
そしてそこで、青い髪の貴族の男の子は、褐色の肌の女の子が望む通り、"格好いい姿"を見せる事が出来たのでした。