ある小さな恋の物語①
「ねえ、君、大丈夫ですか?」
青い髪の男の子が、倒れている女の子を見つけて語りかける。
女の子は肌がとてもよくやけていて、日焼けというよりも、元から褐色なのではないかと思える肌の色でした。
青い髪の男の子が話しかけても、ピクリとも動きません。
すると、男の子の後ろに、"従者"という役割を持っているけれど、殆ど友だちと変わらないと思っている男の子がやってきます。
ただ、この男の子は全身をローブで覆われていて、頭にはフードを深く被っていて、顔も見えません。
「サルド、この子大丈夫だと思う?」
《わかりません、御坊ちゃま。
でも、どうやらこの前にあった大きな竜巻災害で、恐らくセリサンセウムの方から飛ばされてきたのかもしれません》
言葉を使う事が出来ないサルドは、テレパシーで"坊ちゃん"にそう告げる。
「セリサンセウム……確か、母上の縁戚にあたるビネガー家の方が、僕の立場をよくする為に証明を書いてくださった方がいる国だ。
えっと、確かバン・ビネガーさまだったかな。
ああ、それよりも……ねえ、君大丈夫ですか?」
女の子肩を揺すってみるけれども、反応はしない。
「スパンコーン、サルド、何かあったのかい?」
そこに自分の国の紋章"蟷螂と紫陽花"が、胸元に大きく刺繍された衣を纏った、初老を超えたが、老人と呼ぶには語弊がありそうな、婦人がやってくる。
「"賢者"様、こちらに来てください」
スパンコーンと呼ばれ青い髪の男の子が、自分の国の賢者を手招いて、"女の子"を見せる。
「フム、それじゃあ、このババアが治癒術をしてみようか」
《賢者殿、ババアの一人称は、軍議会から止めて欲しいと……》
サルドの注意を聴かずに、ババアと自称する賢者は、褐色の肌をした女の子に治癒術を施す。
「おや、この子は中々丈夫な身体だし奇妙な縁を持っているねえ―――」
「奇妙な、縁ですか?―――わあ?!」
賢者の言葉に青い髪の男の子が、反応した途端に、褐色の肌の女の子がむくりと起き上がります。
すると、直ぐに、女の子は何かを喋った様でした。
「え、どこか痛いの?」
青い髪の男の子が、尋ねた次の瞬間―――
「グランドールの、グラン兄のばかああああああ!」
と、かなりの声量で叫び、青い髪の男の子、スパンコーン・ストラスはその場で尻餅をついてしまいました。