ある小さな恋の物語④
絵が下手だという話を聞いた後に、ジニアと2人きりになったスパンコーンは
「じゃあ、何か得意な事はないの?」
と尋ねます。
するとジニアは少しだけ左上の方に視線を向けて、躊躇いがちに唇を開きます。
「得意って、言えるほどじゃないけれど、好きな事ならあるわよ」
「じゃあ、それを僕に教えてよ」
すると、少しだけ顔を紅くした後に、青い髪の少しだけ眼の垂れた、いつも優しそうな雰囲気を携える男の子を見つめます。
それから、周りに誰もいないのを確認してから、
「歌う事が、好きなの」
とても小さな声で、恥ずかしそうに教えてくれました。
スパンコーンは、ジニアが自分だけに心を開いてくれた様な気がして、思わず微笑みましたが、ある事に気が付きました。
「そうなんだ、教えてくれてありがとう。でも、ジニアはサブノックに来てから、一度も歌っては、いないよね?」
確認する様に尋ねたなら、褐色の肌をした女の子は、表情を暗くして直ぐに頷きました。
「うん―――グラン兄と、歌の事で喧嘩していたから。
私は、自分の好きな様に歌いたいのに、グラン兄は”音階をまもらんといかん”とか、”歌の歌詞に込められたの意味を理解したならもっと上手に歌える”ってうるさいの。
それで、ケンカしていたら、大きな竜巻が来ているって、お父さんとお母さんの声が聞こえて、それで次の瞬間には兄さんが私を庇うように抱きしめて。
強く抱き締められたと思っていたら、多分、意識を多分失ったのかな?。
でもね、意識を失っているのに、その中で私はグランドールとケンカをしているの。
歌もね、兄さんの方が上手いから、きっと間違った事は言っていないんだと思う。
でも、私は私が歌う歌には、本来の歌詞の意味からは離れてしまうかも知れないけれど、自分の気持ちを重ねて、歌いたかった。
それで、気を失ってる、まるで夢でも見ている様な間も真っ暗な中でもずっとケンカをして、"嫌だなあ"って、思った時にスパンコーンが助けてくれた」
歌っていない理由も込みで、自分にだけにその話をしてくれたのだと、スパンコーンには判りました。
(だったら、僕が次に語る言葉は―――)
「じゃあ、ジニア、ジニアが歌いたい通りに、僕にだけに歌ってみてくれないかな」
まるで、求婚するような気持ちで勇気を振り絞り、スパンコーンはジニアに提案すると、褐色の女の子は、頬を染めて頷きました。