夏の暑さは記憶を彼方に
処女作なので読みにくいかもしれませんが、折角なので楽しんで、きゅんきゅんしながら読んでください。
日が照る正午の人混み。蒸し暑い気温。照り返す日差し。
群がる人、人、人。
「今日、何の日だっけ・・・。」
意識が遠退きそうな程の暑さに眩暈を憶えながらも自身の目的の確認を呟く。俺の癖だ。
「あぁ・・・A子の誕生日プレゼントを買いに来たのか。」
この暑い中買いに行かなくてもいいと思いながらも俺は目的の店に向かう為横断歩道を渡った。
こんな暑さなら人が死んでてもおかしくないな。
A子は可愛い物が好きだ。とにかく可愛ければ気に入るだろう。そんな風にプレゼントを選んでくがピンと来るものが無い。どうせなら大喜びしてくれる物がいい。
そういえば以前A子が欲しいって言ってた物があった。
「なんだったけな?」
思い出せないので次の店に向かうことにした。
次の店に向かう途中、クレープの屋台を見つけた。学校帰りに2人で食べてお互いのを交換していた。
「あんたは太らなくていいねぇ。」
そう言いながらA子はクレープを頬張ってたっけ、まるでハムスターみたいだったな。
A子は甘い物が好きだ。特に2人で食べたクレープは美味しそうに食べてたのを覚えてる。
「誕生日プレゼントに食べ物は無いよなぁ。」
流行りの曲が店内を流れる。CDショップだ。
A子はよく音楽を聴いてた。クラシックからロックまでいろいろな曲を聴いて僕に勧めてくれた。
「あんたはそうだなぁ、これ好きそう。」
そう言って教室でスピーカー使って聴かせてくれたのはバラード調の悲恋の曲だった。歌詞はどんなだったか、これは覚えてないや。
CDショップでも結局プレゼントは決まらず、公園のベンチでA子が欲しいって言ってた物を思い出すことにした。
「せめていつ頃の会話か分かればいいんだけ ど。」
夏の匂いと子供達の遊ぶ光景を眺めながら考え込む。
「私ね、――したい。それ頂戴よ。」
あ、僕の物を欲しがったんだっけ?欲しがるような物持ってたっけなぁ。
考え事をするには公園の気温は高く、まともに頭が働かない。幸い汗をかかないのが救いだ。
「あの兄ちゃん耳になんか付いてるぜー!」
「知らねーのかよ!ピアスってんだよばーか!」
子供達の喧騒が耳に入り思考が鈍る。
ピアス?
「あ、それか。」
A子が欲しがったのは僕のピアスだ。
そうと分かれば自分の部屋にあるニードルとセットに包んで渡しに行こう。今すぐに。
やっと出た答えに僕は少しテンションが上がった。
どれだけ歩き回り、考え込んだのか空はすっかり夕焼け空だ。
A子の家はボロいアパートだ。音が漏れて困るって言ってイヤホンしないと音楽が聴けなって以前言っていた。
そして今、A子の部屋の前にいる。
サプライズのつもりでA子の部屋に届けに行こう。きっと驚いて喜んでくれる。
プレゼントは不器用ながらに自分で包んでみた。後はチャイムを鳴らすだけだ。
「ねぇ・・・。」
?
呼ばれた?A子の声だ。
部屋の中にいるみたいなのに何で僕がいるのが分かったのだろう。
「何で・・・。私の誕生日なのに。」
どういう意味だろう。僕に気付いてるのかよく分からない。
「何で・・・。」
「何で・・・いないの・・・。」
状況がよく分からないけれど、A子が泣いてるのは分かった。
嫌な胸騒ぎがしてA子の部屋に入ることにした。
「A子!」
反応は無かった。
まるで、何も聞こえなかったように。
まるで、何も無かったかのように。
まるで、僕がいないみたいに。
「A子・・・僕だよ?誕生日おめでとう。サプライズしようと思ったのに、ははは・・・僕が驚いたよ。」
反応は無い。
「A子?もういいよ、充分驚いたよ?ちゃんとプレゼントだって用意したんだ。ほら、欲しがってた・・・。」
反応は無い。
「A子!聞こえてるよね?!見えてるよね?!」
反応は無い。
「頼むからもうネタばらししてくれよ・・・。なぁA子、僕は・・・。」
「生きてるよね・・・?」
反応は無い。ただ、ただ泣いてるA子。
そして僕は全て思い出した。
あぁ・・・そうか、死んだんだよね。
「C男の奴。」
A子は可愛い物が好きだ。特にC男が選んだ可愛い物が。
A子は甘い物が好きだ。特にC男と一緒に食べるクレープが。
A子は音楽が好きだ。特にC男と一緒に聴いているのが。
A子はC男が好きだ。そんなA子を僕は好きだ、だからC男を殺した。僕も誤って死んだんだ。
なら、何でA子。お前が生きてる?
これが僕が贈る誕生日プレゼントだよ、A子。
ニードルを泣いてるA子の首元に構えた。
「誕生日おめでとう。」
僕は小さく呟いた。これは僕の癖だ。
きゅんきゅんしながら読んだ方、申し訳ありません。逆に予想通りの方、申し訳ありません。
面白いと思ってくれたならそれだけで幸せです。
これから短編やったり長編やったりよく分からないことばっかりしてます(多分)
暖かく見守ってください。紫葵でした。