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第5話 上陸一日目の3

 ☆★☆★☆★☆




「エット、拠点の設営を竜の牙のメンバでやってくれ。鉄の扉はこの奥の探索に行くぞ。ノルはオッタを連れて入口のニオ、ティオと交替だ」




 どでかい蛇の死骸を目の前に淡々と指示を出していくフェム。どうやら、休憩は出来なそうだ。




「オッタ、立てるか?」

「俺を誰だと思ってるんだ。まだまだ余裕だ」




 などと強がりを言えるならば、本当にまだまだ行けるのだろうか。ただし、足元は覚束ないようだがな。


 松明に火を灯し、二人で洞窟を逆戻り。途中で二股に分かれていた道の奥からは、大分小さいが無数の魔物の気配を感じる。ニオ達にも伝えておこう。




「あの蛇倒すんなら、小鬼の砦を落とした方が楽だったんじゃないか?」

「そんな筈はない。小鬼王や小鬼将の実力を舐めすぎるなよ」




 オッタに話し掛けてみるが、糞真面目な答えが返ってくる。もう少し賑やかにいきたいもんだが。




「それはそうと、フェムって、水属性と風属性の魔術の使い手だったのか?」

「さあな。俺には分からん」

「…」

「…」

「セクスっていったか。あいつ、途中から大人しくなったな?」

「ヤツは危ない。注意しとけ」

「そんな危ないヤツなのか?」

「俺も良く知らんが、そんなに危なそうではなかったんだがな」

「この島に着いてからってことか?」

「ああ」




 それっきり会話はなく、洞窟の入口まで戻って、ニオ達と交替する。




「オッタ、お前、顔色悪いぜ。最初は俺が警戒しているから、そこで座ってろよ」

「… …頼む。少し休むことにする」




 あれほど強がっていたオッタが俺の提案に素直に従うなんて…相当、疲れているのかもしれない。


 その後、俺の警戒網に魔物が引っ掛かることもなく、時間が過ぎていく。辺りが暗くなってきたところで、仲間が呼びに来たようだ。




「警戒ご苦労だったな。皆で戻るぞ」




 やって来たのはフェムとフューの二人。皆で戻るってのはどういう意味だ?見張りがいなくなってしまうが。と俺が疑問に思っていると、フェムが懐から魔道具を出し、フェムとフューが魔力を込めていく。




「結界張った」

「弱い魔物ならば、通ることは無理だろう。強い魔物がここを無理矢理通れば警報が鳴り響く」




 フューの発言にフェムが補足する。そうであるなら、安心して洞窟に戻ろう。




「オッタ、戻ろうか…オッタ?」




 どうやら、オッタは気を失っているようだ。消耗し過ぎたな。仕方なく、オッタを背負って広場に向かう。途中の分かれ道でふと疑問を感じた。




「この先、魔物の気配がなくなってるけど、こっちも探索した?」

「いいや、そこまでは時間が取れてない」




 そうか、奥に逃げたのかもな。と、そうこうするうちに広場に辿り着く。何処にそんな資材があったのかと思うほど、立派な拠点が出来上がっていた。広場の入口には金属製の扉が出来ており、中に入ると狭い通路が。通路を過ぎると多少広い部屋。部屋の奥には更に扉があり、大広間に繋がっている。大広間からは各小部屋に繋がっている扉があるようだ。




「凄いな」

「うちの移動式拠点をちょっと改良したんだぜ!」




 俺の感想に食いついたのはエット。なんだ?移動式拠点ってのは。




「私の魔術よ。私、時空魔術が使えるの」




 そう言ってきたのはフィーラ。火属性と水属性が使えるのは聞いていたが、時空属性は初耳だ。だが、時空系の魔術が使えるのであれば納得できる。こんなに馬鹿デカイものまで出し入れできるとなると、相当デカイ空間を使いこなせる使い手なのだろう。




「なんだ?知らなかったのか。情報収集が足りないんじゃないか?」

「オッタ、起きてたのか…大丈夫か?」

「あぁ、少し回復したよ。助かった」




 背中越しにオッタが話し掛けてくる。なんだか気持ち悪いな。こんなとこで素直になられると調子が狂う。




「今日はもう休むぞ。一応、二人ずつで見張りは継続する」

「えーと、この広場の奥はどうだったんだ?」




 フェムが休みを促すが、気になることは早めに聞いておきたい。




「特に強い魔物はいなかった。小物は一掃してきたから、警戒するのは広場の手前側だけで良い。魔術組から先行して休ませることとする。エット、トヴォ、トレ、ニオ、ティオ、ノルの六人で三刻を見張ってくれ。組み合わせはエット、決めてくれ」




 そう言われて魔術組を見渡すと一様に青白い顔をしていた。それにはフェムも含まれる。リーダーなりに気丈に振る舞っているが、魔力切れ間近なのだろう。オッタは一度、魔力切れまでいってしまったようだし。


 ただ、あまり納得出来ないのがセクスだ。アイツは魔術組としてカウントされているが、そこまで魔術を使ったとは思えない。それなのに顔色は悪いから何とも言えないが、ニオ、ティオは大丈夫そうだが、トヴォ、トレは若干疲れの色が見える。大蛇戦で精神的につかれたのかもしれない。エットは大丈夫そうだ。俺は何ともない。むしろ、元気一杯で力が有り余っている。




「俺は元気一杯なんで、いつでもいいっすよ」

「じゃあ、最初は俺とノルな。次がニオ、ティオ。最後がトヴォ、トレの順で」

「了解」




 エットも俺と同じ考えのようだ。疲れているヤツは先に休ませる方が良い。




「じゃあ、行こうか」




 エットに促され、見張りに向かう。




「ノル、さっきの大蛇戦、見事な動きだったな」

「いやいや、俺なんてまだまだだよ。実際、回避するのでやっとだったし」

「俺も囮をしたから分かるが、あれを回避するのは相当なもんだと思うぜ。一歩間違えれば即死だしな」

「それは思った」

「話は変わるが、ノル…フェムとセクスには注意しとけよ」




 セクスは分からなくないが…




「フェムも要注意なのか?」

「やつの考えが読めないのと…」




 エットが言い淀む。




「大蛇戦の後の動きが妙だった気がする」

「妙?」

「ああ。何て言ったら伝わるか分からないが…奥には俺達、竜の牙のメンバを近寄らせたくなかったようだ」

「ん?」

「広場の奥の通路の入口にニオ、ティオを立たせていた」

「何かあったときの連絡用じゃないか?」

「実際に奥に向かったのは、フェム、フュー、セクスの三人だぜ?近接戦闘できるメンバはかろうじてセクスだけだ。バランスが悪いと思うんだが」

「確かに」

「ただの気のせいかもしれんがな」

「注意はしとくよ」




 そんな感じで、エットと会話をしながら夜がふけていった。



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