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第1話 冒険の始まり

 ☆★☆★☆★☆




「エルヴァさん、俺が受けられる依頼で、明日からのやつってないですか?出来るだけ報酬の高いやつで」

「本日付けで中級冒険者に上がったノルさんでしたよね?条件に合う依頼を探しますので冒険者登録証の提示をお願いします」

「はい!お願いします!」




 やった!すげぇ嬉しい!冒険者ギルドの人気受付嬢であるエルヴァさんに名前を覚えられた!冒険者になって苦節二年。16才にして漸く中級冒険者になれたし、エルヴァさんに名前を覚えられたし、これから俺の英雄譚の始まりか?




「ノルさん、冒険者登録証をお返ししますね。それと、条件に合う依頼が3件ほどありましたので、確認してください」

「は~い」




 銅色で縁取られた冒険者登録証を受け取る。この銅色の縁取りこそが中級冒険者の証だ。駆け出し冒険者は縁なし、初級冒険者は白い縁取り、中級冒険者は銅色の縁取り、上級冒険者は銀色の縁取り、特級冒険者は金色の縁取り、超級冒険者は黒い縁取り。この登録証を見ると、漸く俺も中級冒険者になれたんだなぁと実感する。




「ノルさん?どうしました?」

「あぁ、すんません。この、魔鉱鉄の採掘でお願い出来ますか?」

「畏まりました。受託証をお作りしますので、少々お待ち下さい」




 思わず一番上にあった依頼書を選んでしまったが問題なかっただろうか?エルヴァさんが奥に引っ込んでる間にざっと依頼書に目を通す。最悪、エルヴァさんが戻ってくるまでなら撤回できるかもしれないし。


 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

 ◆依頼内容

 ・オスター島洞窟での魔鉱鉄採掘

 ・鉱石の状態で一人あたり最低20貫(約75kg))

 ◆依頼者

 ・鍛冶師ギルド所属サイラス防具店

 ◆報酬

 ・一人につき銀貨20枚

 ・20貫を超える分は1貫あたり銅貨8枚で買い取る

 ◆受託条件

 ・中級以上の冒険者

 ◆受託制限

 ・受託者数制限あり、8人以上、12人以下

 ・出発(無月の10日)までに条件を満たす冒険者が8人以上揃わない場合は取り下げ、その場合、その時点で受託していた冒険者には銅貨5枚を支払う

 ・受託者数が12人となったところで受付締め切り

 ◆期日

 ・無月の20日まで

 ◆不履行時の賠償

 ・一人あたり銀貨1枚

 ◆その他

 ・船、船賃は冒険者ギルドが持つ

 ・その他、旅にかかる諸経費は冒険者ギルドが持つ

 ・オスター島からの帰路は無月の15日の明けの鐘六つ頃に船で迎えにいく(オスター島で3泊の予定、16日の暮れの鐘六つまでに港に着予定)

 ・出発は無月の10日、当日の明けの六つまでに港に集合すること

 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓



 なになに、魔鉱鉄の採掘、条件が中級以上か。おっ!報酬が銀貨20枚だと!約2ヶ月分の生活費になるじゃないか!んで、肝心の依頼内容は...オスター島の洞窟で魔鉱鉄を採掘か。オスター島までの往復の船と船賃、それに旅の経費はギルド側で用意するのか。確かオスター島までは片道2日、島で3泊、帰りも2日の計7日の1週間!そんでもって銀貨20枚ってことは金貨2枚だぞ!高過ぎる!いいのか、こんなに報酬高くて。こんな美味しい依頼がよく残ってたな。さすが中級!初級の依頼とはレベルが違うぜ。




「お待たせしました。こちらが受託証です。紛失しないように管理して下さい。他にご用件はありますか?」

「あ、えっと、技能の更新したいんですけど、今から受けられる試験ってありますか?」

「ございます。こちらがリストになります」




 さすがエルヴァさん。人気なのは見た目や物腰だけでなく、この対応の素早さも理由の一つだろう。


 リストに目を通す。俺の持っている技能は、戦闘系の無手格闘術技能が☆二つ、冒険系の索敵技能が☆二つ...これだけじゃないか!この二つは当分☆三つは取れそうもないしな。新規で取れそうな技能は... ...あれ?おかしいな。ない。




「すんません。野営技能ってなかったでしたっけ?」

「野営技能は今からでは受けることが出来ませんので、リストに載っていません」

「あぁ、そうですよね。そうですか...じゃあ、技能の更新はまた今度にしておきます。それじゃあ」

「はい。それではノルさんがご無事でまた再会出来るようお祈りします」




 エルヴァさんが目を閉じて軽く俯く。これ、最高。これをやってもらうと、次もエルヴァさんの窓口に並ぼうって思っちゃうんだよね。例え列が長くても。はぁ。俺と同じ考えの冒険者で今日も長蛇の列ができている。この冒険者の中からエルヴァさんのハートを射止める英雄は現れるのだろうか?俺には無理だろうな。




 ☆★☆★☆★☆




「すんませーん!遅くなりました!」




 もの凄い勢いで走り、集合場所となっている港で頭を下げる。俺、朝は弱いんです。




「...遅い。遅刻とはいい度胸だな」




 顔をあげると如何にも魔術師といった感じのローブを纏った鋭い目付きの女性が俺を睨み付けている。あれ?遅くなったけど、遅刻はしてないはず...と、ちょうど明けの鐘が六つなった。




「ほら、明けの六つには間に合ってますから遅刻じゃないですよね?」

「貴様、複数の戦団で受ける依頼の初日の集合だぞ?四半刻前には集合することが常識だろうが!」




 鋭い目付きのローブの女性に付き従うような立ち位置の黒髪黒瞳の男が俺の反論を押し潰す。


 確かに。朝から集合時間が決まっている依頼は、大体が明けの六つ、つまりは夜明けの時刻が指定されている。更に複数の戦団で受ける依頼の場合は遅くとも四半刻前には集合してお互いの自己紹介やお互いの戦闘方法、能力の確認をし合うのが常となっている。つまりは俺が出遅れたということだ。




「おっしゃる通りでした。遅刻してしまってすんません!」




 もう、ここは素直に頭を下げるしかない。本当にすんませんでした。




「まあまあ。ちょうど船も来たみたいだし、船に移動しようか。遅刻のキミ、キミは船で一人一人に自己紹介して回りなよ」

「はい!すんません!ありがとうございます!そうします!」




 仲裁に入って皆を船に誘導しようとしたのは、長身で金髪の長髪、金の瞳が印象的な超イケメン。俺、この人知ってる。有名人だ。確か、戦団・竜の牙(ドラゴンファング)のリーダーの人だ。比較的若い戦団の中でも実力が高いって言われている竜の牙だし、確か団員全員が金竜系の竜人族なんだったよな。




「くくっ...相変わらずだな、お前は」

「あっ!オッタ!お前もこの依頼受けてたのか」




 オッタ。俺と冒険者養成学校で同期だったやつだ。俺と違って優秀だったな。首席で卒業して、今では冒険者ギルドの期待のルーキーだしな。はぁ...俺、オッタ苦手なんだよな。




「ほ~ら、もたもたしないで行くよ?」

「はい、すぐに行きます!」




 考え込んでいた俺に声をかけてくれたのは、金髪、金の瞳の超美人。背が高く、魔術師風のローブを纏っている。どことなく竜の牙のリーダーに似た顔立ちをしている。少し俺より歳上だろうか。旅の仲間に美人がいるだけで楽しくなるな。出鼻は挫かれたというか、俺の遅刻で失敗してしまったが、今回の旅は良い旅になりそうだ。


 こうして今回の魔鉱鉄の採掘依頼の冒険が幕を開けた。




 ☆★☆★☆★☆


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