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僕の身体は落ちていった

この作品はフィクションです。実在の人物、出来事等には一切関係ありません。

 そうだ。これが僕の運命なんだ。だから――もう、自殺でき(しね)る......。

 「ありがとう......さよなら」


 僕は彼女の涙を背に、扉を開けた。


 扉を閉めるときに聞こえた声はとてもおぞましくて振り返る気にならなかった。


 『死ンダラ許サナイ......』


 僕は階段をかけ上がる。心にあるのはやっと死ねる。それだけだった。それまでにあった疑問なんて消えていた。僕が死んだ後のことも今、教室がどうなっているかも興味はない。走り続けて数分――僕は肩で息をしながら屋上に出ることのできる扉に手をかけた。


 しかし後ろから声が聞こえる。その声は今日会ったばかりの女性の声。でも僕の耳はしっかりと記憶していた......。


 「......死なせないわ。絶対に!」


 苛立ちを隠さず、冷たい声で言う。

 「あんた、屋上で言ったときと随分違うなぁ? あのときは興味半分だったんだろ? 僕は死ぬから。黙ってみてろよ。......止めたら殺すから」


 「わかったわ。止めてみせる。......あなたが死ぬのを」


 何を言ってるのか分からないが、最後の言葉は雷の音でかき消されてしまいよく聞こえなかった。


 「やれるもんならやってみな」


 外は強い雨になっていた。でも関係ない。僕は外に出る。フェンスに登る。つるつるしていて時たま滑るが、それも関係ない。外で傘をさしながら作業をしている人も、廊下で僕を見つめている女の子も、何もかも関係ない! 

 フェンスを越えると風がいっそう強くなる。けれどそう感じただけかもしれない。下を見下ろすと作業していた人が僕を見て何か言ってる。


 さぁ。あと一歩。踏み出せば落ちれる。体は宙を舞ってやがて、地面に叩きつけられるだろう。でもそれは踏み出した後の話だ。


 踏み出せ。こんな現実からやっと逃げられるじゃないか。なのに何故、僕の足は動かない。動けよ。


 「怖じ気づいたの? 死にたいのでしょう?」

 ......はっ。そうだった。ここで止まったら彼女の勝ちじゃないか。


 僕の体は何もない空間に投げ出された。――否。自分から身投げした。


 ――――僕は笑っていた。

落ちちゃいましたね。氷空君。

......どうしよう。

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