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fantasy love  作者: 朱希
3/6

オオカミ様と織師3

カナンとナナミはともに隣で静養しようやくお互いに完治した頃、カナンが外へ出ようと誘ってくれました。その前からカナンは少し変でした。そしてほかの動物たちや双子妖精もついてくるよう促します。それを見て動物たちはこの目的が分かったようでした。

ちなみに初めてここに来たものを持っていくようにほかの動物に言われました。

「どこへ行くの?」

「秘密。」

猫の上に乗ったネズミが悲しそうに話してくれます。

ナナミは何も話してくれない動物たちを不思議そうに見つめましたが何もわかりませんでした。

ついた場所はなんとあれだけ貴重な祈りの糸がたくさん育っている場所でした。

「え、ここ、」

「カナンからのプレゼント。ここだったらこの道からだと町に近いし、ナナミがすぐ取りに来れるだろう?」

猫が説明してくれます。そしてナナミははっとするのです。

自分が良くなったこと、それはつまり彼らとのお別れの時が来たということです。

「私…」

「ここに人間はずっとは住めねえ。前のような狼もいるし、人間がいるとこの森自体が壊れてしまうからな。俺達もお前をずっとここには置いておけないんだ。」

「寂しいけれど、ここでお別れだよ。」

『『そんな!』』

双子妖精もあまりの突然に驚いたようでした。

突き放したような言葉がナナミの心に刺さります。

カナンを見ると切なそうな、けれど早くどこかへ行ってほしいそんな目をしています。

ナナミはますます心が苦しくなります。けれど泣いてはいられません。

人間が暮らせないのなら、出ていくしかないのです。

「わかった…突然お世話になってたんだし、そろそろ帰らないとね。」

ぎゅっと手を握り笑顔で動物たちのほうを向きます。その笑顔は見ていてとても心が痛くなるものでした。

「今までありがとう、短い間だったけれどすごく楽しかった。」

ナナミはそれぞれを抱きしめます。

そして最後にカナンです。ぎゅっと一番強く抱きしめます。

手放す手はとてもさみしいものでした。

「それじゃあ、ね」

ナナミは振り切るように動物たちに背を向けると、双子妖精とともに教えてもらった道をまっすぐ進んでいきました。











別れから数週間、カナンはずっとぼんやりしていました。

あれからあの祈りの糸がたくさん育っている場所へ入っていません。

しかしいつも思い浮かぶのはナナミの顔でした。

元気にしているのだろうか、悲しい顔はしていないだろうか。

考えるのはいつもそんなことばかりでした。

そんな姿にほかの動物たちはため息をつきます。

「あいつだったら、俺たちを助けてくれると思ったんだけどな…」

「まあ、カナン君はここにしかいれないからね。森に人間をすませるのも元々は森の契約違反だし。狼なんてどこも嫌われ者だ。仕方がないよ。」

「けど、なんか心がぽっかりするね。」

「そうだな。」

いつもののんびりした日常に戻ったのにどこか寂しい気持ちでした。

犬が鼻をひくつかせます。そして目をひそめます。

「火薬のにおい…おいおい、もうここまで戦争の戦火は届いてんのか…」

もちろん狼にもその匂いは届いていました。そして立ち上がります。

「ちょっと待って、近くまで火薬のにおいがしているってことは…」

「近くの町、ナナミの町が危ないね。」

その言葉を聞いた瞬間狼は飛び出します。

「…恋、だねえ。」

猫が嬉しそうにため息をつくと動物たちも一緒に駆け出します。














ナナミは警報が鳴っている中折り機を抱きしめています。家は一回が燃やされもはや逃げ場はありませんでした。

『ナナミ!はやくにげないと!』

『しんじゃうよ!』

双子妖精が必死に語りかけます。しかしナナミは首を横に振るだけでした。

「私がこれを守らないと。私にはこれだけだもの。」

『だめだよ!』

『ナナミ!』

「あなたたちは早く逃げないさい。」

もはやナナミは限界でした。帰ったものの、以前の契約は破棄、森から何事もなく無事にしかも祈りの糸を大量に持って帰ってきたナナミはさらに町の人から恐れられるようになりました。

依頼が全く来なくなった今、ナナミにできることと言えば死を待つしかありません。

そんな時に戦争がナナミの町にも広がってきたのです。

ナナミにとってありがたいことでした。このまま餓死するなら潔くこの家と折り機とともに朽ちていきたかったのです。

ふと、目を閉じます。思うのはカナンのこと。

元気にしているだろうか。ほかの動物たちと仲良くやっているだろうか。

この淡い気持ちはなんなのだろうか、徐々に火が近くまで寄ってきています。ナナミも体が熱くなってきています。



できるなら、もう一度



そっと涙をこぼすと、炎の中から何か足音が聞こえます。

目を開けてみるとそこには炎の中、火傷を負った狼が立っていました。

青い瞳、そうカナンでした。

「うそ…」

驚いているとカナンはナナミを口にくわえます。そして勢いをつけると窓を打ち破り地面へと飛び降ります。

ずしんと大きな音と振動がしたと思うとナナミは床に座っていました。

そして隣には炎でひどくやけどを負ったカナンが倒れていました。

「カナン!!」

ナナミはカナンを揺さぶりますが息をほとんどしていません。

するとナナミたちが落ちたところへほかの動物もやってきます。

「カナン!?」

「ちっ、おい、しっかりしろ!」

「これは…」

それぞれが呆然としています。

ナナミもどうしたらいいかわからないぐらい涙が止まりませんでした。

「ねえ、カナン、どうしてこんなむちゃしたの、どうして…」

するとふとカナンの青い瞳がナナミのほうを向きます。その顔は穏やかな表情でした。

ナナミが目を見開くとカナンはふっと目を閉じてしまいました。

息もしていません。

「うそ、…」

ナナミがカナンの体を揺らします。

「ねえ、カナン、嘘でしょ?目を開けてよ。」

しかしカナンの体はピクリとも動いてくれません。

「この間みたいに、薬貼るから、おまじないかけるから、目を、開けてよ。ねえってばあっ!!!カナン!!!」





そう、私はこんなにもあなたのことが―





「好きなのに、愛してるのに…」

ナナミはカナンの瞳にそっと唇を捧げます。

するとどうでしょう、突然カナンの体は光りだします。

あまりの眩しさにナナミは目を細めます。

その光から歌が聞こえてきます。それはあの王子の優しい歌でした。

そして一瞬瞬きをした瞬間、そこに現れたのは以前湖で見た男性でした。

ただ今回わかったのは彼が青い瞳をしていたということです。

「え、」

ナナミは目を見開きます。

「ナナミ、ありがとう。お前のおかげで俺たちの呪いは解けた。」

すると後ろの方からも光が輝きだします。

後ろを見るとこれまたかっこいい男性が3人立っていました。

「おい、やった、やったぞ!!」

「やった!呪いが解けた!」

「よかった」

男性たちは喜んでいるがナナミは目を何度も瞬きするしかありませんでした。

知らない人が突然出てきて、ナナミにお礼を言っているのです。

蒼い瞳の男性がナナミの目の前に座りナナミに目線を合わせます。

「ナナミ?俺だ。わからないか?」

「え?」

「いつもお前に語りかけていた。泣かないでほしい。笑顔でいてほしい。お前の笑顔は俺をいつも救ってくれていたから。」

その眼はどこかで見たことがありました。

そう、いつも優しく包んでくれていた彼の、カナンの瞳です。

「かな、ん?」

「ああ。」

「カナンなの…?」

「俺だ。ナナミ、カナンだ。」

とたんに涙があふれてきます。ぐしゃぐしゃな顔のままナナミはカナンに抱き着きます。

「よかった!よかったよお!!!」

カナンもナナミを抱きしめ返しながら話し始めます。

「俺はこの国の王子なんだ。この瞳のせいで周りの者からは恐れられ、外へ出ることを禁じられた。そして誰からも見られることのない塔で過ごしていた。…皆の者に俺ができることと言えば歌うことだけだった。皆が穏やかに過ごしているところを閉ざされた塔から眺めるのが大好きだった。しかしこの能力を周りの国は恐ろしいと思ったのだろう。俺を守ってくれていた臣下とともに呪いをかけられて気づいたら動物になり声を出せなくなっていた。呪いをかけたものは一言、お前のその呪いはお前が一番しらないもの、与えられることのないものが必要だ。俺はわからなかった。徐々に皆の心が蝕まれているのをただ見ているだけはつらかった。そこで【始まりの森】へ向かったんだ。あそこはこの国で一番神聖な場所だから。しばらくして満月の夜だけ人間に戻れるようになった。しかし、声は戻らなかった。火薬の臭いが近づいてくるのが見てわかる。どうしたらいいかわからくてただぼんやりと過ごすしかなかった。そんな時、お前が現れたんだ。ナナミがこの瞳を見てきれいだと言ってくれた。それだけで俺は、救われたんだ。」

「カナン、」

「そして先ほどナナミが言ってくれた言葉、それが俺らの呪いを解いてくれたんだ。俺はあっても、ナナミが持っていなかったら意味がないものだから。」

そしてカナンはナナミをじっと見つめます。

「俺も、ナナミを愛してる。俺に愛を与えてくれてありがとう。」

そっと顔が近づくと深いキスを送ります。

するとすべての魔法がよみがえったようにナナミたちを包みます。

町の戦火は風と水によって徐々に鎮火していきます。

光は人々の周りを飛び交います。すると人々は思い出したかのように戦いをやめます。

【王子の呪い】が徐々に溶けていったのです。










こうして戦争のなくなった国の人々は再び5年前のように穏やかな生活に戻りました。

もちろん毎日王子の歌を聴いているからです。5年前と同じように優しく、穏やかな歌。しかし5年前とは違い孤独な歌ではなく愛しさが混ざっていました。

愛する者を手に入れた王子は今まで以上に人にやさしく、そして守る強さを手に入れたのです。

周りの国からも責められることなく、いつも隣にいる王妃とともに国を繁栄させ末永く幸せに暮らしました、とさ。


ということで完結です。

これもちょこちょこかけたら面白いよね。

ということで未完のままにしておきます。

そしてこんなんだったら番外編として掲載したらよかったかなと後悔




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追記

すいません最初の部分入れ忘れてました。

一応こういう理由で別れたことになっています。

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