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繰り返しの今日

作者: 片結 あるふ

 ある日僕は明日を奪われた。

 来るはずだった明日が来なくなった。

 「また明日」と言っても僕に訪れるのは繰り返しの今日。


 もう何度目だろう。

 また、同じ風景を見ている。


 ……でも、これでいいんだ。

 明日が来ないから、僕は君と別れなくていいんだから。

 

 「また明日ねっ」

 今日も君はそうやって僕から離れて行ってしまうんだ。

 「……じゃ、また」

 はぁ、僕には明日が無いからそうやって今日も言葉を濁すしかない。

 

 ……しかたないんだ。

 明日、君と会えないなら僕は今日を何度だって繰り返すよ。


 午前7時、繰り返される日曜日。

 携帯を手に取ると同時、着信。

 君からのメール。

 内容は『おはようっ!!』

 

 ……知ってるよ全部、全部。


 午前8時32分、君は息を切らした様子で僕の家を訪れる。

 手を膝につきながらも楽しげに微笑む。

 君に手を引かれて向かう場所は少し変わった小さな喫茶店。

 古めかしいその喫茶店はどこか懐かしさがあって気に入っていると君が言う。

 「なんか独特な感じな場所だね」

 その言葉はもう数えきれないくらいに使った、言葉を変えても君は楽しそうに笑うだけだった。


 ……それでもいいんだ、その笑顔が見ていられるなら。


 午前9時24分、二人で同じコーヒーを飲んで喫茶店を出る。

 そのまま街の中を散策。

 人気のない道に入ったとき不意に君が言う。

 「この街にもまだ知らない場所がたくさんあるねっ」

 僕が言葉を紡ぐ前に猫が通りかかり、驚いた君が僕の方に倒れる。

 支える僕の行動を見ている人がいたならきっと機械的に見えたかもしれない、だって知っていたんだから。

 君は少しうつむいて僕に礼を言う。

 以後、二人は手をつないで行動する。


 ……君の手はいつだって温かいけれど、僕の手は日に日に冷めているかもしれない。


 午後2時10分、君が思い出したように言う。

 「あっ、もうこんな時間だよ、お昼どうしよっか」

 「そこで、なんか買ってこうか」

 目の前のコンビニを指さして言うけれど君は何か考えたように間をあけて。

 「じゃあ、そしたらあの公園で食べよっか」

 そう言って君が指さすのはさっき通り過ぎた公園だった。


 ……もう、今日も終盤。

 

 午後3時40分、コンビニで買ったパンを二人で食べてから公園でいた子供たちと遊んでいた。

 子供好きな君は楽しそうに無邪気に公園を駆けまわっていて、僕は思わず笑ってしまう。

 そんな僕を見て、君は少し照れたような笑みを浮かべつつ僕の手を引いて一緒に走り出した。

 突然の行動につまづく僕を見て君はまた楽しそうに笑う。


 ……そうやって日曜日がまた終わる。


 午後4時20分、君と話しながら歩く帰り道。

 聴いたことあるような内容に、言ったことあるような言葉を返す。

 

 ……そして。


 「また明日ねっ」

 今日も君は僕から離れて行ってしまう。


 ごめん、僕に明日はもう来ないんだ……



 午後7時22分、泣いているような声が電話から聞こえた。


 ……知ってるよ。

 帰り道、僕に「また明日」と言った君は明日を奪われたんだ。


 何度も何度も助けようとしたけれど、今日が繰り返されるならもう無意味なんだ。

 

 ……君を助けた先にあったのも君が死んでしまう今日だったから。


 明日はもう変えられないんだ。

 だから今日も、祈るというより、呪うように言う。

 

 「君がいない明日なんて来なくていい」


 ……ごめん、君から本当に明日を奪ってしまったのは僕かもしれない。


 そうだ、また今日が来るなら無意味なりにもう少しだけ今日を変えてみよう……



 もう今日は鳴らない携帯を開いて僕は君にメールする。


 『明日も一緒に歩こうか』





 午前6時40分、予想外の着信。

 『起きてるっ!?今日学校だよっ』


 

 最後まで読んでいただきありがとうございます。

 短編で書かせていただきましたが正直作者の自己満足な部分が多いかと思います、気にある点などありましたらぜひ質問等してください!

 また、感想等で要望いただけましたら連載として書こうかと考えています(できなかったらすみません。)

 質問、感想等お待ちしています!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いと思いました。 タイトルにも引き込まれましたし、終わり方もさっぱりしててよかったと思います。
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