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sin red line  作者: たぬき
第一章
6/21

1‐4 それぞれの結末

今回、少し短いです。


 ライオットたちの機は、順調に飛行を続けていた。


 もともとシルフという機体は、性能だけは極めて高かった。

 固定武装はパルスレーザーのみと貧弱ではあるが、その分、翼下のパイロンが左右に3対、胴体内のウェポンベイ、更に、ウェポンベイ下部にパイロン1基、上部には追加兵装用のハードポイント、ユニバーサル仕様で現在までに開発された、殆どの追加武装を装備可能という重武装化も可能であり、推進システムを強化された事により、重武装化した上で爆装したフル装備でも、最高速度(さすがに重すぎで加速力はがた落ちする)が変わらない。更に地上発進で衛星周回軌道までをカバーする作戦行動範囲すら持っている。

 まさにモンスターと言っていい機体である。だが欠陥機、棺桶などと呼ばれるほど死亡率の高い機体でもある。

 最高速度M12(マークした時点で、テストパイロットが気絶、墜落した。)以上という極めて高速な機体であるが、加速力も極めて高速なため、パイロットが加速Gに耐えられない。機体制御が極めて鋭敏で、ほんの些細な事で制御を失う。など、無人機として改造した方が良いのではないか。という意見が出るほど敏感な機体でもある。

 ではなぜ無人機として開発されなかったのかと言うと、かつて投入された無人機が、敵のクラッキングを受け自軍に攻撃をするという事態に陥ったためである。

 現在に至るも、そのクラッキング方法が不明であるため、対策を取る事が出来ず、無人機は戦場から姿を消していた。

 その為、シルフも有人機として開発されたわけだが、開発陣の悪乗りか、要求されたスペックが高すぎたためか、普通の人には扱えない機体としてロールアウトした。



「間もなく作戦空域に入る。」

『了解、幸運を』

「……待て、まだ準備が……」


 管制官と後席からの返答が返ってくると、思わずライオットはため息を漏らし、蛇行飛行に切り替える。


「急げ、五分ほどしか稼げないぞ。」

「解っている、まったくなんて扱いにくいシステムなんだ。」


 ライオットは、遊びを持たせ鈍化した操縦システムを、初期の鋭敏すぎるシステムに戻していた。その方が機体のポテンシャルを十分に発揮できるとの判断したためだ。


「うぐ、……Gがきつ過ぎるぞ、もっと緩やかに。」

「その分稼げる時間が減るぞ、いいのか?」

「……」


 思わず後席の射出レバーに手を掛けかけた、やるべき事をやっておけば、こんな所でぐずぐずする事も無く、すでに作戦空域に入っていたはず。これ以上がたがた抜かすなら、放り出す。そう決意し後席に気迫を込め(脅迫し)て言葉を返し、現在の機動を繰り返す。


「……準備完了……」

「了解」


 ようやく整った後席の準備に、直線飛行に戻しながら返事をする。


「間もなく敵の破棄基地上空、機動指示を。」

「……へ、あ、ああ、えーと、サークルマニューバ」

(基地の情報収集だぞ、此処はエンドレスエイトだろうに。)


 サークルマニューバとは、要するに、目的のポイントを中心に円軌道をとる飛行機動であり、エンドレスエイトは8の字に飛行し、ちょうど線が交差するポイントで目的ポイントの上空を飛行する。どちらが今回の作戦に適しているか、考える必要もない。

 ライオットは、サークルマニューバを行いつつ失望感にとらわれていた。





「さて、今回の実戦訓練についての評価をまとめよう。」


 帰還後に行われたミーティングを終え、教官たちは今回の作戦の講評を行っていた。


「ライオット、メリス組が問題ですね。」

「いや、そこにライオットを入れるのは間違っているだろう。問題があるのはメリスの方だ。」

「整備部の方からも報告が来ています。メリス リンドが調整を行っていないと。」

「フライトレコーダーの解析からも、今回の作戦開始時間の遅延、及び超過の原因ははっきりしています。」


 すでに教官たちの結論は出ているようであった。


「メリス リンドは実戦部隊に配属すべきではありません、速やかに機より下ろすべきかと。」

「いやしかし、航法担当は定員を満たしておりません、下ろすとなると変わりが……」


 教官たちの会議は深夜まで及んだ。





「うふふふふふふふふふふふふ……」


 全ての機が帰還し、整備を終え人気のなくなった整備場に、不気味な笑い声が響く。


「かわいいわ、うふふふふふふ……」


 殆どの照明が落とされ、薄暗い整備場に一つの人影が浮かぶ。


「うふふふふふ……、みんなよく無事で戻って来たわね。」


 落とされていない照明の明かりに浮かび上がった人影はシーラであった。

 シーラは格納された機体の内、自らが担当する機に近づき、その美しい顔を喜悦にゆがめ、機体に触れつぶやく。


「あいつにはプロトタイプの方が良いのかしら、今の操縦性でも満足できていないようだし……」


 うるんだ瞳で機体を撫でまわしつつ、訥々と独り言を続ける。


「そうね、申請してみましょうか。うふふふふふふふ……」


 撫でまわすだけでは飽き足らず、頬ずりまで始めながら、男の子の股間に直撃する表情を浮かべつつ、つぶやく。


「そうね、それが良いわ……」


 ライオットの受難は続く。



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