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sin red line  作者: たぬき
第一章
5/21

1‐3 初任務


「本日より、試験的にではあるが実戦訓練を開始する。」


 ミーティングルームに入ってくるなり、唐突に教官が言い放った。


「各自、自分の担当を確認しておくように。」


(要するに、時期実戦に放り込むということだな。)


 ライオットは自分の担当を確認し、自分たちの未来を、正確に予測したが、周囲の者たちは各自の担当を確認して、まだまだ先の事と楽観していた。

 なぜなら、ほぼすべてが哨戒や偵察で、実戦空域をかすめもしない飛行経路だったからだ。


 だが、ライオットはそのフライトプランから法則性を見出していた。


(全ての計画が哨戒か偵察、……配属先は強行偵察部隊かな?)


 即座に配属先まで考察したライオットに、彼のパートナー(いまだに名前を覚えていない)は言い放った。


「ライオット、僕は乗りたくない。」

「却下だ、俺たちの任務は破棄された敵の地上基地だ、貴様が搭乗しなければ任務達成出来ない。第一、貴様は未だに一度も搭乗してない。いい加減搭乗してもらわないと、俺が困る。」


 そう、ライオットのパートナーは未だにシルフに乗った事がなかった。何だかんだ理由を付けては搭乗拒否を繰り返し、機体の調整をライオット一人に押しつけていた。


「センサー系統の調整は済んでいるのか、その調整次第で今回の任務の成功率がかなり左右されるんが?」


「ああ、まあな。」


 その返答に何とも言えない危機感を覚える。ライオットが機体調整の為飛んでいる間、こいつはただサボっていただけなのではないかと。


(出る前に、シーラの確認をとらないと。)


 シーラはアビオニクス(電子兵装)も担当する凄腕だという事は、すぐに確認できた。ならばパートナーの意見を聞き、調整を行っているはず。そう判断し格納庫に急ぐのだった。




 ライオットは、此のパートナーに見切りをつけていた。


アビオニクス(電子兵装)の調整? ヤッテナイワヨ。」


 物凄く如何でもいい、とでも言わんばかりにシーラはのたまった。


「なんの要望も無いんだもん、それじゃ調整のしようも無いものね。」

「なっ……」


 絶句したライオットの方を、シーラは幾分気の毒そうにポンと叩き声をかける。


「貧乏くじ、ご苦労様。」


 このダメパートナー、メカニックの間でもお荷物だと認識されている。解っていたが、自分の仕事位やっていると思っていた。

 ライオットは後席のパートナーに意識を向け、その様子をうかがっていた。


「なんだ、この使いにくいシステムは。」


 ぶつぶつ言いながら、システムの立ち上げ、ホロディスプレイの位置調整を行っていた。


(コイツ、本当に何もしていなかったんだな。)


 その程度の事は、事前に調整しておくべきことであり、離陸直前にやる様な事ではない。実際、他の機はすでに発進指示を待つばかりとなっている。その発進指示も、後席の存在のせいで遅れているのだが。





 ライオットはシーラとの話が終わるなり、パートナー変更手続きに入っていた。上手くすれば、次回よりパートナーが変更になる。しかし……


「しばらく待て、現在航法担当は定員を満たしていない。変更したくても出来ない。」

「かまいません、ならば単独で飛びます。」


 すくに変更出来ないという担当教官の回答に、そう答えると待機室を出ようとした。


「待てライオット アロー、単独出撃は認められない。これは規約で定められている事であり、今回のお前たちの任務において必須だからだ。」


(あれを乗せている方が、任務に支障をきたす。)


 ライオットはそう思っていたが、了解の意思を伝え待機室を出た。





 待機室より管制室に移った教官は、ようやく揃ったグリーンサインにため息を漏らした。


(アローがパートナーの交代を要請するわけだ。)


 実際、ライオットの訓練における姿勢は、教官たちの間でも有名だった。誰よりも多く飛び、誰よりも多くメカニックと接した。だが、そのパートナーは座学は極めて優秀だった。ライオットに次ぐ次席、シュミレーション成績も上位、しかし、実地訓練においてその馬脚を現した。

 実際、機体調整は全てライオットの意見のみで調整されたと聞いている。センサー系統も、操縦に必要なものについては、完璧に調整されている。しかし、観測の為のセンサー類は一切無調整、後席のシートに至るまで調整されていない。


(早急に新しいパートナーを探す必要がある。)


 定員に達しておらず、一部の人員に掛け持ちを強いている現状においても、その選択は急務に思われた。

 もともと教官たちは、連名でライオットの正規軍への編入と、このような使い捨てではない、真っ当な機体を与えるべきである。という意見具申を行っていたが、上層部の意向により握りつぶされていた。

 その為教官たちは、最優秀な人材に次席を付け、最高のユニットにする。という次善の策を用い、ライオットの戦死を防ごうとしていた。

 しかし今回は、次席があまりにも不甲斐ない事が判明し、最悪の一手となっていた。


(唯一の救いは、偵察任務が廃棄された基地だったという事か。)


「各機発進を許可する、必ず帰ってこいよ。』


 発進指示を出すと思わずそう呟いた。誰もが彼らを使い捨てだと思っているわけではない。年を食ってる方から死ぬべきであるとする倫理観はまだ死に絶えているわけではなかった。


 ライオットたちの戦いが始まる。




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