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sin red line  作者: たぬき
第一章
10/21

1‐8 後始末

今回のお話には、一部危険な描写が御座います。

決して真似しないよう、伏してお願いいたします。


「ふふふ……」


 管制室でシルフの帰還に喜んだのもつかの間、シーラは気が付いてしまった。


「ふふふふ……」


 あれだけの激戦を潜り抜けた機体が、無傷のはずがない事を。


「ふふふふふ……」


 そして傷つけたのが、あの二人であることを。


「ふっふっふっふ……」


 そしてこの状況に至る。

 嬉々として自身の半身と言えるスパナやレンチ(特大)を磨き、その艶やかな頬を朱に染めていた。


 憤怒で!


 握りの部分は普通の銀色だが、先端は何故か薄紅色に染まった緋桜(スパナ)桜花(レンチ)を磨き上げ、如何に反省を促すかを考える。


「フッフッフ……  綺麗よ二人とも……」


 自らの半身に語りかけ、手入れを終えた緋桜(スパナ)桜花(レンチ)(命名者、使用法を知っている整備班)を(おもむろ)に手に……


「教育的指導の為、あの二人に会いに行きましょ。ええ、報復などではなく、指導の為。フッフッフ……」


 明らかに言い訳を口にし、制裁の為、愛するシルフの仇を討つため、一人の般若が戦場(いくさば)に立つ。


「待て、落ち着けシーラ フェンレイ、そんなものを持ち出してどうする気だ。」

「そうですよ、まず落ち着きましょう。」

「そうだ、大体あの二人は現在報告の真っ最中だ。当分終わらん。」

「ええ、まずはレコーダーをチェックして報復の方向性を定める事から始めるべきです。」

「貴様、あおってどうする。」


 などなど、手すきの教官、管制官、整備士の人海戦術でシーラを抑え、何とか落ち着かせ、二人の安全を確保しようと必死になっていた。


「……そうね まずはレコーダーをチェックしないと……」


 そして、その努力は一定の成果を上げた様だった。





(なぜこうなった……)


 その男の思考は、その事だけで一杯になっていた。


「いや、素晴らしい成果だよ。」

「いやまったく、最初に聞いた時は予算の無駄だと思ったが、此処まで成果を上げるとわ。」


 その会議は、その様な男の自尊心を最大に煽り立てるものだった。

 最早、会議に出ている老人たちも、自らの栄光の階段の一段としか見えなくなった時、その爆弾は落とされた。


「さて、そろそろ最大の議題に入るとしようか。手元の資料を確認してくれたまえ。」


 その資料には、このような標題が書かれていた。


“学徒動員計画”


 要するに、孤児だけでなく普通の家庭の子供たちも、すべて戦闘訓練を行おうと言う計画だった。

 だが、男には受け入れられない。なぜなら我が子を守るため、孤児を生贄に差し出したのだから。


(どうしてこうなった)


 最早、男の取るべき道は、ただ一つしか残されてい無かった。


「ふざけるな、老いぼれ共。」


 男は気付いていなかった。栄光の階段とは極めて狭く、極めて足を踏み外しやすいものである事を。





 ライオットは、戦闘時ですら感じなかった、恐怖と言う感情の意味を思い知っていた。


 つい先ほどまで、事後報告(デブリーフィング)という名の説教を受けていた。

 確かに、戦闘状態に入ったにも係らず、報告を忘れていた事は、言い訳のしようのない失態だ。

 だが、此処までの暴虐を受けるほどの物なのだろうか。

 その、悪夢のような光景を、青ざめながら見せられた彼は、神と言う存在がいるのならぜひ聞いてみたくなった。





「そう…… そういう事だったの……」


 時系列は僅かに遡り、二人が整備表を整備部に提出に来る少し前、シーラはレコーダーの中身を確認し、真に打ち倒すべき(愚か者)を見つけることに成功していた。


「フフフ…… これはもう、お仕置きが必要ね……」


 背筋が凍りつくような満面の笑顔を周囲に振りまきながら、周囲を絶望のどん底まで笑顔で突き落としていた。

 そこに飛んで火に入るなんとやら、問題の2人がやって来た。

 やって来てしまったのだ。

 2人の姿を見た瞬間、教官たちは姿を消した。格納庫より逃げる訳にいかない整備士たちは、自分の仕事に集中するふりをして、惨劇の目撃者となる事を避けた。

 ただ1人、シーラだけが2人を出迎え、笑顔を向けていた。


「……あなたは頑張ったみたいだから、今回は見逃してあげる……」


 寒気のするプレッシャーを放つシーラに、そう言われたライオットは、思わず数歩後ずさり、距離を取っていた。


 以降、正確に描写するとR指定どころか、X指定が必要になるため、ダイジェスト版でお送りいたします。


 緋桜(スパナ)桜花(レンチ)の連撃でメリスを吹き飛ばし、マウントを取ってフルぼっこ。

 簡単に説明すると、そういう事になる。

 マウントの時、メリスに何か囁いていたようだが、ライオットには聞き取れなかった。


 これ以上の描写は危険になるためお送りできません。





 メリスは鬼という存在を初めて理解した。

 そう、目の前に存在していた。


 何故か良く解らないが、目の部分が影になりよく見えないのに、爛々と輝く瞳が見える気がするのだ。

 口元には確かに笑みが張り付いていたが、決して笑っていない。むしろ、怒りに顔の筋肉がこわばり、偶々笑顔の型になっただけという事がありありと解る様な笑顔。

 恐ろしかった。ただ只管、目の前の存在が恐ろしかった。

 気が付けば殴り飛ばされ、背中から倒れていた。どうやって、どんな得物でふっ飛ばされたのか、まったく解らなかった。

 おそらく左右からの棒のような物での連撃、圧し掛かられた瞬間に走った痛みによって、肋骨が何本か折れている事が解った。口の中で鉄錆の様な味がする。内臓もいくつか傷ついているのかも知れない。

 頭部に走る衝撃と痛みで、殴られている事が解る。


「あんたが」


 一撃ごとに般若が声をかけてくる。


「シッカリ」


「しない」


「から」


 一撃ごとに意識が薄れていく。


「あの子が」


「あんな目に」


「会うのよ」


 徐々に薄れていく意識の中で、彼は確かに決意した。


「解ってるの」


 最後に痛烈な痛みが股間より脳天まで走り抜け、意識が暗黒へと落ちて行った。


「ウッウッウ……私のかわいいシルフが~~~~~」







メリス リンドの所見


肋骨 4本 粉砕骨折

内臓 及び 性器にも損傷あり


医療カプセル内にて、2か月の療養の必要あり。





 これ以降、メリス リンドは、此の事件の事を、一生涯話す事はなかった。


 また、余談ではあるが、シーラの姿を見ただけで失神しかねないほど脅えていたという事だ。




真にチートな存在はライオットではなく、シーラさんや!

というお話でした。


またこの後、ライオットくんは決して被弾しないよう、回避の訓練を大幅に増やし、お仕置きを受けないよう、必死に為りましたとさ。


どっとはらい


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