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22.捕らわれた王太子と女神で猛獣な婚約者

◆捕らわれたステファン視点6


「油断してしまったなぁ」


 伯父上が何かしてくるだろうと予想はしていたが…

「私の暗殺くらいが精々だろうと思っていたのだがな。まさか王都全体を巻き込むとは…」


 とはいえココはどこだろう。


 何も見えない真っ暗闇…時折一部が明るくなって、見たいとも思わない映像が流れる。…ああ、ほらまた出た。あれは…地方領主が違法な取引をしているところを突き止めて処分したやつだな…


 映像では何も知らなかったのであろう子ども達が泣いている。

 親は裁判の末、強制労働にて服役中だ。子らは親戚どもが保護を拒んだ為、現在孤児院預かりになっている。


 で?……だからなんだ?これを見て良心の呵責に苛まれろと?見くびられたものだな…



 この国の唯一の【王の子】として、善意も悪意も『嫌という程』この身に浴びせられて生きてきた。

 王族に相応しい【光属性】を持ち、常に称賛を浴び羨望の眼差しで見られ……


 一方で【闇属性】は秘匿して…。


 だがな、この際はっきり言わせてもらうが、国を主導する立場の人間として圧倒的に役に立つのは【闇属性】のほうだ!

 光魔法なぞ自分をキラキラしく魅せる位しか使った事ないぞ!


 治癒魔法も使えるが私が使わずとも他の誰かがやるし、逆に仕事を奪ってしまいかねない。私に至っては無用の長物ではないのかと常々思っている。


 イメージなんぞ関係ない!要は役に立つか立たないかだ!

 ゆえに闇魔法を使っての調査や摘発に何の負い目も無いし、私が自責の念で【闇】に沈む事もない。


「さっさとココから出して貰いたいのだがなぁ」


 さて、どうやったら出られるのか……。

 神にでも祈ってみるか?いや、柄じゃないな。それなら私の【女神】に祈りを捧げた方がマシだな…フフフ





◆聖バルゴ学園 他視点


「貴様!ずいぶんな爪を隠していたのだなっ!」


 クロタリアス公爵が放つファイヤーランスを、悉く水の障壁で弾くリカルド…余裕の笑みである。

 逆にクロタリアス公爵からはその余裕が消えていた。何故か先ほどから黒い球体は成長を止めているのだ。


「モブなんでね。物語は主人公達が活躍してナンボだろ!」



 オーフィスはカイゼルの剣とヨハンの水魔法を土壁で弾く、守る対象に気を配らなくて良いカイゼルが躊躇なく切り込んで来るから、オーフィスは防戦一方だ。


「オーフィス!何を手こずっておるっ!さっさと蹴散らさんか!この役立たずめっ‼」


 父の罵声にオーフィスの表情が歪む。好きで役立たずの属性になった訳ではない。

「クソがぁーーーーー‼」≪ズドドドドッッ‼‼≫


「ッ‼」「うわぁっ‼」


「カイゼル‼ヨハン‼大丈夫かっ!?……てめぇ‼」


 オーフィスが渾身の一撃で放ったストーンバレット(石の散弾)が二人を襲い、かわりに

「ひっ!ぐあぁ‼」

 リカルドのアイスバレット(氷の散弾)がオーフィスを戦闘不能にした。


「…く…そぉ」


父の役に立ちたくてこの場にいる訳でもない。ただ、ステファンを排して彼女を手に入れたいが為に…

「ディ…アナ…俺は」



 ミリアが駆け付けヨハンとカイゼルの元で治癒魔法を展開する。


「きゃうん!きゃう~ん!」


「リコス?」

 空を見て飛び跳ねるリコス。火事で煙る空から…どんどん何かが近づいてきていた。


「ご無事ですかーーーー!?ステファン殿下ーーーー!?」


 それは白い飛竜に乗った元気な令嬢と、若干お疲れ気味の隣国王子であった。

「は?ディ…アナ?」




 黒い球体は動きを止め静かだ。リカルドがオーフィス達に気を取られた隙に、


「ええい!もう一度!」


 クロタリアス公爵は再度呪文を唱えようと魔力を練る。と、その時、


『ありえませんわ~~~~~~~~~っ‼』


 の絶叫と共に片方の黒球が弾け、中からは赤面エステルと影ちゃん、そして満足そうなレオン。



「無事だったか!良かったエステル!」


「おっお兄様!聞いてくださいませ!レオン様ったら、わたくしのく唇にキ…キスを~!『初めて』は教会でと決めておりましたのに~」

「思考体だったから、ノーカウントだよ。エステル」ニコニコ



「くそぅ…一匹取り逃がしたか。だが、本命はステファンだ」

 懲りずに魔力を練り始める。



「なるほど!わかりましたわ!わたくしの出番ですわね!」


 ミリアから情報を得たディアナが胸をたたき、風魔法を使って再度【光竜】に飛び乗る。


「ディアナ‼待ってくれ‼」

 満身創痍のオーフィスがディアナを見上げていた。


「…俺は…ステファンよりずっと…ずっとお前をっ愛しているっ‼」



 ディアナは思い出す。彼女が今なぜここに駆け付けられたのか……それはオーフィスからの手紙である。

 一度は見ずに処分しようかと思ったが、情報は大事だと思い直し封を開けた。


 中身は自分に対する過剰な賛辞…正直『誰ソレ』だったが。

 あとは重過ぎる求愛…この中に不穏な文言を見つけた。

『君を大事にする。例え君の帰る場所がなくなったとしても俺が守る』…不穏極まりない。



 まぁ、おかげでこうして来たわけだから、小指の爪先ほどの感謝くらいはするけど。だが、しか~し…


「うっさいわ!このクズ!女の敵!キショいんじゃボケ‼」


 ディアナは『淑やかで心遣いの出来る女』でも何でも無かった。

 エステルよりも巨大な猫を被った【取扱注意の猛獣】であった。


「さぁ行くわよ!ルシファー殿下!光竜ちゃんをとっとと飛ばしなさい!」

「は、はいぃ!」「ぴいゃ~~~~~~~!(ちょっとビビっている)」

 そしてよその国の殿下使いも荒かった…。


 ショックで真っ白な灰になるオーフィス…。さすがのリカルドもちょっと気の毒になった。



 ステファンがいる黒い球体に差し迫る【光竜】


 気付いたクロタリアス公爵が闇魔法シャドウランスで攻撃してくるが、ルシファー殿下の飛竜操縦は完璧だった。

 【光竜】は闇の槍を避け切り、黒い球の前で止まって大きく羽ばたいた。


「光が…」


 その羽ばたきにより起こった風が光を纏って黒い球を打ち付ける!光に押された闇が徐々に霧散していく…


「ステファン‼」

 黒い球が消え落下するステファンを、リカルドが風魔法で受け止めた。



「…助かったよ。出る方法が分からなくてね。ディアナ【光竜】を連れて来てくれてありがとう」


「よかったですわ!ふふ…ルシファー殿下の弱みを握っておいて正解でしたわ」


 少し後ろでシオシオの隣国王子。…いったい何があったのだろうか。隣国の王子様を脅してきたんだ~と冷や汗をかく一同であった。





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