乙女椿の恋語り
①
桜ちるちる、花筏。
カラコロ鳴るは、下駄の音。
盃、番傘、衣擦れに
ふたりの恋はすれ違う。
花びらひとつを、茶に浮かべ。
依依恋恋、ひとつの影。
涙の意味を問うなかれ。
次回、第二幕「恋慕の果てに」
さて、どうする?
②
葉桜、皐月、雨の音。
切れた鼻緒に美丈夫が、
裾を割いて、頬染める。
神社に通い、神頼み。
紫陽花の花は、まだつぼみ。
まだかまだかと待っている。
昼想夜夢は、恋乙女。
次回、第三幕「さつきの恋のはじまりは」
さて、どうする?
③
しとしとと、番傘濡らし俯くも。
募る想いは、恋の雨。
美丈夫の影、現れず。
街ゆく人を目で追って
白の鼻緒に、一日千秋。
狐か狸か、妖か。
四葩の鞠が、転々と。
いろどり添える雨の町。
次回、第四幕「待ち人、来ず」
さて、どうする?
④
夏風が、風鈴揺らしカラカラと。
手ぬぐい、汗で湿らせて
唾で喉を潤した。
したためた文、懐に。
美丈夫の影、刹那の間。
ぶつかる人で、手が届かず。
叶わぬ逢瀬、濡れた文。
次回、第五幕「刹那の逢瀬」
さて、どうする?
⑤
冷やしあめ、団子の甘さに辟易す。
恋わずらいは甘味、通らず。
改めた文、まだ手もと。
見上げた先に、美丈夫が。
下駄の調子をたずねてく。
咳き込む乙女、震える手。
文を渡して駆けてゆく。
次回、第六幕「甘味処と美丈夫」
さて、どうする?
⑥
名月に、恋乙女のため息が。
交わした文は片手ほど。
会えた日数、三度だけ。
貸本通い、読本漁り。
募る想いを、愛及屋烏。
日々是好日とめくる手、止まらず。
次回、第七幕「名月と読本」
さて、どうする?
⑦
晩秋、手鏡、銀杏の葉。
ふたつの下駄が、カラコロリ。
情意投合、日が落ちる。
吹きさぶ風に、羽織り借り
美丈夫語るは、別れの時。
わけを聞いても、躱される。
乙女の涙と、香らぬ羽織り。
次回、第八幕「終わりのはじまり」
さて、どうする?
⑧
霜おりて、手鏡なくし、意気消沈。
かまどの薪は、灰になる。
舞い散る雪に、美丈夫想い
鳶色探せど、消え失せた。
文も、鼻緒も、羽織りさえ
もらった思い出、旅に出る。
探せど、探せど、あてはなく
書きかけの文、滲む文字。
次回、第九幕「手にこぼれた思い出」
さて、どうする?
⑨
年初め、女将に知恵を拝借す。
昼想夜夢は、まやかしか。
妖、妖怪、幽霊か。
うわさの花は、椿色。
紅が花咲き、鷺が飛ぶ。
されど、鈍色、曇り空。
ほうきを掃いても、晴れ間来ず。
次回、第十幕「色は匂へど散りぬるを」
さて、どうする?
⑩
鬼は外、福は内。
春よ、来い来い節分草。
冬が明けたら、匂い立つ
春の嵐がやってくる。
比翼之鳥には、なれずとも
決して忘れぬ、恋心。
まばたきすれば、あの人が
映れど刹那、消えてゆく。
次回、第十一幕「梅がほころび、また春が」
さて、どうする?
⑪
桃の節句の祝い事。
鳶の羽織りに、駆けてゆく。
見れば美丈夫、目を開く。
我が名は木魅、妖だ。
あなたの涙が不憫でな。
近づきすぎた、すまないね。
最後に乙女に渡された
椿の櫛は妖形見。
消え入ることなく、子に孫に。
受け継ぐ櫛は、異形の恋。
次回、最終幕「乙女椿の櫛」
答えはそなたの中にある。




