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雨の駅で、君を忘れなかった  作者: アル治


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7/8

第7話  正面からの恋

いつも読んでいただきありがとうございます。


仕事終わり。

オフィスの空気が、少しずつほどけていく時間。

「悠斗」

声をかけたのは沙耶だった。

デスクに寄りかかるようにして立っている。

「このあと、時間ある?」

悠斗は少し考える。

「まあ…少しなら」

「じゃあ、付き合って」

軽い調子。

でも断れない空気。

「いいよ」

2人で会社を出る。

夜の街。

人の流れの中を並んで歩く。

少しだけ距離が近い。

でも、悠斗は特に気にしていない。

近くのカフェに入る。

席に座る。

注文を済ませ、沈黙。

沙耶はストレートに言うタイプだ。

回りくどいことはしない。

「ねえ」

悠斗を見る。

まっすぐ。

逃げ場を作らない視線。

「私さ」

一呼吸。

そして……

「悠斗のこと好き」

静かに言う。

でも、迷いはない。

悠斗は少しだけ目を伏せる。

想定していなかったわけじゃない。

でも、軽くも受け取らない。

「……そっか」

短く答える。

沙耶は少し笑う。

「それだけ?」

「何て言えばいいか…」

「じゃあ、はっきり言う」

身を乗り出す。

距離が一気に近づく。

「付き合ってよ!」

言い切る。

強い言葉。

でも、その奥にはちゃんと本気がある。

悠斗はしばらく黙る。

逃げない。

考える。

そして……

「……ごめん」

静かに言う。

空気が止まる。

沙耶は一瞬だけ固まる。

でもすぐに笑う。

「早いね」

冗談っぽく。

でも目は笑っていない。

「理由、聞いていい?」

悠斗は少しだけ迷う。

でも、答える。

「好きな人がいる」

その一言。

沙耶の表情がわずかに変わる。

「……誰?」

悠斗は視線を落とす。

答えない。

言わない。

でも……

その沈黙が、答えだった。

沙耶はゆっくりと息を吐く。

「そっか…」

小さく言う。

カップに手を伸ばす。

少し震えている。

でも気づかれないようにする。

「勝てないってことか」

冗談みたいに言う。

でも本音。

悠斗は何も言わない。

言えない。

沙耶はしばらく黙ってから、ふっと笑う。

「でもさ」

顔を上げる。

いつもの強さが戻っている。

「まだ決まったわけじゃないでしょ?」

悠斗が少しだけ目を上げる。

「付き合ってないんでしょ?」

「……うん」

「じゃあ、諦めない」

はっきり言う。

まっすぐ。

逃げない。

それが沙耶だった。

「私、正面からいくから」

軽く笑う。

でも、その言葉には重さがある。

悠斗は小さく息を吐く。

「……そうか」

それ以上は止めない。

止める権利もない。

店を出る。

夜の空気。

少しだけ冷たい。

「じゃあね」

沙耶が言う。

「送らなくていい」

強がりじゃない。

自分で立つための言葉。

「お疲れ」

悠斗が言う。

「うん」

少しだけ背を向ける。

歩き出す。

数歩進んで、止まる。

振り返る。

「でもさ」

悠斗を見る。

「私の方が可愛いと思うけどね」

少しだけ笑う。

強がり。

でも、それが沙耶らしさ。

そのまま歩いていく。

振り返らない。


その頃。

駅のホーム。

樹梨は1人、電車を待っていた。

今日も残業だった。

静かな時間。

ふと、思い出す。

「好きな人いる」

誰かがそう言った気がした。

でも、それは自分に向けられた言葉じゃない。

関係ないはず。

なのに……

なぜか少しだけ、胸がざわつく。

(……なんでだろう)

分からないまま、電車が来る。

その少し離れた場所。

美咲が立っていた。

スマホを見ている。

画面にはメッセージ。

「今日、沙耶と一緒だったよね?」

既読はつかない。

でも、分かる。

(もう動いてる)

ゆっくりと目を閉じる。

「……遅いんだよ」

小さく呟く。

その声には、焦りと苛立ちが混ざっていた。

第7話読んでいただきありがとうございます。

後少しお付き合いください。

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