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雨の駅で、君を忘れなかった  作者: アル治


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5/8

第5話  やめた方がいいよ

いつも読んでいただきありがとうございます。

昼休み。

いつもより少しだけ、人が多い。

席が埋まっていて、樹梨は空いている場所を探す。

端の方に、1つだけ空席。

そこに座る。

毎日のこと。

お弁当を開く。

周りの会話は聞こえるけど、気にしない。

そうやって、やり過ごす。

「隣、いい?」

不意に声がした。

顔を上げる。

美咲だった。

「……どうぞ」

自然に椅子を引いて座る。

距離が近い。

逃げ場はない。

少しの沈黙。

ペットボトルの蓋を開ける音だけが響く。

それから、美咲が口を開く。

「樹梨ってさ」

樹梨は顔を上げる。

「悠斗のこと好きなの?」

一瞬で、周りの音が遠くなる。

「……え?」

言葉が出ない。

美咲は笑っている。

でも、目は笑っていない。

「最近、よく話してるよね」

「別に…」

「別に?」

少しだけ身を乗り出す。

逃げられない距離。

「悠斗って優しいからさ」

「誰にでもああなんだよ」

静かな声。

でも、確実に刺さる。

樹梨は何も言えない。

「勘違いする子、結構いるんだよね」

続ける。

淡々と。

感情を乗せないまま。

「私と悠斗」

少しだけ間。

「昔から一緒なんだ」

その言葉に、重みがある。

事実としての強さ。

「だからさ」

「やめた方がいいよ」

静かに言う。

命令でもない。

でも、拒否できない空気。

樹梨は視線を落とす。

箸を持ったまま、動かない。

(……)

頭の中がうまく回らない。

でも、言葉は出る。

「……はい」

小さく。

それだけ。

美咲が一瞬、止まる。

「え?」

思っていた反応と違ったのかもしれない。

樹梨はお弁当を閉じる。

「私、別に…」

少し考えてから言う。

「そういうつもりじゃないので」

本音だった。

自分から近づいたわけじゃない。

期待もしていない。

だから――

やめるも何も、最初から何もしていない。

美咲はしばらく樹梨を見ていた。

何かを測るように。

そして、ゆっくり立ち上がる。

「ならいいけど」

短く言う。

そのまま去っていく。

残されたのは、少し重い空気。

樹梨は動かない。

閉じたお弁当を見つめる。

(なんで…)

(私に言ったんだろう)

分からない。

ただ1つ分かるのは――

少しだけ、胸が苦しいということ。

休憩室のドアが開く。

「樹梨?」

悠斗だった。

「もう昼終わるぞ」

いつも通りの声。

何も知らない顔。

樹梨は立ち上がる。

「……はい」

それだけ。

悠斗は少しだけ違和感を覚える。

(なんか…)

でも、分からない。

「どうかした?」

樹梨は首を振る。

「いえ」

それ以上は言わない。

言えない。

2人で歩き出す。

距離は昨日より近いはずなのに――

なぜか、遠く感じる。

その後ろ。

少し離れた場所で、沙耶がその様子を見ていた。

腕を組んでいる。

「……へぇ」

小さく呟く。

そして視線を動かす。

今度は、美咲の背中へ。

(なるほどね)

状況を理解するのは早い。

沙耶はゆっくりと笑う。

「じゃあ、私も遠慮しないわ」

その目には、はっきりとした意思があった。

5話読んでいただきありがとうございます。

後半分位です、よろしくお願い致します。

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