第二話
綺上院の屋敷に着いた。
本当に使用人として雇用されるとは。
立派な門、高い塀に囲まれた屋敷。
古風な造りだが、素人目でも職人の技術を感じる。
庭に生えている松の貫禄と存在感が大きい。
屋敷を案内してくれる人がいなかったら、迷子になる広さだ。
「この先のお部屋に、野ばらさまがいらっしゃいます。くれぐれも失礼がないように」
四十代後半くらいの使用人の大先輩ーー水島さんに言われる。
「はい」
僕は着ているスーツやネクタイを確認した。
水島さんは正座をする。
僕も正座をした。
「野ばらさま。新しい使用人を連れて参りました」
「いいぞ。入れ」
落ち着いた口調が返ってきた。
障子を開けると、二十畳の和室に着物姿の少女が座っている。
写真で見た、十二歳くらいの少女だ。
この子が、綺上院野ばらさま。
なぜ、賞金十億も賭けられているのだろう。
水島さんは一礼をする。
「野ばらさま、私は失礼します」
「ありがとう、水島。ご苦労だったな」
水島さんが立ち去り、僕と野ばらさまだけになる。
挨拶しなければ。
「はじめまして、綺上院野ばらさま。本日より使用人として仕えさせていただきます。百谷かけると申します」
頭を下げると、野ばらさまは笑った。
「顔を上げていいよ。かしこまる必要はない。あたしは堅苦しいのが嫌いでな」
野ばらさまは可憐に微笑んだ。
「ようこそ、綺上院の屋敷へ。あたしは当主の野ばらだ。これからよろしくな、かける」
「よろしくお願いします」
僕は一礼をした。
父の借金を張消しするために、この子を殺さなければいけないのか。




