第1章 創造の代償
何を書いたらいいのかよく分かりません、ごめんなさい。
々、ひとりぼっちの悪魔がいた。
彼は、灰色のレンガと藁の屋根でできた小さな小屋に住んでおり、その近くには、どこか別の場所へと繋がっているかもしれない謎の門があった。しかし、その門をくぐろうとする者は誰ひとりいなかった。
孤独に疲れ果てた悪魔は、ある日ひとつの考えに至った。
——磁器の人形を作ってみよう。
そうすれば、もう独りではなくなるかもしれない。
彼は小さな図書室へ向かい、磁器人形の作り方が書かれた本を探した。
壊れかけた屋根の隙間から差し込む光を浴びながら、夕方まで本を読み続けた。
やがて、彼は人形の下書きを始めた。
一つ一つの線は力強いのに繊細で、まるで紙を傷つけてしまうことを恐れているかのようだった。
鉛筆の音は静かに響き、開いた本のページは微かな風に揺れていた。
描き終えると、彼は材料を集めるために必要な荷物を小さな袋にまとめ、翌日の早朝に出発する準備を整えた。
翌朝、地面に最初の光が落ちると同時に、彼は小屋を後にした。
荷物を確認し、必要な道具と材料リストをもう一度見直すと、深く息を吸い、歩き出した。
目指すは——タンピ狐の森。
その森の中心には、物に“命”を宿すために必要な暗い魔力を蓄える野生の花が咲くと言われていた。
道中、彼は一匹のタンピ狐と出会った。
その狐は珍しく、岩の森から出てきたようだった。普通、狐たちは岩を扱うことが苦手で、噛めば歯が折れてしまうため、岩の森を避けていた。
タンピ狐は、狡猾で人を惑わす生き物として知られていた。
彼らが獲物に何をするのか、真実を知る者はいないが、噂だけで十分に血生臭かった。
人間に化けて騙し、血のように赤い行為へと誘うことができるとも言われている。
彼らは普段、群れで行動しないはずだったが、この小さな世界では何故か結束しており、そのせいで妖精もポリシスも悪魔でさえも恐れていた。
唯一恐れないのは、モンスター種と“岩の森”に棲む岩の生き物たちだけだった。
タンピ狐は、他の森——妖精の森、ポリシスの森、そして悪魔の小さな村にまで侵入してくることがあった。
「迷ったのか? 手伝ってやろうか?」
狐は防御の姿勢を取りながら声をかけた。
悪魔は一歩下がり、争う気がないことを示した。
この種族と戦いになれば命はない。
「欲しいものがあるだけだ。争う気はない。」
悪魔は静かに言った。
「お前たちの森の中心に咲く野生の花が欲しい。」
狐はその視線の先を追い、にやりと笑った。
「ジジジ……野生の花、か。で、何をくれる?」
その目は妖しく光っていた。
悪魔の持ち物は少なかった。
素材リストの紙、古びたハサミ、つるはし、小さなスコップ、縄……そして三粒のクロッカス・ヴェルヌスの種。
冬の終わりにだけ花開く大きなクロッカスだ。
「クロッカス・ヴェルヌスの種をひとつ。……それ以上は出せない。」
狐は考えた。
彼らの森では季節が永遠の春で止まり、花が咲くことは二度とない。
五千年前に“最初の季節の妖精”を食べてしまった呪いのせいで。
「ジジ……で? 肉は? 肉は持ってないのか?」
狐の目が肉欲しげに細められた。
悪魔は、ほんの一瞬ためらい、自分の尻尾へと視線を落とした。
「肉は……今はない。
だが……尻尾なら、やる。」
狐は口をわずかに開き、唾を飲み込んだ。
息が荒くなり、理性が揺らぎ始めていた。
「……切れ。
その尻尾を、味わわせろ。」
悪魔は震える手で古びたハサミを持ち、岩の上に尻尾を置いた。
誰だって、自分の身体の一部を切り落とす前に迷うものだ。
だが彼は——
バチン、と強くハサミを閉じた。
軟骨が砕ける音が響き、血が勢いよく溢れた。
激痛に悲鳴を上げながらも、狐に背を向けないように踏ん張った。
彼は尻尾を狐に投げた。
狐は目を輝かせながら飛びつき、狂ったように貪り食った。
「……約束だ。花をくれ。」
悪魔の声は震えていた。
狐は尾を大きく振り、ぽん、と野生の花のつぼみを出した。
乱暴にそれを投げつける。
「ほらよ……。さっさと失せろ。
これ以上やると、お前ごと食いたくなる。」
悪魔はほとんど走るように逃げた。
葉で傷口を覆い、血を止めると、深く息を吐いた。
——森の中心まで入らずに済んでよかった。
生きて出られる者などほぼいない場所だ。
「次は……磁器、それから妖精の髪、目の材料、布……」
彼は血で濡れたリストを見つめ、微かに笑った。
「もうすぐだ。もうすぐ……独りじゃなくなる。
妖精の森だけは、慎重に行かないと。」
そう呟き、悪魔は次の材料を求めて歩き出した。
何を書いたらいいのかよく分かりません、ごめんなさい。




