「私が君のエースになってあげる!」
俺、中野蒼也は大阪産まれ大阪育ちの健康な日本男児。
中二から不登校になる。
原因は「合わなかったから」
その後、偏差値なんて無いに等しいレベルの通信制高校を受験したが不合格。
仕方なく県内で一番偏差値の低い不良校に進学するも、当然合わず再び不登校。
卒業できず、結局自主退学した。
そして、悠々自適な自宅警備員生活を楽しむこと3年...
20歳の誕生日に、
「もう大人なんだから養う義理はない。1週間以内に職を見つけて出ていかなければ自衛隊に入れる」
と父から宣言されてしまい、仕方なく就活をする...が資格も職歴もない中卒を雇ってくれるところなんて勿論無かった。
自衛隊だけは絶対に勘弁...と思って自棄になって見つけた就職先は、大坂ミナミにあるホストクラブ「Dream love」
通称「ドリラブ」だった。
ドリラブで働き始めて三ヶ月。
元々顔が良いわけでも話が上手いわけでも酒が強いわけでもない、超絶ホストに向いていない俺は、3ヶ月間ノルマを達成出来たことなんて無かった。
流石に、オーナーからお呼び出しを受けて。
「来月はノルマ達成できなければクビだから」
と、宣告されてしまった。
そしてーーー
ノルマまでは程遠いのに、来てしまった月末。
「もう無理だ。」
諦めていた時
「あれ?」
女神が現れた。
「蒼也さん?なんでこんなところに...?」
彼女は柊桃愛。
黒い地雷服に身を包み、長い黒髪を揺らす彼女はルビ通り、俺の従姉妹だ。
彼女は中学生の頃からホストのSNSをチェックしていたり、兎に角「将来、ホストにハマってしまうのではないか」と、昔から心配されていた。
そのため、今ホストクラブにいるのは、別に意外ではなかった。
寧ろ彼女からしたら俺がここにいる方が不思議だろう。
「なぜ」と問い、心配げに瞳を揺らす彼女に
「色々あって、今この店でホストやってるんだよね」
少しぼかしつつ、真実を伝えた。
「色々...ねぇ」
彼女は、そう相槌を打った後
「名刺ちょうだい。あるでしょ?」
名刺を要求してきた
「は…いや、あるけど…」
「ちょーだい」
なんで名刺を欲しがるんだ?
しかも従兄弟の、俺の…
でも、断る理由も無かったので、素直に名刺を渡した
「ふーん…源氏名、蒼にしたんだ」
「源氏名、“あお”な。」
上に読み仮名が書いてあるのに間違えられた…
やはり、本名から取ったから桃愛にとっては“そう”と読むイメージが強かったようだ。
「__あとは任せて」
「は…?」
いやいやいやいや?!?!
“任せて”とは?!?!
はっきり言って意味がわからない
そんな風に言われたら、もしかして、もしかしたら、指名…してくれるとか、?シャンパン入れてくれるとか、?
ちょっと…期待してしまう。
「…蒼さん指名で。姫パスでお願いします」
「はぁっ?!?!?!」
まさか、まさか本気で指名してるとは……
ってか姫パスって…しっかり色んなホスクラ行ってるじゃねぇか!!
「蒼さん指名ですね。お席でお待ち下さい」
「はーい」
内勤さんの案内についていく従姉妹…俺の、初指名客(複雑)
いや、でも、ここで売上あげないと…
ノルマ達成出来ないと、ほんとにクビだ。
従姉妹なら、やりやすいだろうし、好都合だと言うべきなのだろう。
「蒼さんー!!初指名入りました!!5番卓お願いします!!」
「わかりました、ありがとうございます!!」
内勤さんに促されるまま、彼女のいる5番卓へ
「あっ、やっと来た」
典型的な地雷女…もとい、従姉妹は、ク◯ミのスマホケースがついたスマホをいじりながら待ってくれていた
「ももちゃん!お待たせ!!指名ほんっとーにありがとう!!」
「別に、やりたくてやったことだし」
冷たい…ような気がする。
こんな場所だからか、?
昔はもっと、“そうやさん”って呼んで、明るく話してくれたのに…
でも、従姉妹といえど姫!
お金を払ってもらっている以上、プロとして楽しませなければ!!
まず…話の話題は……と思案していた時、彼女の声が聞こえた
「そういえば今日、被りいるの?」
“被り”とは、指名ホストが自分と被っている客のことだ。
ここでいう、桃愛以外で俺を指名してくれている人。
そんなの、勿論…
「いないよ」
入店3ヶ月、従姉妹が初指名客だから!!
なんて、言えない…
「……人気ないの?可哀想に」
哀れみをの目を向けてくる彼女、昔からそうだった。
中学の頃も「童貞…かわいそ」って哀れまれたっけ…
「悪いかよ」
「別に、悪いなんて言ってないじゃない」
やべぇ…空気が悪くなってきた…
なんとかしていい感じにしないと…従兄弟とはいえ金払ってもらってるんだから。
色々と思案していると、先に彼女が口を開いた。
「そういえばココ、これまできたことなかったのよね。口コミ悪くて」
「ドリラブってキャストにノルマが課せられるんでしょう?大丈夫なの?」
心配気に瞳を揺らす彼女。
正直、今月もノルマが本当にヤバい。
このままじゃ寮もドリラブも追い出され、野垂れ死にするか自衛隊入隊だ。
あと50万…新人に課せられるノルマすらもこんなにも梃子摺るとは…情けない。
だが、従兄弟に頼むなんてそれこそ申し訳なさすぎるしプライドがズダボロだ。
「心配ありがとう。けど、今月のノルマは大丈夫だから」
精一杯の作り笑顔で明るく答えた。
けれど、彼女は何かを見透かしたような目で
「____シャンパン一本ください」
と宣言した
*
なんだかんだ楽しんでくれたようで、満足気にキャッシャーへ向かう彼女と俺
キャッシャーにて彼女は、衝撃を与える。
「100万。あのシャンパンに上乗せさせてください。チップということで」
なんと、12万のシャンパンに100万上乗せするというのだ。
「そんな無理しなくても…」
「勘違いしないで。無理なんてしてないから…それと、____私は、貴方をナンバーワンにしてあげる」
「……は?」
思いがけない言葉に、思わず素っ頓狂な反応を示してしまった
「最近、他店の本担がトんじゃってね。だから私が蒼くんのエースになってあげる!一緒にナンバーワン目指そ!!」
「ま、じか…」
この時、従兄弟ミナミでがどんな存在なのか全く持って分かっていなかった




