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鳥囲まれた不吉第二皇子 ~あなたの側にいれるなら、鳥でもネズミでも騎士でも皇太子妃でも、なんでもいいです~  作者: 夢野少尉


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30.ナユタとの婚姻は反対です

 アリシア皇后は、監視していた騎士から、報告を受けていた。


「モモイロノトリ二羽が園庭でナユタ卿とたわむれていました」


 皇后はラエル第ニ皇子になついている鳥かどうかたずねた。

 その騎士は、詳しくはわかりませんがナユタ卿になついてたので、たぶんどちらかが第二皇子のかわいがっている鳥でしょう、と答えた。


 (あのモモイロノトリはすでに8年ラエルに可愛がられている……あの子の現在の最大の弱点だろう……)


 アリシア皇后は、そう推測した。

 幼い頃から付いていた侍女アリサに裏切られても精神的に立ち直れたのは、あの忌々しい鳥の存在だと。


「皇后陛下、へヴァン殿下が来られました」


 メイドが部屋の扉越しに皇后に声をかけた。


「通して。待っていたのよ」


 へヴァン皇子が、お茶を配膳するメイドを引き連れて部屋に入ってきた。


「母上 、誕生日パーティーの打ち合わせで参りました。お茶も用意しました」

「気が利くわね 。当日のスケジュールの草案なんだけど……」


 へヴァンは、側で突っ立っている中流騎士に視線を向けた。

 先程、ナユタのと小鳥の様子を報告していた騎士だ。


「母上、彼と何か話をされてましたか?」

「退屈だったから、世間話に付き合ってもらっていただけよ」

「そうですか……」


 へヴァンは疑惑の目で彼を見つめた。


「もういいわ、下がりなさい」


 皇后はバツが悪くなったのか、騎士を下がらせた。


「……羽が付いてますよ」


 へヴァンは下がろうと扉に手をかけた騎士に声をかける。

 背中の中心辺りにピンクの羽が一つ付いていた。


「これは……モモイロノトリかな? 最近、よく皇居内でよく飛んでますね、愛らしい鳥です」


 へヴァン皇子は騎士に怪しく微笑みながら声をかけた。


「は、はい……そうですね」


 騎士は皇子の鋭い眼差しに少し怯えながら答える。


「僕の好きな鳥です」


 へヴァンは一言付け加える。


「ほら、へヴァン、そちらに座って、お茶をいただきながら、パーティーの草案の話をしましょう」


 皇后が騎士に助け船を出し会話を途切れさせた。






「これで、大体パーティー当日のスケジュールは把握できた? 細かい部分は執事やメイド長と協議を重ねるわ」

「ありがとうございます」

「ところで」


 皇后アリシアは間をおいて、ゆっくり口を開いた。


「シュバルツ家のナユタ令嬢のことはどう思っているの?」


 へヴァンは唐突な想定外の問いに顔をゆがめた。


「なんですか? 母上まで……根も葉もない噂話に振り回されてはいけませんよ」

「本当に……根も葉もないのね?」

「当たり前じゃないですか」

「それを聞いて安心したわ。私は彼女との婚姻は反対です」


 皇后はきっぱりと言いきった。


「なぜですか? 出自が孤児院だからですか?」

「まあ、そうね」


 へヴァンは、アリシア皇后自身の膝におかれた握りこぶしが震えているのが目に入る。

 それと同時に、彼女の肩に少し黒みがかった煙のような物体が現れた。


「シュバルツ家の令嬢だから反対なさっているのではないのですか? 『エストリニア神の平定』を実現させないために」

「な、何を言って……っ! 何より彼女は養女だから、皇太子妃になっても神の平定は得られないわ」

「母上は例外があるのをご存じではないのですか? 血のつながりがなくても、神託が降りて、血統の証であるシュバルツ家紋章が体に表れることがあるという逸話を」


「……へヴァンっっ!」


 皇后アリシアは肩で息をするほど呼吸が荒くなっていた。


「そんな迷信は信じてはなりません ! 今まで建国以来誰一人そのような者は出現しなかったのよ !」

「……そうですね 、失礼しました」


 へヴァンは皇后の体調が明らかに変化したことに驚き、なだめるように返答した。


「あなたが皇位継承権を引き継ぎ、6大貴族直系の令嬢と婚姻する……それが今の母の願いです」

「はい、わかりました」


 そう答えると、アリシアの黒い影が薄くなり、彼女の息も整い始めた。







「皇帝陛下、へヴァン殿下がお見えになりました」

「通しなさい」


 へヴァンは皇后と話終えた後、その足で皇帝陛下の執務室を訪れた。


「皇帝陛下に御挨拶申し上げます」

「どうした? 皇后かラエルに何かあったのか?」

「ええ……母上のことでご報告が」

「わかった 、聞こう」


 陛下は小さなため息をつき、二人はソファに座り密談を始めた。

 

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