表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鳥囲まれた不吉第二皇子 ~あなたの側にいれるなら、鳥でもネズミでも騎士でも皇太子妃でも、なんでもいいです~  作者: 夢野少尉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/83

9.揺れ動くナユタ

 数日前、レオンは亡き妻ナーシャ夫人の肖像画の前にナユタを案内した。


「私……?」

「そっくりだろう? 私の妻だ。 亡くなってしまったけど君の母親だね 」

「どうして?」

「気になることがあるのか?」

「どうして、死んだ人の絵を飾ってるの?」

「……あぁ、それが疑問なんだ、そうだね、 この場所はシュバルツ家歴代の当主や伴侶、家族の肖像画が飾られているんだよ 。 後世に先祖の姿を残すことで、故人を偲んだり、功績を称えることもあるだろう」

「亡くなった人を偲ぶ? なぜ?」

「そ、それは……」

「なんのために?」


 レオンは愛された記憶がない子供には、理解できない感情なのかもしれないと憶測を立てた。


「ナユタは、突然会えなくなったら悲しくなる人はいないかな?」


 ナユタは、すぐにラエル皇子を思い浮かべた。

 しかし、ナユタは小鳥の「リリィ」としては、ラエル皇子を訪ねて、小さなお茶会でくるみを食べてので、毎晩会っている。

 しかし、人間の「ナユタ」としては、まだラエル皇子には会ってなかった。

 追求されるのも面倒なので、まだそんな人はいないと答えた。


「そう……じゃあ、それが私にとっては妻のナーシャだったんだよ。 今ここにいなくても、彼女との思い出が私を生かしてくれている」


 レオンが切なそうにナーシャ夫人の肖像画を見つめていた。


「肖像画はそれを手助けしてくいるかな 。ここに来ると彼女と対話しているような気分になる」


 ナユタはレオンの手を強く握った。


「でも、もういません」


 そして、素直に自分が思うことを語った。


「人間はもう会えない人に振り回され過ぎかもしれません」


 レオンはかがんで、ナユタの目線に合わせて話す。


「でも人を強くするのも、また思い出だったり記憶だったりするんだよ」

「……」

「君も人の気持ちを思いやれる人間になってほしい 」

「その感情がわかれば、人間になれますか?」


 レオンはなんだか妙な会話のような気がしたが、ナユタがまだ幼いせいで、使う単語を間違えてるのだろうと結論づけた。


「もちろん ! 素晴らしいレディになれるよ」


 こんなやり取りがあったせいで、レオンはナユタが、幼少期に大人から愛情を受けて育っていないせいだろうと推測した。

 しかし、実情はナユタが本来鳥類だから、人間の感情がよくわからないだけだ。

 肖像画を見ながら、亡くなった人間に思いを()せることが理解できない。

 この前、モモイロトリの友達のカリナが死んだ。

 しかし、思いを馳せることなどない。

 これは野生動物全般にそうなんじゃないか? 

 命は常に生まれては消える。

 それは、とても自然なこと。

 少なくともモモイロノトリは、仲間や家族に深入りしていない。

 自分が生きるのに精一杯だ。

 人間は、感情が自分の身体を壊すこともあるらしい。

 私は鳥に戻ることも、人間になることもできないかもしれない……ナユタは肖像画の件で、自分の中途半端な存在を再認識するのだった。


( ただ、ラエル皇子様の側にいられたら……それだけでいいんだ )


 切なくなった時、ナユタはラエルとの人間としての初対面を想像してやり過ごしていた。







 シュバルツ家の養女になって、半年が過ぎていた。

 しかし、人間になったのはいいが、皇子には夜しか会えなくなった。

 早く人間⋯⋯ナユタになった私を見てほしい。

 皇子様と会話がしたい。

 手をつないでみたい。

 ナユタの空想は、人間の姿での初対面に期待が膨らむばかりだ。

 あと気がかりなのは、皇子様の身の安全だ。

 殺気だった皇子の環境はどうにかならないのか。

 あれだけの騎士達に護衛されてるから、大丈夫なのかなあ……私が直接護衛できればいいのに。

 後日、ナユタの悪い予感はあたってしまうのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ