『私に似合うからもらうね』が口癖の妹に、婚約者ごと全部持っていかれましたが、私は幸せになりました
「この人形は私に似合うから、私がもらうね」
「この髪飾りは私に似合うから、私がもらうね」
「このドレスは私に似合うから、私がもらうね」
「この部屋は私に似合うから、私がもらうね」
私の名前はアシェリー・ラグランジェ。
ラグランジェ伯爵家の長女だ。
私には私の物を欲しがる腹違いの妹カトリーナがいる。
お父様がお母様の妊娠中に、お母様付きの侍女に手を出してしまったそうだ。侍女は泣いてお母様に謝り、屋敷を出ていこうとしたそうだが、お母様が許して側室にしたと聞いている。
もともと幼い頃から私のお菓子やおもちゃを欲しがる癖があったが、お母様とカトリーナのお母様が亡くなってから、その癖に拍車がかかってしまった。
私が注意すると「ひどい」「ずるい」「お姉様ばかり」「差別よ!」と話にならなかった。そして決まってカトリーナに甘いお父様が「姉なのだから妹に譲れ」と私を嗜めて終わるのだった。
そして──
「ダイナー様には私の方がお似合いだから、私がもらうね」
ついに婚約者も奪うようだ。
「アシェリー・ラグランジェ!本日をもってお前とは婚約破棄する!俺は新たにカトリーナ・ラグランジェと婚約すると宣言する!」
貴族学園の卒業パーティーが開かれた大ホールの中央で、婚約者のダイナー・クロッチはカトリーナの腰を抱いて高らかに宣言した。
ダイナー・クロッチ。
クロッチ侯爵家の三男で、学園卒業後私と結婚して伯爵家に婿入りすることになっていた男性だ。
幼少時に決められた婚約で、家同士の契約だから双方致し方ないと思って許嫁でいた。
さらさらの緑色の髪と形の良い琥珀の瞳が美しいと評判の、見た目は女性が好むキザな紳士だ。だけど本性は──。
「お前は同じ伯爵家の娘、カトリーナを『愛人の娘』『汚らわしい存在』と虐めていたそうだな。伯爵がカトリーナに買い与えた物を奪い、お前が使い古した物を使わせていると聞いたぞ!」
敵意むき出しで怒鳴ってくるが、言ってることは事実無根だ。物を奪われているのは私だ。
現にカトリーナの髪を彩っている髪飾りは、私がお母様からプレゼントされた大切な物だ。
それから、着ているドレスも靴もアクセサリーも、私が卒業パーティーのために準備した一式だったのに、いつものようにカトリーナに奪われたのだ。
「しかも、先日はカトリーナを鞭打ったそうじゃないか。彼女の背中に痛々しい痕があったぞ。なんて野蛮で下劣な女なんだ!」
会場がざわついた。
純粋に『私が鞭打った』ことに驚いている人もいたが、大抵の生徒は『結婚前の女性の背中を見た』事に驚きと軽蔑の目で二人を見ていた。
貴族界隈は『貞淑』と『処女性』を重要視する。ダイナーの言葉は『カトリーナと婚前交渉をした』と受け取られても仕方がない話だ。
幼い頃から付き合いがあったけど、この人……こんなにバカだったのね。
「お前のような性悪と結婚するなんて虫酸が走る。俺はカトリーナと添い遂げる!」
カトリーナとダイナーは見つめ合い、二人だけの世界を堪能している。
周りの生徒は白けた目を向けているのに、気が付かないのね……。巻き込まれている私の方が恥ずかしくて、嫌になるわ。
「事実無根で笑ってしまいます。一つ一つ叩き伏せて差し上げたいですが、パーティーの時間を無駄にしたくないので、手短に済ませましょう。まず、婚約破棄は家同士の契約です。あなた一人の一存でどうにか出来るものではありません」
私の言葉を待っていたかのように、ダイナーは不敵に笑いながら懐にしまっていた二枚の書類を出した。
「婚約者変更については両家から了承を得ている!これが両家が同意した書類だ。それから、伯爵は外道なお前を伯爵家の籍から外し、修道院に入れると──」
ダイナーの言葉を最後まで聞かずに、私は高らかと掲げられた書類を奪った。
婚約者変更の書類と私の貴族籍を抜く書類だ。
婚約者変更の書類にはお父様と侯爵様のサイン。伯爵家、侯爵家の当主以外押すことが出来ないそれぞれの家紋印があった。
また、私の貴族籍を抜く書類にもお父様のサインと家紋印がくっきりと押されている。
この二枚の書類は本物だ。
「ふふっ。破いたところで意味はないぞ。もう一枚準備しているからな!明日、両家で書類を提出しに行く。だが、お前がこの場でカトリーナに謝罪するなら、貴族籍を抜かないよう俺とカトリーナで伯爵にとりなしてやる。さぁ、アシェリー!カトリーナに謝れ!!」
ダイナーは勝ち誇った顔をし、カトリーナはいやらしい笑みを見せた。
そして私は──
「ありがとうございます!!」
と、満面の笑顔で答えた。
「「へ?」」
予想外の言葉に目の前の二人は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。う~ん、アホづらがお似合いの二人よ。
「メメ!」
私が呼ぶと、給仕の女性が一人スッと現れた。私は先程の書類を手渡し「急いで王宮に提出してきて」と言った。
メメは「はっ!」と言って、颯爽と大ホールを出ていった。
彼女は私が個人的に雇用している侍女兼護衛。居場所のない伯爵家で唯一の味方だ。
「おっ、お前……。何してるんだ……」
「婚約解消に、伯爵家との縁切り、ですね。本っ当~に、ありがとうございます!いや~、あなたと結婚したくなかったから、私も今日この場で貴方を断罪しようと準備していたのよ。手間が省けたわ。本当にありがとう!あっ、私の名誉を著しく貶めたことに対しての慰謝料請求は後日送りますので、覚悟しておいてくださいね」
「ハハ……。何言ってるのよ。気でも狂ったのかしら?お姉様はダイナー様の婚約者の座も、ラグランジェ伯爵家の娘の座もなくしたのよ。何の力もない平民に成り下がったのよ!それを『ありがとう』なんて、負け惜しみかしら?ふん!いいわ。後から後悔したって遅いんだから」
カトリーナは、はじめは顔を引き吊らせていたが、徐々に気持ちを立て直しこちらを嘲笑った。
まぁ、メメの早さなら追い付かれることも、妨害されることもないだろうから、本当のことを言っても良いだろう。
「カト──」
「アシェリー」
カトリーナに真実を告げようとすると、突然腰を支えられた。
「ずいぶん面白いことになってるけど、僕にも説明してくれるかな?」
「っ……え?ルーカス?」
燃えるような赤い髪と、澄んだ水面を思う水色の瞳が美しい絶世の美男子が隣に立っていた。
いつものぶ厚い黒ぶちメガネは置いてきたようだ。髪型も違うから一瞬誰かわからなかったわ。
ルーカス・メイソン。
同級生には『毒きのこ』とバカにされている。基本的に本を読んでいる姿しか見たことがない同級生がほとんどだろう。陰湿な雰囲気と普段のきのこヘアーと髪色でついた『毒きのこ』は、ある意味、的を射たあだ名だ。
彼、とっても毒舌なのよ。
人間嫌いで、言い寄ってくる女子を毛虫の如く嫌ってる。まぁ、彼の生い立ちやこの容姿を見れば過去にいろいろあったのは想像に難しくない。
だって彼は──。
「誰だお前は!」
ダイナーが叫んだ。
「俺の婚約者に気安く触るな!」
ん?
「君は今さっき、婚約者をアシェリーからその花畑娘にすると宣言していただろう。アシェリーを婚約者と呼ぶのはおかしいな。あぁ、君の脳味噌は下半身にあるから仕方なかったな」
うわ~……。
相変わらずの毒舌。
「なんだと!」
案の定、ダイナーは顔を真っ赤にして怒鳴った。
「侮辱罪で訴えてやる!俺はクロッチ侯爵家の人間だぞ。お前なんぞ捻り潰してやる!」
「ご自由に。君こそ、僕が誰なのかわかってるのかな?どこの誰なのかわからなければ、訴えようがないけど、そこのところはどうなの?」
「ぐっ!」
ルーカスの指摘にダイナーは苦虫を噛むような顔をした。そして、すごい形相で私を見た。たぶん『こいつは誰だ!教えろ!』って顔だ。
言ってもいいけど……。
チラリとルーカスを見ると、ニッコリ微笑まれた。美男子の微笑みって、背中に薔薇を背負うって言うけど、本当なんだな~。と、明後日の方向に思考が飛んでしまった。
「あの~」
突然、ルーカスの左側から猫なで声がした。
いつの間にかカトリーナがルーカスの左腕に絡まっている。
「お名前を聞いても良いですか~?」
カトリーナはいつもの上目遣いで話し出した。
カトリーナはこの国で『美しい』と称される金髪青眼の色合いをもち、童顔で小柄、それなのに胸だけはある。男性の欲望を体現したような少女だ。
片や私はお母様に似た青い髪色に青い瞳だ。
涼やかな美女と言った感じね。
……自分で言ってて恥ずかしいわ。
とにかく、カトリーナは気に入った男の子によく胸を押し付けて、上目遣いで話しかけるのだ。大抵の男性は鼻の下を伸ばすのだけど……。ルーカスは──
「キモっ!」
鳥肌ものだったようだ。
素早くカトリーナを振り払い、私を抱き締めた。
「アシェリー!気持ち悪いよ。うわ~、感触残ってる。最悪だよ。この服捨てたい。ねぇ、本当にあれ妹?その辺の商売女より気持ち悪いんだけど」
本気で気持ち悪がってる……。
ルーカスの腕の隙間からカトリーナを見ると、ポカンとした顔から、みるみる真っ赤になってすごい形相になった。
「はぁ?!あんた、頭おかしいんじゃない!」
「おい!俺のカトリーナに何をするんだ!」
ダイナーがルーカスに殴りかかってきた。が、ルーカスは私の腰を抱いてヒラリとかわし、わざと足を残してダイナーに足をかけた。
ダイナーは足を取られて無様に顔面から倒れ込んだ。「ぐぶっ!」って変な呻き声が聞こえた。しかもお尻を上げたまま倒れてるからちょっと笑いそうになる。
「……」
あれ?動かなくなっちゃった。
え?あれで気絶したの?
う~ん……弱っ。
「ダイナー様~?!ひっ、ひどいわ!ダイナー様にフラれたからってこんなことして。お父様に言いつけてやるから!」
ルーカスに迫っていたことはなかったことにして、カトリーナはダイナーにかけよってこちらを非難した。
「なぁ、こいつら人間でいいんだよな?話が通じなさすぎて怖いんだけど」
「生物学的には人間で間違いないわよ。単に頭に花が咲いてる人種ってだけよ」
「それって脳に根が張ってるってことだろ?こいつは下半身に脳があるしモンスター同士お似合いじゃん」
「あ~……ある意味モンスターね」
「本当に失礼!家に帰ったら覚えておきなさいよ!お父様に言いつけて、鞭打ちと食事抜き、地下室に突っ込んでやるんだから!」
怒りに任せてカトリーナは言った。その内容に周りの生徒はドン引きしている。
「大丈夫よ。二度と伯爵家には帰らないから安心して」
「はぁ?!」
「だって伯爵家とは縁切りしたじゃない。家に帰る必要もないし、あの人が親として私を無理矢理連れ帰ることも出来ないわよ」
「はぁ?!じゃあ、あんたこれからどこに帰るのよ」
「そんなの、カトリーナには関係ないじゃない。私たち、もう他人なんだし」
「はぁ?!あんた、逃げられるとでも思ってんの?お父様が許さないんだからね!」
う~ん……。
話が通じない。
ルーカスも「面倒だから帰ろう」と飽き飽きした様子だ。
少しは卒業パーティーを楽しみたかったけど、他の人達の迷惑になるから、私たちは帰った方が良いだろう。
「お騒がせして申し訳ございませんでした。私たちはこれにて失礼致します。皆々様は引き続き卒業パーティーをお楽しみください。ご卒業おめでとうございます」
私とルーカスは美しい礼をして、会場を出た。
「お姉様!」
往生際悪く、カトリーナは一人追いかけてきた。だけど残念。私はすでにルーカスの馬車に乗っていた。
「待ちなさいよ!」
遠くから叫ぶカトリーナ。
待つことはしないが、一言言っておかなければいけないと思い、窓を開けた。
「カトリーナ!本当にありがとう!」
「はぁ?!」
「ダイナーって9股してて、そのうちの二人には子供が産まれてて、三人が妊娠中よ!侯爵家は伯爵家にダイナーと浮気相手と子供を押し付けたいから絶対婚約破棄しないと思うわ」
「はぁ?!何それ!聞いてないんだけど!」
「そりゃ~、今はじめて言ったからね!」
「やだやだ!そんな男いらない!お姉様に返すから、そっちをちょうだい!私の方がお似合いだから、もらってあげる!」
「キモ女はムリー!」
私の後ろからルーカスが笑いながら叫んだ。
「何でよーー!!」
あっ、地団駄踏んでる。
本当にやる人っているんだ……。
「忘れてるみたいだけど、さっきのパーティーでカトリーナとダイナーが婚前交渉したってみんな思ってるから、婚約破棄したら一生独身だと思うわよ」
「はぁ!!??何でそうなるのよ!そんなことしてないし!」
「みんなの前でダイナーに背中見せたって言ったじゃない。してないって言っても誰も信じないわよ~」
「もう!どうにかしなさいよ!あんた姉でしょ!妹が不幸になってもいいの?!」
「もう姉じゃないわよ~。あっ!最後に一つだけ!」
私は身を乗り出して叫んだ。
「部屋の鍵は必ず閉めて、信用できる人をドアの前に立たせなさいよ。じゃないとお父様に襲われるから!」
「えっ……」
「あの人、カトリーナのこと狙ってたのよ!もう私は助けてあげられないから、自分の身は自分で守るのよ~!」
「え?……」
「修道院に入れたら安心だけど、あの人が許さないだろうから、ダイナーと結婚してどうにか身を守りなさいね~!」
「え?……いやっ、いやぁぁぁぁぁぁ!!」
お母様とおば様の願いだったから家に居る間はカトリーナを助けようと思っていたんだけど、家から追い出されたらもうどうしようもないものね。
「頑張ってね!」
「待って、お姉様!見捨てないで!謝るから!ごめんなさい!ごめんなさい!お姉ちゃん!置いていかないでよ!待ってよーーーー!!」
カトリーナも見えなくなったし、私は窓を閉めて椅子に座り直した。
「良かったのか?」
ルーカスが神妙な顔をして聞いてきた。
彼には家の事情は一通り話していた。私が冷遇されても伯爵家に残り続けた理由を。
『カトリーナを父親の魔の手から守る』
それが……。
不意に仲の良かった子供の頃を思い出した。
お母様とおば様が生きていて、仲良く遊んでいた幼い日々のことを……。
『お姉ちゃん!』
幼いカトリーナが嬉しそうに私を呼ぶ声を思い出した。
今からは想像できないほど、仲が良かった。
「アシェリー?」
「……何でも欲しがる妹に奪われちゃったのよ。楽しい思い出も、姉としての気持ちも……ね」
私……疲れちゃったんだな。
ルーカスが頭を撫でてきた。
「よく頑張ったな」
「……うん」
無性に泣きたくなった。
◇◇◇
その後、カトリーナはダイナーと結婚したが、すぐに離婚し修道院に入ったと新聞に載っていた。
ダイナーは遊んできた女たちと修羅場をむかえ、そのうちの一人に刺され運悪く下半身付随になったらしい。その後がどうなったかは知らない。
お父様は最愛の娘が修道院に行ってしまってから精神を病んでしまい、領地経営ができなくなったため伯爵位は王家に返還された。
ラグランジェ伯爵領はバーナッシュ辺境伯に婿入りした第三王子ルーカス・メイソン・スプアリット殿下に与えられ、その子供が継ぐことが決まった。
そして私は──
「アシェリー」
メメの入れてくれたハーブティーを飲んでいると、執務室のドアが開いた。
「ルーカス。交渉はうまくいった?」
「あぁ。問題なかったよ。アシェリーが作った共同事業計画書のおかげで、隣国とは友好な関係を継続出来ることになったよ。さすが、辺境伯様」
「お祖父様にも助けてもらったからね」
お母様の実家、バーナッシュ辺境伯領で領主を務めている。
余談だが、メメは辺境伯家の隠密部隊の一人だ。お母様が亡くなったあとお父様とカトリーナの仕打ちが辛くて、辺境伯だったお祖父様に手紙を書くとメメを護衛として送ってくれたのだ。
今でも頼れる右腕として一緒にいてくれている。
お祖父様から辺境伯の地位を譲り受け、ルーカスと一緒に隣国と友好関係を継続するため、日々努力している最中だ。
頼りになる旦那様と現役騎士より貫禄のあるお祖父様に支えられ、楽しく過ごしている。
それに、私のお腹には新しい命が宿っている。
「体調は大丈夫か?」
「毎回聞くわね……。大丈夫よ、安定期に入ってるんだから。少しは動いた方がいいってお医者様にも言われてるでしょ?」
「まぁ……そう聞いてるんだが……」
心配そうな顔をされた。
妊娠は命がけだ。心配に思うのは仕方がないのだが、冷徹毒舌男がナヨナヨしていると少し面白い。本当、人生何があるかわからないわね。
「どうかしたか?」
「ううん、何でもない」
「あっ、そうだ。小包が届いてた。一応中身は確認させてもらったよ」
「えぇ、問題ないわ。何かあった?」
「いいや、何も」
開封された小包を受けとり、中を見ると新生児の肌着やベビードレスが入っていた。
差出人は教会にいるカトリーナからだ。
メッセージカードに『おめでとう』と書いてあった。
風の噂で、カトリーナは修道院に入ってから人が変わったように優しくなったそうだ。元来の明るい性格も良い方向にむかい、今では教会の経営する孤児院の院長として充実した日々を送っているらしい。
あれから……カトリーナとは一度も会ってはいないし、これからも会うことはないだろう。
彼女を見捨てた私のけじめだ。
カトリーナからも会いたいとは言ってこない。
おそらく彼女も、私への贖罪で会わないと決めているのかも知れない。
カトリーナから離れて、歳をとって……ようやくわかった気がした。
彼女が私の物を欲しがった理由。そして、私が伯爵家にいた理由が……。
寂しかったのだ。
お母様とおば様を亡くして、寂しくて、何かが足りなくて。
私は『カトリーナを守る』ことで自分を保っていた。自分の存在価値を感じていたんだ。
そしてカトリーナは『私の物を奪う』ことで何かを満たそうとしていた。
そう、私から奪うことで『自分は特別な人間だ。だから愛される人間だ』と思いたかったのだろう。だけど彼女が本当に欲しかったのは『亡くなった母親たちからの愛情』だ。
いくら私から奪っても『亡くなった人からの愛情』は得られない。
あぁ……。
私は『カトリーナを守る』ことで『お母様たちに愛される姉』として『愛情』が欲しかったんだ。
『こんなに守ってるのだから、私が満足するように愛してよ』と傲慢にも求めていたのね。
私たちはお互いに『満たされない愛情』を求めあっていた。
歪な関係……。
それに拍車をかけたのが、カトリーナを娘としてではなく、女として愛した父親の存在だったろう。
今となっては、言葉でどう表現して良いかわからないわ。
嫌ってるわけでも、憎んでるわけでもない。
会おうと思えば、会いに行ける。
関係をやり直そうと思えば、それなりに仲良くなれるだろう。
だけど、昔のことをなかったことには出来なくて、歪な関係になるだろう。
会わないのがお互いのためね。
カトリーナ。
私は今幸せよ。
だからあなたも、幸せでいて。
fin
お読みいただきありがとうございます!




