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回想3〜猫人との出会い〜

更に遡ること四年前。


彼はカースト上位の獣人であったが、両親が犯罪者であったため、奴隷として扱われていた。


ライドットには強い憎しみがあった。


奴隷として扱われる自分、奴隷を扱ってきた自分。そして自分を奴隷にした親への憎しみ。最もは奴隷である弱い自分への憎しみである。


奴隷であった日々は本当に地獄と呼ぶに相応しかった。人として扱われる事は無く、ありとあらゆる事をさせられる。失敗すればムチで叩かれ、果ては玩具の様に弄ばれる。


しかし、ライドットには心と身体に強い爪があった。

猫人としての矜持を持っていた。

いくらムチで叩かれようとその爪で多くの厄を払ってきた。


当時15歳のライドットは身体能力が高く、奴隷としては扱い難い性格であったが故、過酷な環境である凝塊地への派遣隊に任命され、派遣までの間、他の奴隷達と時間を共にしていた。


しかし、その中でも種族カーストの地位が違ったことで、他の奴隷達からも嫌煙されていた。


そんな最中、積極的にコミュニケーションを取ってきた女性が居た。


彼女はライドットと同じ年齢で有りながら4歳の息子がおり、そして更に妊婦の兎人であった。


「あなたは、どうして奴隷になったの?」


皆が遠ざかる中で奴隷の兎人はライドットに話しかける。


「うるせぇ、話しかけるな、汚い奴隷が!」


「あら??そうでしたね。ごめんなさい。貴方がとってもきれいな奴隷だったもので。」


長い期間、人と会話をしていなかったライドットは何故か奇妙な安心感を感じ、それを抑える様に粗暴に応える。


「あ?お前らと一緒にするなよ?俺は選ばれたんだよ。凝塊地にな!!」


「あら、とっても!奇偶ね!私達も凝塊地に行くのよ!よろしくね!」


「嘘だろ、だってお前、妊婦じゃねぇか!?」


「ウフフ、奴隷ってのはね、そういうもんなのよ。お坊ちゃん。」


凝塊地は汚染が強く多くの奇獣や恐ろしい機械が蔓延る場所だ。そんな所に奴隷、ましてや女性で妊婦なんて本来ではあり得ない人選である。


「なんで、そんなに明るくしてられるんだよ!?」


何故かライドットはかつて他人の為に犯罪を犯した自分の両親が脳裏に浮かんだ。


「あんた、これからどうなるか分かってても怖くねえのかよ。」


「そりゃ、怖いし心配だよー。この子達を残して逝く事はね。でも、私は良いの。この子達を愛して逝くの。私はずっと幸せ。でも、だからこそ、この不憫で可哀想な愛しい子供(てんし)達を未来に残す為にずっと全力で生きてやるんだ。」


そう言って彼女は愛おしそうに左手に抱いた小さな息子の額に大きく口づけした。


その彼女の強い意志と子供達に対する愛情を目の当たりにして、ライドットはヨロヨロと怯んで部屋の角に膝を抱えて小さくなった。


「凝塊地なんだぞ、生きて帰れる訳がねえ。」


見かねた少女は、ヤレヤレという表情で、小さな子供を脇に抱えながら少年の頭をぐしぐしと撫でた。


この時に少年の心は優しさの前で種族を意識する事をやめた。










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