回想2〜猫人との出会い〜
数百の奴隷を降ろすには当然時間が掛かる。
この時代であれば紛れて侵入する事は事前に準備していればいとも簡単である。
平然と前もって奪っていた制服を身に纏いライドットは奴隷船に侵入する。
「クククッ。毎度、毎度。アホ丸出しで。いいや。」
キャラバンの奴隷船は奴隷の運搬だけではなく、列島からの成果物の回収と共に貴重な物品を上げ下ろししている。
奴隷船に意気揚々と侵入したライドットであったが、自身が奴隷であった過去に内心では深く恨みを心の底に抱いていた。
「さぁて、今回のお宝は何かなぁ?」
ライドットが狙うのはとんでもないお宝ではない。奪われても気づかれない丁度いい貴重な食料や、半端な金品である。
こういった物品は大抵管理が杜撰で奪いやすい。
だが、何故か今回は警備が厚い。いつものジャンク保管庫や奴隷管理区ですら警備員が配置されていた。
「おいおい、どうした?要人でも乗ってんのか?こりゃ、ハズレ船乗っちまったか…。」
ライドットが今回の船を諦めて別の船に移ると決心したその時、部屋の扉の守衛交代の会話が耳に入る。
「おっ、交代の時間か、なぁ、この部屋にいる子供って凝塊地から帰ってきた僻人らしいな。マジでやべぇよな?でもなんでこんなショボい船に連れて来たんだろ?僻人っていえば本国の英雄になるんじゃないの?」
「そんなん知るかよ、でも、僻人だとしても酷えよな。あんな小さな子供に探索させるなんてよ。俺も子供居るからちょっとな…」
二人のコソコソ話をライドットは耳をそばだてて盗み聞きした。
「凝塊地から帰った…だと?」
ライドットの肌が一気に逆立った。
ライドットは奴隷であった時に派遣隊の一部隊として凝塊地に派遣されていた。
「何でも、凝塊地に辿り着いた精鋭のキャラバン隊の奴等は全滅したって狼煙があがったのに、その後に子供二人だけで帰って来たんだろ?」
「ああ、しかも3歳と8歳の兎人の子供らしいぞ?よくビーストに食われなかったよな?」
二人の会話を聞いてライドットは鼓動を沈めるのに必死であった。
「兎人の子?全滅…だと?…だが、他のキャラバン隊は凝塊地に辿り着くことすら出来なかった…。子供が戻って来たと言うことは、お前もちゃんと逃げ出したんだよな?」
ライドットはそう呟くと、グッと両の手を力強く握りしめた。
「コレは絶対に確かめなきゃだな。くくくッ、バカな衛兵達で助かるわ。こっからは子供達の救出に作戦変更だ。」
そして、この潜入作戦でライドットはラファエルとミカエルに出会う事となる。
しかし、その出会いは彼等にとって幸運なのか不幸なのか、後に語られる。