奇獣 ビースト
3人?は背を合わせ周囲の異音に警戒した。
「兄さん。もしかしてこの音って…。」ミカエルが不安を隠しきれずに震えた声で呟く。
「クソっ!完全に集中力きれてた!こんなハズじゃ無かったのに!ビーストに囲まれた!」
周囲には目、腕、足がそれぞ3つ、または4つになった狼のような獣。同じ種と思われるが姿がそれぞれ違っていた。
ラファエルは額に冷汗を流した。
「なに?あれ?オオカミ?じゃない?もしかして…?」
玉も本来流れるハズのない冷たい何かを感じ無い背筋を凍らせる。
「なんでリムーバー起動してるのか分からんけど、ちゃんと仕事しなさい!所長命令です!この不気味な生命体を排除せよ。」金属の玉はひどく驚いていたが周囲の状況を確認して巨大な機械に対して命令を下した。
「しし、承知。侵入者の排除を再開します。」
リムーバーと呼ばれた巨体が立ち上がると周囲を取り囲んだビースト達に赤い光線を薙ぐように放ち、たちどころに一掃した。
「周囲の脅威を、排除確認。次の命令まで待機します。」巨大な機械は仕事を終えたのちに玉に振り返ると、再び待てのポーズに戻る。
ラファエルとミカエルは一瞬の出来事に呆然としていたが、ビーストと呼ばれる獣達の焼ける臭いが二人の正気を取り戻させた。
「うっ、くそ、なんなんだよ。」ラファエルとミカエルは鼻をおさえながら共に玉と巨大な機械に気づかれないように怯えながら距離を離していた。
「ふぅ、これ、どういう状況?ねぇウサギちゃん達は何者なの?ってあれ?」玉が振り返るとそこに二人の姿は無かった。
二人はフワフワと浮遊している奇妙な玉から逃げるように大きく距離を離していた。「ミカ、早くここを離れよう!とりあえずキャンプに戻ってライドット叔父さんと合流しよう。」
ラファエルはミカエルの手をとりながら全速力で走りだす。
「兄さん!ちょっと待って!あの玉、見覚えがあるんだ。それにあの歌。なんだか懐かしくて…。」ミカエルは少し戸惑いながら兄の引っ張る手に抵抗するように力を加えた。
「何言ってるんだよ!?もたもたしてたら次のビーストが来ちゃうぞ!」
ラファエルは焦燥し、怒鳴ったがすぐに沈黙する羽目になった。
彼の心配が現実のものになったからだ。
先程の騒ぎで数え切れない程の多数のビーストが砂埃を上げながら集まって来ていた。
「ヤバいぞ…、コレは。」
この時、ラファエルはミカエルの手を強く握り締めて身を硬くするしか出来なかったーー。