【時雨虹 煌醒の日常。】
雨は上がり、虹が煌めく、とても鮮やかで彩り豊かな空間の中。
時雨虹 煌醒は、更に色彩を広げて、煌めき一杯の舞台を創り出す。
「おはようございまーす! 今日もお化けは度胸と本性で、自分らしく生きていきましょうねー! 」
透き通った高らかな明るい声と優しく温かい笑顔で周囲にいるお化け達を魅了し、注目を集め。
「キャー! 煌醒様、今日も素晴らしいですわ! 」
「うおおおお! 煌様様、最高! 世界一のお化け様ァ! 」
「ひやああああ! 仕草も綺麗!魔法の出し方も優雅でユニーク! 」
「あ! こっち見てくれた! 今日は最高の日だ! 何が起きても悔いはない! 」
徐々に歓声が上がっていくほど、見てくれたお化け達の心を魔法によるパフォーマンスで躍らせる。
――時雨虹 煌醒。
透き通った高らかな明るい声質に。綺麗で美しくも柔らかい白い体色と微笑んだようなニコッとした細い形の虹色の瞳。身体の下先はハート型になっており、服装は腰辺りのピンク系のグラデーションをした縦に伸びるリボンを二つ装飾された薄ピンクの下先まで包み込む長袖ワンピースを身に付け、目の色と同じ虹色の襟巻とマントを着こなしている。性格は明朗快活でテンションと自尊心が高く、誰に対しても友好的で優しい努力家と、この世界では貴重な善に属するお化けであり。全ての能力・物事に関しても出来ないことは無いほど天才で、性格の方でも表記した通り努力家であるため。自分の才能だけを頼りにはせず、未来の自分の為に、皆を楽しませるためにどんな時でも努力は欠かさい。また時雨虹 煌醒は双子なのだが、双子の弟はこの世界の王として君臨しており、心の底からの想いで弟が王であることを誇りに思い、尊敬しているなど。まさに完璧とも表せるお化けであり、主に性格面から一部のお化けを除いて老若男女問わず、好かれ信頼されている。
だから、時雨虹 煌醒を見てくれるお化け達が多く。
時雨虹 煌醒自身も、今日も自分を見てくれたお化け達を楽しませようと全力で最高なパフォーマンスをしていくのだ。
「ふふふっ。皆様、ありがとうございます! それじゃあ、優しくて素敵な皆様にはお礼をしなくては、ね! 」
二時間にも及ぶ、パフォーマンスが終われば、すぐさま見てくれた一人一人に丁寧に 愛を込めたファンサービスをしていき。心から幸せにさせるほど更に魅了し、別れる際も姿が見えなくなる最後の時まで楽しませて、創り出した舞台を閉幕させる――。
――閉幕後、帰路を穏やかに進みながら、次の舞台はどのような色で盛り上げようかと考える。
今日は魔法を使ったパフォーマンスを披露したため、次は魔法を使わないパフォーマンスにするべきか。 それとも、見てくれた、見てくれるお化け達のリクエストに応えたパフォーマンスをした方がいいのか。 次、皆が楽しめる色は何色が適しているのか、と顎に手を添えるようにあれやこれやと考えるが、今日は調子が悪いのか。上手く定まらず、これといってしっくりくるものがない。
しっくりこない時は、どんなに考えたって意味は無い。
それならば、アイデアを広げるために。何かいつもとは違うことするのが一番だと判断し。 いつもなら自分がやらないようなことをしようと、カラフル怪奇界という不気味な雰囲気が漂う場所へ向かうため、帰路から外れ――た、時だった。
「時雨虹 煌醒。今日こそ、お前を転落させてやる――! 」
背後から声をかけられて、振り返ってみれば。
こちらを鋭く冷たい視線で睨む、お化けの姿があり、確か名前は――、
「確か、君は…透喰 氷霞さんですね! 」
「ハッ。お前に名前を覚えてもらえているとは光栄だよ」
透喰 氷霞。そう、透喰 氷霞という名前の、涼しげな色が似合うお化けが少し離れた位置から自分を見つめて立ち尽くしていた。
まさか、此処で透喰 氷霞に会えるとは。
とても嬉しい事だ、と。時雨虹 煌醒はリズムを刻むように喜びを満面に出しながら、自ら透喰 氷霞と距離を縮めて。
「わー!氷霞さんと出会えるなんて! ワタクシ、すっごくラッキーです!
こんなにもいい日は久しぶりです! 是非、転落とやらに参加させてくださーい! 」
目の前まで行くと。意味が分かっているのか、いないのか。両手を合わせて、透喰 氷霞が仕掛けてきた転落及び勝負を是非とも参加させてほしいと承諾の言葉を伝える。
そんな時雨虹 煌醒の反応、いや動きに何処か嫌気が差した表情を浮かべながらも。 自ら、距離を縮め来て。勝負を引き受けたため、早速と言わんばかりに時雨虹 煌醒の頭部に向かって大量の氷の粒を落としていく、が。
「は? 」
「魔法対決ですね! いつもは、やらないことなので。新鮮味があっていいですねぇ! これは、新しいアイディアが広がりそうです! 」
当たる直前に氷の粒は円を描くように綺麗さっぱりと消え、いつの間にか時雨虹 煌醒は後ろに下がって、魔法を広範囲に出しやすい一定の距離をとっていた。そして、腕を上に伸ばし、手のひらを上にして掲げると。虹色に輝く光の粒を生み出し、軽く優しく手を前へと振る。
光の粒は交差するように回転しながら透喰 氷霞へと向かって進んで行き、透喰 氷霞との距離を中間辺りまで縮めていくと光の粒は光線に変わり、更に回転する速度と進む速度を早め。一歩手前まで、到着すると。小さい破裂音を立てて、花火のような模様を描き魅せ、魅せ終われば数秒もしないうちに儚く消えていく。
まるで、演劇をするような魔法に。
透喰 氷霞は表情を更に険しくして、「何だこれ? ふざけているのか? 」と不満を口にする。 不満を口にされ、一瞬、驚いた表情を見せるが。がっかりすることなく、すぐさま違う魔法を創り出そうと。 今度は手を左右に振って、寒色系の色をした光の粒を生み出し――。
「おい、ちょっと待て。お前、俺様が言った転落の意味を分かっているのか? 」
生み出し、放つ寸前に透喰 氷霞から疑いの目と共に疑問が投げかけられる。
転落――、勝負の意味をちゃんと理解しているのかと。
理解しているか。確かに時雨虹 煌醒の行動は、魔法を放つ動きは。透喰 氷霞が仕掛けた攻撃のある勝負ではない。 演劇やパフォーマンスに使うような害の無い魔法であり、勝負の意味をちゃんと理解しているとは思えない。 だが、時雨虹 煌醒は意味をちゃんと理解していた。理解をしているからこそ、害の無い魔法を放つのだ。
「分かっていますよ。氷霞さんがワタクシに攻撃をして転落させたいってことは。
そう、分かっているからこそ。ワタクシは氷霞さんとは戦いたくないため、魔法攻撃はせず、パフォーマンスで使用する魔法を放つのです」
「なんだそれ…、つまり、俺様のことを見下して、煽って、侮辱しているわけか!? 」
「いえ、それは一切ありませんよ。
氷霞さん。貴方は…、ワタクシの弟によく似ているのです。だから、氷霞さんとお友達になりたいのです! お友達になりたい相手に、ワタクシは攻撃などできません。ふふっ」
弟に似ていて、波長が合いそうだから友達になりたい。ただそれだけの理由で理解しているからこそ、害の無い魔法を放つ。攻撃することは決してしない。
しかし、そんな理由が透喰 氷霞に伝わることも。通じることもなく――。
「は、はぁ? 俺様と…、ふざけんな!気持ち悪りぃ!
友達になるのは、俺様を助けてくれたお化けだけでいい! お前なんか、絶対に要らねぇ! もういい! 勝負はお預けだ! 次こそは、そんな偽善に満ちた言葉を出せないようにお前を転落させてやるッ! 」
嫌悪感を剥き出しの言葉を吐き出され、気持ち悪がるように何処かへと煙と共に消え去ってしまった。
「あらぁ、振られちゃいましたねぇ。…でも、いいアイディアが広げられました!
久々に氷水や雪をテーマにした涼しげなパフォーマンスをしようと思います! ありがとうございました! 氷霞さん! 」
これには、振られてしまったと少し残念がるものの。
お陰で、カラフル怪奇界に行かなくとも。いいアイデアを見つけ広げられたと、もうこの場にはいない透喰 氷霞に向かって感謝の言葉を述べ。帰路を楽しそうにスキップしながら、自宅へと帰り、次のパフォーマンスに向けて準備や練習を始めたのだった。
―――
午前七時。
起床し、時雨虹 煌醒の一日が始まる。
カーテンを開け、太陽の光を浴び。洗面所にて洗顔料を使って顔を洗い、顔を洗った後は歯磨きをして。 歯磨きも終わった後は、衣服に着替え、お化粧をするなど朝の身支度を済ましていく。
午前八時半。
朝食をとる。
今日の朝食は、ピザ風に具材を乗せた耳の無い食パンをこんがりと焼き上げたモノに。様々な野菜を彩り豊かに取り入れたサラダ。酸味がしっかりと効いたレモンジュースを飲み食べる。
朝食を食べ飲み終われば、丁寧に優しく歯を磨いて。
リップなど、少しお化粧直しをしたら、お出かけ用の身支度をして、今日のパフォーマンスをしにカラフル不思議街へ向かう。
午前十時半。
カラフル不思議街に到着し、中心部にある噴水広場にて、早速パフォーマンスを始める。 見てくれた、来てくれた、お化け達皆を楽しませるため。今日も全力で最高の色に煌めかせ。 ファンサービスも欠かさず、一人一人、丁寧に優しく愛をこめて振る舞っていき。閉幕する際の別れも楽しませていく。
午後十二時半過ぎ。
一度、自宅へと戻って。昼食をとる。
今日の昼食は苺が使われた甘口のピンクカレーライスに。桃の炭酸飲料を飲み。デザートには、中身までカラフルな色をしたチョコレートケーキを食べる。
食べ飲んだ後は丁寧に優しく歯を磨いて、また少しお化粧直しをして、ソファーに座って少しの間、ゆっくりと休憩する。
午後二時五十分。
休憩もそろそろやめて、前半は次のパフォーマンスの準備や練習をし。後半は趣味の一つである創作活動を始める。 後半である、今日の創作活動は主に絵を描き進めていき。描き終えたら、変なところや描き間違い、見落としが無いが慎重にチェック。また少し時間をおいて、再度チェックして。何も無ければ。予約投稿にて、創作投稿サイトに投稿し。次の創作作業へと移し、作業を終えれば、またチェックして、予約投稿するなどを繰り返していく。
午後八時半。
次のパフォーマンスの準備や練習、創作活動もある程度まで進み、今日の所はこの辺で終わらせて、夕食をとっていく。 今日の夕食は左半分が桃色。右半分が赤い色をした甘く濃厚なクリームシチューに。白くてふわふわの縦幅に厚みのあるパンケーキ。赤橙・黄・黄緑・水・青・紫・桃の七色のシロップが使われ、虹のように綺麗にグラデーションした炭酸飲料を食べ飲む。
食べ飲み終われば、朝・昼と同じく丁寧に優しく歯磨きをして、クレンジングなどで優しくもしっかりとお化粧を落としていき。そのまま、その流れでお風呂に入った後は化粧水やパックなどのスキンケアを欠かさずやり、寝るための準備や身支度をしていく。
午後十時二十五分。
夏は涼しく、冬は暖かくなる機能が付き、ふわふわとした柔らかい生地の掛け布団を人間で言う肩の下辺りまでにかけて。横向きの体勢で就寝する。
全くもって夢を見ずに、ぐっすりしっかりと睡眠を取って、朝を迎え。
カーテンを開けて、太陽の光を浴びていく。
これが、時雨虹 煌醒の日常であり。基本的な一日の過ごし方だ。
好物という理由もあり、食事の際にはカラフルな飲食物を入れる事が多く。
またパフォーマンスといった皆を楽しませる事や創作活動といった自分を楽しませる事を欠かさずやっている。 こういった彩り豊かな物事が好きで、誰かを楽しませるために動くのには。いくつか、理由があり。一つは、弟の為。二つは、今は亡き憧れのクリエイターの為。三つは、楽しませることが好きなため。などが理由としてあるから動いている他。自分も楽しむことを忘れずに、お化けは度胸と本性の精神と独自の色辞典による思考から動いている事も勿論ある。だからこそ、時雨虹 煌醒は誰かを楽しませる。楽しませられる。何においても完璧で天才なお化けとして維持できるのだ。
「お化けは度胸と本性! ワタクシの色辞典に断じて、転落も、不可能も、色が消えることもありませーん! だから、ご安心を。何も気にせず、沢山、自由に笑ってくださいね! 」
明朗快活にテンション高く動き、優しく微笑んで、温かく手を差し出して、彩り豊かな舞台へと連れて行く。 どんなに色褪せた世界も元通りにしてしまうほど、魅力と煌めきのあるお化け。それが、時雨虹 煌醒。
この先の未来も時雨虹 煌醒は自分の色で舞台を創り上げて魅せ、煌めいてくれるだろう。 楽しませる事が好きであるのならば。彩り豊かな物事が好きであるのならば。 時雨虹 煌醒は最後の時まで。どんな選択だろうと明るくできる。結果を幸福へと変えられる。未来を煌めかせてくれる。
そう、永遠と輝き。そう、永久に煌めいて。
時雨虹 煌醒の日常が今日も始まっていく。弟の心境も柔らかく変える程に。和解できる程まで明るく、温かく。