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カラフルお化け  作者: 無月無明
第一章 カラフルお化けの日常
2/8

【泡沫夢 迷炉の日常。】

空は薄青に染まり、空気の流れは緩やかで、今日も一日、爽快で穏やかに過ごせそうな時間に。 泡沫夢 迷炉(うたかたむ めいろ)は公園のベンチの上に座って、棒状の葡萄アイスを口の中に頬張る。


公園のベンチの上に座って、誰にも邪魔されずに一人でアイスをのんびりと食べるのは実に心地よい。 別に。決して、一人でいるのが好きというわけではない。皆で時に緩くのんびりと、時に賑やかに楽しく過ごす方が好きだ。 たまに、一人で緩く過ごして楽しみたい時があるだけ。今日は、たまたまその気分だっただけで。深い意味も、ネガティブな意味も無いのだ。


アイスを食べ終われば、公園の隅にあるゴミ箱の中に棒を捨て入れ。少し背伸びをしたら、数分ほどかけて街へと進んで行く。


街に到着すれば、特に何をするわけでもなく。散歩するように、ただ景色や風景を眺めながら街の中をゆっくりと進む。 ゆっくりと進みながら、景色や風景を眺めて見れば。この街は色合いが鮮やかで広く充実した場所なのだと感じる。 沢山の出店や専門店等が外観の色に沿って、左右横一列に綺麗に並んでいて、まるでグラデーションのよう。 何かあった時、必要なモノがすぐに揃う便利さだけではなく。視界に入る色さえも揃っているのは、なかなかに素晴らしい。思わず、心が躍ってしまいそうだ。


景色や風景を隅々まで眺めたら、今度は街中に流れる音を聞いてみる。

お化け達が会話等の喋る声。それぞれの店から流れ出る独自の音楽。その他、風などの自然の音が入り混じって。 何処か混沌としながらも賑やかな雰囲気を醸し出す。 これは、街そのものというよりは。この世界、カラフルモンスターワールドらしいと思える。


この世界、カラフルモンスターワールドは。カラフルなお化け達が生きる時空でもあり、思考や原動力の一つとして、それぞれ独自の色辞典を持っている。


色辞典。またの名をcolorful history。

自分らしく、自分らしい色で、お化けは恐れずポジティブな度胸と明るく自分らしい本性の精神で生きること。 それが色辞典である。


その色辞典がこの街中の音に反映されていると表せる。この世界らしさを魅せている。 それぞれ皆、様々な色を持っているからこそ。何処か混沌としながらも賑やかな雰囲気を醸し出して、彩っているのだと。泡沫夢 迷炉は思う。



あれから、数時間ほどかけて来た道を戻り、街の出入り口から外へと出れば。

何の前触れもなく、突然。友人兼仲間である天朝 天華に出会う。


「あ、天華」


「あれー、迷炉じゃん! こんなところで何しているの? 」


「ちょっと、散歩的な事をね」


「ふーん。そうなんだぁ。あっ!そうだ! お前に話として教えたいことがあるんだ! 今から、野原へ行こうぜ! 」


「え、今から? うーん…、まぁ、いいよ。面白そうだし。散歩的な事も、そろそろ、終えようと思っていたところだから」


「じゃあ、さっさと行こうぜ! 百年過ぎる前に! 」


「もう、大袈裟だなぁ。天華は」


出会ってまもなく、やや強引に天朝 天華に先へと引っ張られる形で野原へ行くことを決められ、驚くが。 丁度、街中を進んで行くのも終わりにしようと思っていたところであったため。まぁ、いいかと受け入れ。 野原へと素早く向かっていく天朝 天華の後を追いかけて。泡沫夢 迷炉も少し速めに進んで行く。



―― 泡沫夢 迷炉(うたかたむ めいろ)

のんびりとした、ほんの少しだけ低い少年のような声質に。薄水色をした体色と少し目尻が垂れ下がった半月型の体色よりは濃い、淡い水色の瞳。袖の中に隠れた平らで少し四角い手。一部、切れ込みが入り、左側には緑色が混じった水色の三角形が四つと独特な形をした付け襟のような丈の短いマフラーを巻き。細身に作られてはいるが、着心地は柔らかくゆったりとしており、手も包み込んでしまうほどに袖丈も長く裾先も長い、目の色と同じ淡い水色のワンピース型の服装。動くと左斜めに広がる、片方の肩だけに付けるタイプのマントをかけている。性格は穏やかでのんびりとしており、緩い感じを好んでいるが。友人や仲間を侮辱される事や傷つけられる事を何よりも嫌っており、目上だろうと立場関係なく、良く言えば立ち向かう度胸を持ち、悪く言えば、無謀な恐れ知らずのお化けである。



―――



午前六時半。

起床し、泡沫夢 迷炉の一日が始まる。

朝の身支度を済ませ。携帯電話の中にあるアプリを使って、今日の天気予報を確認し。 確認が終われば、今日の天気予報に合わせた お出かけ用の服装や支度を今のうちに用意し。万全の状態を作る。



午前七時。

余裕を持って、朝食をゆっくりと食べ飲む。

今日の朝食は、野菜とパセリが沢山入った、温かいクリームシチューに。

丸く大きく、ふわふわした感触のあるチョコミルクパン。ちょっと、ぬるま湯の炭酸水。デザートに葡萄と柘榴を丸かじりして食べて、胃の中へと落とす。食べ飲み終われば、歯磨きを五分ほどかけて、隅々までしっかりと磨き。事前に用意した、お出かけ用の服装をスムーズに着替え、支度を何事もなく緩やかに済ませる。



午前九時。

まだ時間に余裕が少しあるため、自宅の周囲を散歩して。丁度いい頃合いになれば、目的の場所へと緩やかに進んで行く。



午前十時半。

目的の場所である、カラフル不思議野原へと三十分ほど早く到着するが。友人兼仲間の一人は、もっと早い時間に着いていたようで。草むらに寝転び、温かい太陽の光を浴びながら、日向ぼっこしていた。 そんな友人兼仲間の一人の姿を見て、小さく笑った後。「おはよう」と声をかけつつ、隣に並ぶようにして、同じく草むらに寝転んで日向ぼっこする。 その十五分後、もう一人の友人兼仲間がやってきて。続くように泡沫夢 迷炉の隣へと並んで寝転び、日向ぼっこしていく。



午前十一時。

時間ぴったりにやってきた、更にもう一人の友人兼仲間である天朝 天華に声をかけられ。 早速、全員揃ったところで。やや強引に追いかけっこをして、追いかける側である天朝 天華から、少しからかい混じりに逃げていく。



午後十二時半。

昼食をとるため、カラフル不思議街に足は無いが足を運び。

昼食の買い物を済ませると、街の中心部にある噴水広場のベンチの上に腰をかけながら座って。買った昼食を食べ飲む。 今日の昼食は。生姜とネギがふんだんに乗せられた素麺。小さく一口サイズにカットされたフルーツが下の方に詰まった、サラダ。ひんやりと冷えた爽快感抜群の炭酸水。デザートに葡萄味の丸いアイスクリームと、全体的に涼めそうな飲食物を少しずつゆっくりと食べ飲み。完食すれば、分別しながらゴミ箱に捨て入れ、野原へと戻る。



午後二時。

今度は、かくれんぼをすることになり。追いかけて探す側を担当することになる。

最初はダミーに騙されて逃げられるなど、上手く動くことが出来なかったが。

ドジを踏んだ天朝 天華の隙を突いたこともあって、見抜けるようになってくれば。意外と捕まえるのは早いもので。 見分けられるようになってからは、数分も経たずに全員を捕まえることが出来た。これには、意図せず自然とガッツポーズを決める。



午後四時。

空はすっかり夕暮れ色に染まって、家に帰るようにと合図である音楽と放送が流れ。 それを聞き、そろそろ帰ろうかと判断し。「また明日」と別れの挨拶をして、皆それぞれ自宅へと帰っていく。



午後四時半過ぎ。

自宅に到着後、玄関のドアをゆっくりと引いて中に入り。鍵や戸締りをしっかりと閉め、手を石鹸で洗い、着替えなどの身支度が終われば。冷蔵庫の中に閉まっておいた白いチョコレート菓子を、ソファーにゆったりと腰をかけながら座って食べる。そのチョコレート菓子も食べ終われば、目の前の小さなテーブルの上に置いてあったリモコンを手に取り、ボタンを押して電源のスイッチを入れ、モニターの画面を付けて撮り溜めていたアニメをじっくりゆっくりと観賞する。



午後七時。

撮り溜めていたアニメも一通り、見終わり。夕食の準備をして、出来上がれば、朝昼と同じく自分のペースでゆっくりと食べ飲む。 今日の夕食は、豆腐の入ったハンバーグ。玄米を混ぜ入れた白米。炭酸が少し弱めな炭酸水。デザートにブルーハワイ味のかき氷を食べ飲んでいき、完食すれば、すぐさま歯磨きをして、その流れでお風呂に入り、パジャマに着替えるなどの身支度を済ませて、柔らかく軽い毛布をかけ、睡眠に入る準備をする。



午後九時。

一つ、あくびをしたら。数分ほどかけて、就寝する。

合間に、意味不明な夢を見ながら、朝を迎え。リズムよく鳴るアラームをしっかりと止めて朝の身支度を始める。



これが、泡沫夢 迷炉の日常であり、緩く基本的な一日に過ごし方だ。



葡萄、柘榴、炭酸水は必ず食事のメニューに一品は入れているほど好物で、それを一度も忘れたことはない。 緩い感じを好んでいることから、一日を緩くのんびりと、気楽にまったりと過ごすことを大切にしているが。 何か、面白い事があれば。積極的に参加するなど、お化けらしい面もあり、特に友人兼仲間達と遊んだり、何かをするのはとても面白く楽しいようだ。そうして、泡沫夢 迷炉はこの世界を緩い感情で楽しみ、のんびりと自分のペースで生きている。自分の為にも。相手の為にも。出来るだけ、適度に、お互いが不快にならないために。今日もまた穏やかに友人兼仲間達と時間を歩んでいく。


「さて、今日も緩くのんびりと過ごそうか。

適度に互いを尊重しつつ、自分らしく、自分のペースで生きていくのが大事だからね」


優しく微笑み、前へと、先へと、真ん中へと、緩やかにのんびりと進み、目を向けて。 少しの間だけ、何も考えずに。時間の読めない道を穏やかな心で受け入れ、後を付いていく。それが、泡沫夢 迷炉。


この先に何があるのか。迷いや恐れを知らない泡沫夢 迷炉には分からないだろう。 だけど、結果的に自分も、皆も、緩く自分のペースで楽しめていれば。それでいいのだ。 余裕の無いまま、切羽詰まって、自分の事だけしか見えていなければ。自分の色の道を探せないから。


そう、思い。そう、思って。

泡沫夢 迷炉の日常が今日も始まっていく。道を緩やかに、穏やかに、温かくするように。

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