第七話 出会い
馬車の周りにいた騎士や父上含め侯爵家の人間までその少女を見ると全員が跪いて臣下の礼をする。
僕も周りにならって同じように跪く。
「皆さん、顔を上げてください。楽にしていいですよ。」
「お久しぶりです。シャーロット様。」
「スタンフォード侯爵様お久しぶりです。」
父上と挨拶を交わす少女を僕は見たことがない。だが、父上があんなにもかしこまっているし、「様」をつけて呼ぶのはある一族しかいない。
この国のトップの一族。王家である。
「スタンフォード侯爵様。助かりました。あなたのご子息がいなかったら私たちはもうこの世にはいなかったでしょう。」
「いえ、こちらこそ我が息子が役に立って何よりです。」
「父上、このお方は誰でしょうか。」
「レイは初めてか。このお方はエインワース王国第一王女シャーロット・エインワース様だ。」
第一王女!?確か今の陛下には子供が娘一人しかいなかったような、、、。
ってことは陛下の一人娘じゃないか!!
「なぜこのようなところに王女様が?」
「はい、わたくしはオルグレン公爵領に行っておりました。幼い頃より仲が良いシェリルに会うために」
「シェリル嬢にですか。そして、王都に帰る途中に魔物に襲われたのですね。」
「はい。そうです。」
オルグレン公爵家はエインワース王国の四大公爵家の一つである。
確かに公爵家と王家ならつながりがあるかな。
「あの、、、。侯爵様。私たちを一緒に王都まで送ってくれませんか?護衛がもう三人しかおりませんし、馬車もこの通り壊れてしまいました。」
一見、馬車はどうにもなってないように思えたが車輪が壊れている。
この状況で王都までは行けないだろう。
「分かりました。このような状況ですし、仕方がないでしょう。」
「ありがとうございます。」
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どうしてこうなった。
シャーロット様と馬車に乗ったはいいがなぜ僕の隣に?
「レイ様、すごくかっこよかったです。私のピンチに駆け付けてくれるなんてお伽話のようです。」
シャーロット様が頬を紅潮させながらこちらに話しかけてきた。
「ありがとうございます。シャーロット様がご無事で何よりです。」
「はい。このことはお父様にもしっかりとお話させていただきます。」
お父様って陛下のことだよな。なんか嫌な予感がするんだけど。
少し経って最初に予定していた街までたどり着いた。
ここはスタンフォード侯爵家の寄り子である。子爵家の領地である。
屋敷の前に馬車が止まると子爵家当主と思われる中年の小太りの男性が近づいてきた。
執事、メイド、僕、父上の順番で馬車から降りる。
父上が降りた瞬間に子爵家当主が頭を下げて挨拶をした。
「お待ちしておりました。スタンフォード様。」
「あぁ、お出迎えご苦労。しかし、今回の主賓は私ではない。」
「はて?どうゆうことでしょうか?」
ちょっと困り顔になっている子爵はすぐに答えが分かる。
馬車から父上にエスコートされながらシャーロット様が出てくる。
それを見た瞬間子爵は顔を青くしてすぐに頭を下げた。
「シャーロット様、失礼いたしました。」
「いえ、気にしないでください。急に私が馬車に当初予定になかった訪問ですからご迷惑おかけします。」
「いやいや、そんな頭を下げないでださい。」
「申し訳ありませんがわたくしも少しお世話になってもよろしいでしょうか?」
「もちろんでございます。こんな狭く汚い場所ですがどうぞおくつろぎください。」
「ありがとうございます。」
こうして僕たちは子爵の屋敷で一泊することが決まった。
「レイ様。夕食の後、わたくしの部屋まで来てください。」
そうシャーロット様から耳元でつぶやかれて少しドキッとした。
「わ、分かりました。必ず向かいます。」
「ふふ、ありがとうございます。」
そういって上機嫌になったシャーロット様は屋敷へと入っていった。
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