第六話 開発
父上との話が終わった僕は自分の部屋へと戻った。
「明後日から王都に向けて出立か。この世界の馬車はサスペンションなどがついていないからすごく乗り心地が悪いんだよね。」
まず、馬車を開発してみよう。
「うーん。魔物の森の素材を使おうかな。」
魔物の森では大量の魔物の素材がアイテムボックスに入っている。
「まずは、このエルダートレントで大体の馬車の形を作ろう。」
僕はアイテムボックスからエルダートレントを取り出すと魔力を込める。すると木の形でしかなかったエルダートレントがみるみる馬車の形になっていく。
「よし、馬車はこれで完成かな。」
次にサスペンションだ。これは魔物の森で手に入れた鉄を使ってバネのようにしてある程度の弾力をもたせる。
次に座席造りだ。座席には牛のような魔物の皮をなめして作り上げた最高級のレザーシートを作った。ギラギラしたものでなくマットな仕上がりにしたことでより高級感がまし僕好みになった。
「馬車に関してはこんなもんかな。あとは、困ったときにまた作ろう。」
馬車造りに夢中になりすぎて、日が落ちていることに気づかなかった。僕は屋敷に転移を使って戻っきた。
「父上、王都に行くときに馬車の旅がつらいと言ってましたよね。」
「あぁ、王都や街がおるところは整備されているがそれまでの道は整備が行き届いていないから馬車が揺れて大変だな。さらに車輪が壊れたり、最悪馬車が壊れることもある。」
「そのことを考えて馬車を作りました。」
「え?」
「アイテムボックスから出すんで外まで来てください。」
そう言うと僕と父上は庭にやってきた。
僕はアイテムボックスから馬車を取り出す。
「これが僕が作った馬車です。」
「おい、まさかこの馬車を一人で作ったのか?」
「はい。魔法で作りました。素材はエルダートレントでできています。」
「エルダートレントだと!?トレントではないのか?」
「鑑定で調べたので間違いありません。」
僕は事実をしっかりと父上に伝えた。
「はぁ、またか、、、。まぁいい。その馬車に付与などはしていないのか?」
「え、馬車にも付与ができるのですか?」
これから馬車に付与しに行こう。
「父上、僕は今から馬車に付与をしてもいいですか?」
「いいぞ。私の目の前であればお前も自重する気になるだろう。」
よし。父上からの許可は出た。何を付与しようかな?
考えながら馬車に手を触れて魔力を通し、付与を開始する。
「まずは馬車の強化からかな。物理耐性、魔法耐性。これで馬車の中にいれば安全になった。あとは、馬の疲れ軽減に馬車の見た目の倍の大きさになるようイメージして、、、。できた!!」
馬車の付与が完了して父上の方を見ると口を開けたまま固まっていた。
「完成しました。どうです?完璧な馬車を作りましたよ!!」
父上に話しかけると放心状態から戻ってきた。
「レイ。何をしているか分かっているのか?」
「え?」
「陛下や王族が乗る馬車でもこんなに付与がかかっているのは見たことがない。それにエルダートレントの素材自体強い攻撃態勢があるのにさらに物理・魔法耐性を付けた結果、攻撃を一切通さない要塞になった。さらに馬の疲れを軽減する?エルダートレントは軽くて丈夫なのが売りだぞ?通常の馬車の倍は走れると予想できるのにさらに距離が延びるぞ!?最後に見た目と中は倍の大きさがあるだと!?そんな付与聞いたことがないぞ。はぁ、また陛下に報告することが増えた。また、小言でなんか言われるよ。」
父上がすごい剣幕で問いただしてきた。よくこんなに一息で叫べな。そして、今後のことを考えて落ち込み始めた。うん。父上は今日も順調だ。
「もう、国としてはレイを手放せなくなった。おそらく謁見でレイは貴族として独立することになるだろう。侯爵家三男というだけでは守り切れなくなってるからな。」
「そんなにですか!?」
「あぁ、ドラゴンを倒したことだけで手放せない存在だ。騎士爵になることはこの前話し合ったときに決定していたがもっと上の爵位になるだろう。」
この前父上が王都に行った時には騎士爵になることは決まっていたらしい。もっと恵右の爵位ってことは領地経営などもするのだろうか。こんな子供がトップになって周りの人は認めてくれるのかな。
気づかないうちに不安な顔になっていると父上が察して助言してくれた。
「はじめのうちは領地を持たない方位貴族だろう。だが、今後どうなるかはわからない。」
こうして、独立した貴族になることが決定したレイであった。
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