第一話 転生
目が覚めるとそこは自宅玄関の天井ではなく、見たこともない天井だった。
「ギャァァァァァァ!」
「やっと泣きましたね。良かったです。」
「オンギャァ」
「おぉ、元気な男の子ですね。」
まじで誰だこのおばさん。成人男性を軽々と抱きかかえるなんて、正気の沙汰とは思えない。あれ?待てよ。なんか俺、手が小さくないか。それに、話せてもいないし、周りを見渡そうにも全く首に力が入らない。もしかして、俺って、、、。
「オンギャァ!?」
俺も男の端くれだ。ラノベをもちろん通って成長したし、実際ある病気をちょっとだけ患ったこともある。
「サラ、よくやった!!初めての男の子だ。今日は宴だな。」
「そんなことより、アレン。名前は決めたの?」
「あぁ、この子はレイ。レイ・フォン・スタンフォードだ。」
「レイ。いい名前ね。」
こうして俺は父親であるアレンと母親であるサラの間にレイとしてスタンフォード家に異世界転生したのである。
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異世界に転生してから三年が経った。
スタンフォード家についてもいろいろと分かってきた部分がある。
まず、スタンフォード家はエインズワース王国の貴族である。
爵位は侯爵。貴族の中では上級貴族にあたり、上から数えた方が早い。エインズワース王国は騎士爵、準男爵、男爵、子爵、伯爵、辺境伯、侯爵、公爵、王族がある。侯爵と辺境伯は役職が違うだけで地位の高さは同じだ。
そして、なんといってもこの世界には魔法がある。転生したときに少しは期待したよ?だって、男子の憧れじゃん。初めに生活魔法を体に掛けられてきれいになったときはびっくりした。
「レイ。ここにいたの。」
「あ、アリス姉上。」
「また、本を読んでいるの?レイは本が好きね。」
「はい。本はいろいろなことを学べますので。」
僕はこれまで、この国の地理や歴史、魔法についての本を読んできた。魔法については僕でも使えることを確認済みである。この世界には、火・水・風・土・光・闇・無という属性がある。適性がないと使えないが僕は全部使えることが分かった。さらに誰でも使える生活魔法と魔力で筋力を上げたりすることができる身体強化がある。
「レイは難しい本ばかり読んでいるよね。理解できているの?」
「はい。早く僕も父上とダレル兄上のお力になりたいので。」
「へぇ。でも、ダレルはあなたみたいに難しい本はまだ、読めないんだけどね。そういう私も、、、。」
後半は聞こえなかったが、兄上はまだ本が読めないらしい。まぁ、三歳で難しい本を読んでいる僕が異常なんだけど。なぜ読めるかっていえば、この国の言語は日本語に似ているからだ。実際、話しているのは日本語のままだし。日本で成人男性だった頃の記憶がまだある僕にとっては言語の習得は簡単だった。文字についても三歳児だからかすっと頭に入ってきたしね。
「姉上はどうしてここに?」
「あ、そうだった。お昼ご飯の支度ができたから食堂まで来て。」
そう言うと姉上は僕の腕を掴み引っ張ってく。
食堂に着くと家族全員が待っていた。家族構成は、父がアレン母がサラ三個上の兄がダレル二個上の姉がアリス。そして、父上には側室がいてその人がコリンナ。コリンナと父上の子どもがジェイミー。僕の義理の妹で一個下だ。貴族は子孫を多く残すために側室を何人も抱えるらしい。ただ、父上は珍しく正室と側室一人しかいないらしい。
「父上、遅れました。」
「早く席に着きなさい。君たちを待っていたのだよ。」
「「はい。」」
こうして食事が始まる。
「レイ。最近はどんな本を読んでいるんだい。」
「魔法についてはある程度知識を身に付けましたので最近は付与の本を見てます。」
「ほう、魔法についてはもう習得したのか。」
「はい、適性については全属性あったことを確認済みです。」
「なに!?全適性だと!?それは、本当か!?」
「え、あ、はい。」
まさかこんなにも驚かれるとは思わなかった。
「レイ、後で私の書斎に来なさい。ここにいるものは今の話を他言しないように。」
「分かりました、父上。」
え?僕怒られるの?適性があるっていいことじゃないの?
そんな不安を抱えながらの食事はあまり味を感じ取ることはできなかった。
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