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僕の人生に彩りを  作者: 七瀬 湊
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【第一章】灘 珠希 ⑤

 ◇第五話◇


「何言ってるの?」


 変な奴を見るような顔をした美少女が僕の顔を覗き込んでそう言ってきた。


 この子が僕を部活に勝手に入れてくれた柊さんか。


 横を見ると先生も「何言ってんの?」みたいな感じで僕を見ている。


 おっと。声に出ていたようだ。僕の馬鹿野郎。


 いつも頭の中で呟いていたのに何故か今日は声に出してしまった。


 しかも、多分結構大きな声で。


 僕はツッコミに向いているかもしれないな。いっそお笑い芸人かYouTuberにでもなってみようか。


 「灘。急にどうした。」


 「す、すみません。なんでもないです」


 「まあいい。私はまだ仕事があるのでこれで失礼する。あとは任せたぞ、柊」


 「はい。お疲れ様でした!」


 「え、ちょっ」


 柊さんとの会話を終えて先生はすぐに別棟から出て職員室に戻ってしまった。


 さてこれからどうしよう。


 自慢じゃないけど僕女の子の免疫全然ないよ? ほぼゼロに近いよ?


 「とりあえず入りなよ。紅茶でいい?」


 「は、はい」


 僕は言われるがまま空き教室……いや文芸部の部室の中央に配置されている二席の向かい合った机の黒板側に座った。


 反対の席にはパソコンが置いてあり、横につけられた机には資料のようなものが山積みに置かれていたからだ。


 おそらく彼女の席だろう。


 しかし、妙だ。


 なぜ、使われている机がこんなに少ないのだろう。


 出ている机は、彼女の思われるパソコンが置かれた机と彼女のと思われる山積みの資料が置かれた机、それに今僕が使っているこの机の三つだけしかない。


 そうと考えているうちに彼女が鼻歌を歌いながら紅茶を入れて持って僕の机に来た。


 「はい。紅茶だよ。暑いから注意してね!」


 そう言ってニコニコした可愛い笑顔を浮かべ彼女は僕の机に紅茶を置いてくれた。


 「可愛いなこの野郎」


 「え?」


 「ん、なんですか?」


 「今なんて?」


 「あ」


 僕は彼女の慌てているような、照れているような顔を見て事態を理解した。


 また口に出してしまっていたようだ。


 今日は調子が悪いな。僕の馬鹿野郎。


 「ふ、ふいません! い、今の忘れて!」


 おっと、同様のあまり噛んでしまった。


 今日は本当に調子が良くないようだ。


 「ふ、ふははは! 珠希くん、君面白いね」


 彼女は昨日のようにあどけなくかつ豪快に笑っている。


 「わ、笑いすぎだよ」


 僕が拗ねたような表情をすると彼女はまたゲラゲラ笑いはじめた。


 「なんなんだよ、もう」


 「ごめんごめん。じゃあとりあえず自己紹介しよっか。まず私ね。私は二年一組柊結衣。文芸部の部長だよ」


 「次、珠希くんの番ね」そう言わんばかりにあの純粋無垢な笑みでこちらを見つめてくる。


 う、眩しい。


 「僕は灘珠希。二年五組」


 「よろしくね」


 彼女はそう言って手を差し出してきた。


 何?この手。良く分からないけど怖いよ?


 「どうしたの? 握手だよ! 握手!」


 「なんだ握手か、ってなんの握手だよ」


 またツッコんでしまった。どうやら本当にツッコミ属性があったのかもしれない。もしかしたら新八にもなれるかな。


 そんな僕のしょうもない妄想もよそに彼女はまたゲラゲラ笑っている。


 こいつ、ツボ浅すぎだろ。


 「握手しようよ、握手。こんな可愛い子と握手できるなんてラッキーだぞ〜」


 「君は自己肯定感が高くていいね」


 まあ実際十分可愛と思うけど。


 「なんか冷たいなー。そんなんじゃもてないぞー」


 「余計なお世話だよ」


 この後も今みたいな感じで内容のない話をしていたら下校時刻を知らせるチャイムが鳴った。


 「え、もうそんな時間?! 楽しいことしてると時間が経つのが早いね」


 「うん。今日は少し楽しかった……と思う」


 「じゃあ帰ろっか」


 彼女が部室に鍵を締め、職員室に鍵を返しに行っている今僕は我に帰った。


 何楽しんでんだよ! 僕もう完全部員じゃん!


 「おまたせ! 待っててくれてありがと!」

 

 そういって彼女が僕の顔を覗き込んできた。

 

 それやめてくれ。心臓に悪い。


 「珠希くんって何通学?」


 「電車だけど」


 「じゃあ、一緒に帰ろっか!」


 僕は特に断る理由も見当たらなかったので彼女と駅まで一緒に行き、お互い車両が違ったので駅で解散となった。


 家に帰った僕は手洗いうがいを済ませると自室に戻りある事を思い出し唸った。


 「僕が部員になった経緯聞くの忘れた」


 それと同時に明日も部室に行くのが確定した。

 

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