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『おてんば』?な幼馴染が、変わろうと努力するらしい。

作者: 一年間、坐骨神経痛

 人の性格を変える、ということは容易なことではない。

 自我が芽生えて、何気ない一日が積み重なって形成されたものは、そう簡単に変わるものではない。

 色々と性格として「これはどうなのか」と周りに言われる性格はあるが、その一つの中に「おてんば」というものがある。



「奈菜ちゃんおはよー!」

「おっはー!」


 クラスの男子からの挨拶に、ハイテンションで応える少女がいる。

 その名は、内海奈菜。

 長めの髪をストレートに伸ばし、整った顔立ちとスタイルの良さで男子たちから相当な人気がある。


「将人、おはよー!」

「あいあい、おはよう。朝から元気だな」


 教室に入って、彼女の幼馴染である東堂将人に元気よく挨拶をした。


「もちろん! 朝は元気に行かないと!」

「確かにな」


 そういうと、奈菜は教室にいるクラスメイト達に挨拶をしに行った。

 明るく誰にでも元気に接する彼女に、男子たちではなく、女子たちも支持していた。

 クラスの中心的存在となり、引っ張っていってくれると担任教師からの信頼も厚い。

 憂鬱になりやすい朝に、元気に声をかけられるだけでこうして明るく元気になれる。


 幼馴染の立場である将人からしても、色々と意識をしだす中学になっても、小学校からの絡みを変えることはなかった。

 こうして高校になった今も、元気よく変わることなく、学校内では声をかけてくれる。

 奈菜と距離が出来ると寂しいと感じていたので、こうして変わらず声をかけてくれることが、将人にとってはとても嬉しいものだった。


 こんな奈菜の性格を、将人はとても良いと思っていた。


 ※※※


「はぁー……」


 放課後の公園にて。

 ブランコをこぎながら、奈菜がため息をついている。

 いつも帰り道が同じ将人も、ため息をつく奈菜の隣でブランコに座っている。


「もう無理しなくていいと思うけど。今のままで、いいだろ」

「ダメッ! ダメなんだってば……」


 将人の提案に、奈菜は激しく拒否した。


「『おてんば』を直さないといけないの!」


 彼女は、今の自分の性格にうんざりしている。

 そのことを学校内では出さないが、事情を知る将人の前ではこうして悩みを打ち明けている。


「『おてんば』ってほどじゃないだろ。ちょっと明るいくらいだし。実際、それでみんな元気になって、クラスをまとめられている。いい方向に進んでるじゃん」

「うーん……」


 将人の言葉に、イマイチ納得していない。

 なぜ、奈菜が自分で『おてんば』と言って、自分の性格を直したいと悩んでいるのか。

 それは、二日前の出来事になる。



「あら、将人君。お久しぶり!」

「あ、お久しぶりです。いつも奈菜さんにお世話になっています~」

「すっかりいい男になっちゃって~」

「あはは、ありがとうございます」


 自宅からほど近いスーパーで、将人は奈菜の母親と遭遇した。


「お買い物?」

「ええ、ちょっと買い出しに行って来いって言われて」

「思春期なのに、ちゃんとしてて偉いね。それに比べてうちの子ったら……」


 奈菜の母親がため息をついていると、おそらく総菜コーナーから買ってきたであろうたこ焼きを食べている奈々が、ゆっくりと近寄ってきた。


「わわっ! なんで将人がいるの!?」

「なんでじゃないのよ! 将人君はこうしてお手伝いもして、かっこよくもなってるのに、あんたときたら……」

「……別にいいじゃん。お腹は空くんだし」


 お説教が始まってしまったが、将人からしても今の奈菜の性格が悪いとは思っていない。

 いい意味で、何も変わっていないと思う。

 ただ、奈菜の母親からすれば、いつまでも女性としての落ち着きがないことを気にしていると延々と説教している。


「そんな『おてんば』じゃ、将人君に嫌われるのは時間の問題ね!」

「えっ……」

「ねぇ、将人君。こんな恥じらいのない娘、男の子からしたらいやよねぇ!?」

「げ、元気でいいと思いますよ。実際のところ、みんなが信頼していて先生からも良く褒められていますし」

「こんな娘に気を遣わなくていいのよ! ったく、よく知っている将人君だからこうだけど、早く直さないと他の子にはそうもいかなくなるわよ?」

「直さないと、将人も嫌いになる……?」


 奈菜はしょんぼりした声で、将人に尋ねてきた。

 いや、別にそんなことはないと思うが。

 いやでもどうだろうか、幼馴染としてこの性格であることを知っていて落ち着くからそう思うだけなのか?

 他の人が奈菜を見て、あの活発性を見て、戸惑う人もいるのか?


「そ、そんなことはないけどな?」


 どっちの意見に肩を持てばいいのかよく分からなかったので、ちょっと言いよどみながら回答を誤魔化した。


「ほら、将人君も困っているじゃない!? あんたがどうしようもないって分かってるから、返す言葉も無いのよ!」

「い、いや……。そんなことは……」


 いや、そんなこと全然思っていないのだが。


「そ、そんな……」

「性格も見た目に出る。せっかく髪を伸ばして、良い雰囲気になったと思っても、これじゃあ意味ないわね」


 奈菜の母親の言葉は容赦がない。

 どんどん、奈菜の心を的確に抉っている。


「ま、将人……。『おてんば』直すから……!」

「お、おう。頑張れ」

「こんな娘だけど、見限らずに仲良くしてあげてね」

「も、もちろんです」


 そんなやり取り以来、将人と二人になるとその話で、奈菜が元気をなくしている。


 早速直そうとしたのだが、どういう風にしていけば年相応の女の子の反応になるのか、全くイメージが出来ていないらしい。

 そんな状態で、いきなりクラスメイトの前で実践でもしたら、みんなに不審がられるということで、将人に変でないか試してからにしたいということだった。


「奈菜が急におとなしくなったら、みんな不安になるぞ。それに、世の中には本当に『おてんば』という人たちがいるが、それなりに生活できてるだろ」


 そもそも、奈菜の母親が娘のことを思って、少し誇張して『おてんば』と言っただけだろ思うのだが。

 本当の『おてんば』はもっとレベルが違うと思う。


「じゃあ……。将人の前で練習して、自然な雰囲気になってからみんなの前でやる」

「そんなに直したいの?」


 将人がそう尋ねると、黙ったまま頷いた。意志は固いらしい。

 よっぽどあのお説教が聞いているらしい。


 確かに、気の知れた相手にダメだと見限られているかもしれない、と感じたら、これぐらい本気になるのかもしれない。


「よしっ! じゃあ、早速やっていこう」

「具体的に、何をしていくかとか計画は?」

「まず、『おてんば』がダメなら、その反対になればいいってことだよね?」

「あー、なるほどな。でも、反対語ってなんだろ。検索してみるか」


 スマホを取り出して、何でも教えてくれる検索サイトで調べてみる。


「『おぼこ』だってさ」

「え、何それ」

「……」

「え、なんで黙ってるの?」

「自分で調べてみ……」


 将人の口からはとても言いにくいワードだった。

 間違いなく、セクハラになる。

 不思議そうな顔をしながら、奈菜もスマホでその言葉の意味を検索してみた。

 すると、すぐに顔が赤くなった。


「わ、私、一応この立場ですからね!?」

「言わんでいい!」


 そんなこと言われても、将人としてはどうしていいか分からない。


「もう適当にちょっとおとなしめとか、恥ずかしそうにするとかでいいんじゃない?」

「そうだね。何か求められてるのってそう言うイメージある」


 男の目線から、あの女性は清楚だとか簡単に言うが、いざ「清楚ってどんな感じ? 言葉にして」って言われると、全然できない。

 ただ、見た目とか声の雰囲気や立ち振る舞い、総合的に見て一言、「清楚」ってまとめているだけのような気がしてきた……。


「じゃ、じゃあ一回それを意識してやってみるね」

「お、早速実践ね。どうぞ」

「将人……。お、おはよう」


 何かプルプルしている。

 顔はよく分からない顔になり、せっかくの美人が台無し状態である。


「ふざけてる? これ、にらめっこでもしてんの?」

「違います!」

「なら論外」

「くっそー」


 一回目、あっさりと失敗。


「何か、ちょっとしぐさ入れてみたら? ちょっと髪を触ってみるとか」

「ああー! 漫画とかドラマで見たことある!」

「お、ならイメージ湧きやすいでしょ」

「うん! やってみるね」

「おけ」

「将人君……おはよ」


 奈菜は髪を触りながら、セリフを言った。

 しかし、髪の触り方がおかしい。

 シャンプーのCMみたいに、がっつり髪をかき分けている。

 さっき、漫画とか見てたって言ってたよな???


「ごめん、ふざけてる?」

「なんでぇ!?」

「ちょっと毛先触るとか、そのレベルだろ。誰が髪質自慢しろと言った」

「はっ!そうだった!」

「ダメダメじゃねぇか」

「ううう……」


 二回目の挑戦もあっけなく失敗した。


「こりゃあ、長い道のりになるぞ……」


 何なら、やっぱり無理でしたって言うことも全然あり得る。


「み、見捨てないで!」

「まだやるの?」

「あ、明日までに可愛い女の子のしぐさ、色々調べてきます」

「じゃあ、もうちょっと続けてみる?」

「うん!」

「ただ、挑戦するのはこの場だけな。学校でやったら、みんながパニックになる」

「そ、そんなにひどい……?」

「少なくとも、変なものを食べたと思われて保健室送りは免れんな」

「マジかぁ……。なら、将人の前だけにしよ」

「それが賢明だな」


 そんな話を終えて、お互いにブランコから飛び降りてそれぞれの帰路に着く。


「ごめんね。変なことに巻き込んじゃって」

「いいよ。幼馴染として許しておく」

「ありがとう」


 奈菜はそう言うと、ニコッと笑った。


「そんな将人が、好きだよ?」

「!?」

「じゃあね」


 そう言って奈菜は帰宅するべく、駆け出して行った。


「その表情、出来るならさっさとやれば終わるだろうが……」


 夕焼けに照らされた奈菜の笑顔と、あの言葉には将人も動揺を隠せなかった。

 奈菜が早く駆け出して行ってくれたおかげで気づかなかったが。


 可愛くて残念で、それまた可愛い。

 何なんだ、あいつは。


 ※※※



 言ってしまった。


 恥かしさのあまり、すぐに駆け出して将人の反応を見ることは出来なかった。

 自分の顔が夕焼けにあたっているせいなのか、すごく熱い。


「頑張らなきゃ……!」


 この性格が周りの女の子に比べて、ちょっと浮いているかもとは思っていた。

 でも、みんなは嫌な顔をしないし、必要としてくれているのでそれでよかったと思っていた。

 でも、将人に嫌われるかもしれない。


 それを母親から聞かされた時、どうしようと思った。


 いつも一緒に居てくれる将人。

 いつも落ち着きがあって、こんな私と一緒にいると不思議なバランス感覚があって安心できた。

 明るい男子もいいけど、やはり自分の事をよく分かってくれるのは将人だといつも感じた。

 そんな将人が変わらす私に接してくれてるから、いつも私は元気で居られる。


 だから、今回ばかりは頑張って向き合ってみようと思う。


 いつも元気をくれる、大好きな人にずっと見てもらえるように。



閲覧ありがとうございました。よければ評価、よろしくお願いします。

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[一言] 初々しいラブラブで読んでいてホノボノしました!
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