7話 戦いが終わり①
で!
さっきかから気になっている人物が・・・
肩の辺りまで切り揃えた銀髪で金色の瞳のとんでもない美少女が王女様の後ろに立っているのだが、この子はさっき見た記憶がある。
その時は全裸だった気が・・・
直後に顎を殴られて気を失った筈だ。
しかし、今はちゃんとパンツスタイルの服を着ている。
この服はカーミラの服か?俺が気絶している間に転移で取ってきたのだろう。
それにしても足が長いしスタイルは抜群だ。そして服のセンスも最高だ。
(さすがはカーミラだけあるな。)
目が合った途端、彼女が床に膝を付き臣下の礼を取った。
「私を甦らせていただきどんなに感謝してもしきれません。そして、あの女神を吸収した事により神格を得、神竜となり、こうして人の姿をとれるよう人化の技も習得しました。」
どうやら食中毒は起こさなかったようで良かった。
それにしても、あの女神を吸収してこうやって人に変化出来るようになったって・・・
弱くて脂肪の塊以外に何も無かったと思ったけど、腐っても女神だったな。エンシェントドラゴンを進化させるほどに神格は高かったのだ。
かなりの驚きだ。
「しかし、私はあなた様へはお仕えは出来ません。」
深々と頭を下げた。
それは分かっている。
俺は生き返らせただけで、ドラゴンを倒したのは彼女だからな。
彼女がドラゴンに力を見せたのだ。彼女がドラゴンの主人になるのは必然だよ。
そして王女様へと向き直り、俺よりも深々と頭を下げた。
「我がマスターよ、私は生涯マスターへ仕える事を誓います。マスターの寿命が果つるまで、私はマスターのお側にお仕えします。」
王女様が汗ダラダラでドラゴン(人の姿ね)を見ている。
「わ、私に仕えても何も出ないわよ。だって、私は勇者をクビになったし、国に戻っても腫れ物扱いだから私と一緒で居場所は無いわ。そんな私に仕えるくらいなら、ここにいる魔王様に仕えてちょうだい。」
しかし、ドラゴン娘は首を横に振る。
「いえ、私はあなた様以外には仕えるつもりはありません。何と言われようが、私はあなた様と一緒にいます。」
とても真摯な目つきで王女様をジッと見ている。
「勇者をクビになったと言われましたね。」
王女様の体が光った。
「私が吸収しました女神の力ですが、勇者として分け与えた力を戻しました。これであなた様は元の勇者と同じ力を使えるようになりました。私が生きている限りずっとです。そして、私の力も使えるようになりましたので、更に強くなりましたよ。」
「そ、それでも・・・」
自信が無さそうに王女様が俯いている。
かつての気の強かった王女様の面影が全く無いな。
「私は国と女神に捨てられた身・・・、だから・・・」
う~ん・・・、余程さっきの事が堪えているみたいだ。
殺されそうになるわ、強姦されそうにもなったし、これまで信じていたものに裏切られたのだ。
既に国には自分の拠り所も無いし、不安な気持ちも良く分かる。
「魔王様よ・・・、其方の出番じゃな。」
カーミラがツンツンと俺の脇腹を肘で突いている。
言いたい事は分かっている。
「王女様」
「魔王様・・・」
王女様が俺をジッと見つめている。
とても憂いのある目だ。このまま抱きしめたい衝動に駆られるが、今はそんな事をしてはダメだ。
「あなたは国に戻るべきだ。」
そう話すとポロポロと王女様の瞳から涙が溢れた。
「いや・・・、あんなところに戻りたくない・・・、父も兄もわが身の快楽に溺れ宰相の言いなりだ。今の王国は宰相と教会の教皇の2人が食い散らかしてボロボロの状態だ。そんな中に戻ってみろ!何の後ろ盾の無い私は・・・、想像しただけでも・・・」
ガクガク震え蹲ってしまった。
「怖い・・・、また私の体を狙って、あんな目に遭うと思うと・・・、あのいやらしい目つきは王城でも周りからいつも見られていた。そんな目つきに私は・・・、さっきの襲われることを思い出して・・・、私はそんなのは耐えられない・・・」
「マスター!」
ドラゴン娘がギュッと王女様を抱きしめた。
「私がずっとマスターを守ります。どんな男も私が全て蹴散らします!」
「ありがとう・・・」
王女様がジッと彼女を見つめていた。
「そういえば、あなたの名前は?」
しかし彼女がが首を振った。
「私には名前がありません。ドラゴンとして生きていた時は名前は必要なかったもので・・・、出来れば、マスターが私の名付け親になっていただければ最高に嬉しいです。」
「分かりました。」
王女様が考えている様子だ。
しばらくするとポン!と手を叩いた。
「テレシア!この名前はどうだ?」
「最高です!さすがはマスターです。とても気に入りました。ところで、この名前の由来は何です?」
その瞬間に王女様の顔が真っ赤になっていた。
「そ、それは・・・」
「何じゃ、そんなにも言いにくい事か?」
今度はカーミラが茶々を入れる。
「い、いえ・・・、笑わないで下さい・・・」
「何じゃ?」
「じ、実は・・・、私も結婚というのに憧れていて、好きな人と結婚し女の子が生まれたらこの名前にしようと思って・・・、う~~~、恥ずかしい!」
そのまま蹲ってしまった。
「私がマスターの子供の名前を・・・、そんな大事な名前を私の為に・・・」
あ~、今度はテレシアが感激で号泣しちゃってるよ・・・
どんなカオスな状況だ?
しばらく黙って見ていたけど、2人がやっと落ち着いたみたいだ。
しかし、あの強姦未遂の件は王女様は心にかなり深い傷を負ったみたいだ。
そんな状況だし、急いであの国に戻すとなると、今度は王女様の方が心を病む可能性が高い。
(あのクソ女神めぇぇぇ・・・、余計な置き土産を置いていったな。)
チラッと横を見てみると・・・
依り代であったカトレアが倒れていた。女神の憑依から解放されたのだろう。今は眠っているように静かだ。
「魔王様・・・」
影移動でシャドウが現れた。
「この女ですが、女神セイレーンの依り代になる前はかなり真っ黒な女でしたね。詐欺、美人局、等々、叩けば叩くほど埃が出る女ですよ。」
「そうか・・・」
「じゃあ、いらないな。」
パチンと指を鳴らすとカトレアの姿が消えた。
「魔王様、どこに?」
「王国の教会に転送しておいた。あいつらの信仰していた女神が死んだ事を刷り込んでおいてな。目を覚ましたあの女が信者の前でいきなり罪を全て自白するように精神操作をしておいた。教会は躍起になって火消しをしようとするだろう。もういない女神だが、その事を隠す為に教会が取る行動であの女の末路は決まっている。教会は自分達の権力を守る為に、あの女は人知れず消されるだろう。2度と表に出る事は無いな。」
「さすが魔王様らしいやり方ですね。」
シャドウがニヤリと笑う。
「因果応報だよ。こいつの魂は既に真っ黒だ。碌な死に方はしないと決まっていたからな。」
人を騙す生き方でいつまでも生き続けられる訳が無いよ。
(それが例え神でもな・・・)
その夜、魔王城・・・
「それで・・・、何でお前達がここにいるのだ?」
「決まっておろう!」
カーミラが胸を張ってふんぞり返っている。
ピンクのネグリジェを着ていて、色々と見えそうで際どいから目を逸らしてカーミラの顔だけを見ている。それもそれで綺麗過ぎる顔だし、魅了されそうでキツいッス。
「妾の言う事を何でも聞いてくれると約束しただろう?今宵はその約束を果たしてもらう為だ!ふふふ・・・、今になって怖気づいたのか?この軟弱者がぁあああああ!」
「はぁ~」
予想はしていたけど、やっぱりの展開だったよ。
しかし、カーミラの隣にいる人が理解出来ん!
しかもだ!白い可愛いパジャマがやたらと似合ってるよ。
「何で王女様もここにいる?いくら国に帰りたくないとはいっても、さすがにここに俺達と一緒にいるとマズイのでは?」
「魔王様よ!あの時に私は言ったよな?『私を貰って下さい。』ってな。」
少し俯き加減になり、目に涙が浮かんでくる。
「今はあの国には戻りたくない。戻ってもあの昼の事を思い出すと・・・」
確かにあの事には同情するよ。
だからといって、こうして雰囲気に流されるのもなぁ~
でも、将来的に王女様を女王にして国を安定させるつもりだし、無理矢理戻して何かあっても大変だからな。
「分かったよ。気持ちが落ち着くまでこの城にいても大丈夫なように手配しておくよ。」
泣きそうだった王女様が嬉しそうに微笑んでくれる。
とても可愛い笑顔だから思わすドキッとしてしまうが、それは仕方ないだろう。
「有り難い、心遣いに感謝する。」
嬉しそうにしている王女様の横にはテレシアがガッツポーズを作っている。
「マスター頑張って下さい!マスター程の美貌なら、魔王といえどもイチコロですよ!自信を持って下さい!」
なぜかそのテレシアも俺を見てペロッと舌なめずりをしているのだが、何で?
コイツが特におかしい!シャワー上がりなんだろうけど、何でバスタオル1枚だけを巻いている姿なんだ?
お前は王女様に仕えているのだろう?
何で俺を襲う気満々なのだ?
「強いオスには心惹かれるのですよ。生き返らせてくれたお礼も兼ねて、私の処女を差し上げますよ。」
たらっ・・・
頬に汗がツツ~と流れた。
(こいつは何を言っているのだ?)
俺の目の前にはカーミラ、シルヴィア王女様、ドラゴン娘のテレシアの3人の美女、美少女が立っている。
どいつも目が変だぞ!
お、お、前ら!何を考えているのだ!
「魔王様よ、妾が考えている事はたった1つじゃ・・・、女にそんな恥ずかしい事を言わせるのか?」
「同じく、あのクズ男達に刻みこまれた嫌な記憶を塗り替えて欲しい・・・あなたに抱かれて幸せな気持ちになりたいの・・・、お願いだ。」
「強い男の遺伝子が欲しいです。ペロリ・・・」
ジリジリと3人が近づいてくる。
俺の後ろにはベッドがぁぁぁ・・・
「魔王様よ、もう逃げられん・・・、この部屋には妾自慢の転移阻害の魔法陣を仕込んであるからな。」
「私がこうして強くなったのは、魔王様に釣り合うようにする為だったのか・・・、あの女神にも少しは感謝するぞ。」
「ペロリ・・・、美味しそう・・・」
おい!このドラゴン娘は何を言っている!
「諦めるのじゃ、妾も初めてじゃからな。全ては魔王様、其方に女を捧げるためだったのだ!」
「ふふふ・・・、私もだな。今夜は私も女になれる。もう残念王女や鉄の処女とは呼ばせない!」
「いただきます・・・」
おい!このドラゴン娘!俺は食料じゃないぞ!
(ダメだ!もう逃げられる状況では無い!)
「魔王様・・・」
(この声はシャドウ!そうか!影移動で俺を逃がしてくれるのか!)
足元を見ると、俺の影の中にシャドウの姿が見えた。
「明日は魔王様がお休みになっても構わないよう、我々が魔王様のお仕事を完璧にバックアップしておきます。ゆっくりと新婚気分を堪能して下さい。部下一同、魔王様の幸せを願っています。」
スッと気配が消えた。
(シャドウの裏切り者ぉおおおおおおおおおおおお!)
「さぁ!覚悟するのじゃぁあああ!妾の欲望の赴くままにぃいいいいいいいいいい!」
「今こそ!バーミリオン流の奥義を見せる時!剣では負けたが、ベッドでは私が勝つっっっ!」
「ヒャッハー!蹂躙よぉおおおおおおおおおおおおお!」
3人が一斉に俺へと飛びかかって来た。
何でみんなルパンダイブのポーズなんだよ!普通は逆じゃないか?
そのまま一気に3人がかりでベッドに押し倒された。
「お、お前等!雰囲気もクソも無いぞぉおおお!」
「こういう事は魔王様はヘタレだろうが。押し倒さないといつまでも結ばれん!覚悟するのだな。」
「既成事実を作って魔王様には責任を取ってもらうからな。私もやっと恋愛が出来るのだ。こんな嬉しい事はないそ!」
「ドラゴンは肉食よ!美味しく食べてあげるからね!」
「あれぇえええええええええええええええええええええ!」
魔王城に俺の悲鳴が響いた。
魔王城、メイド隊控え室
「メイド長!我々はこのまま手をこまねいているだけですか?我々メイド隊も魔王様の寵愛を・・・」
数人のメイド達が椅子に座っているメイドに迫っている。
しかし、そのメイドは全く動じず和やかに笑っていた。
「みなさん、焦ってはダメですよ。今夜はカーミラ様が本懐を遂げるのです。カーミラ様が結ばれる前に私達が抜け駆けしてはいけないでしょう?だからずっと私達は待っていたのですよ。」
「メイド長・・・、それでは・・・」
メイド達がウルウルした目でメイド長と呼ばれた人を見ていた。
スクッと立ち上がりみんなを見渡す。
「みなさんの魔王様に対する気持ちは分かっています。私も同じですからね。あの先代クソ魔王からのセクハラにどれだけ心が病んでしまったか・・・、その悪夢を見せられていた私達を今の魔王様は救ってくれたのよ。もう私達は魔王様がいないと生きていけない程に魔王様を愛しているわ!とうとう、私達も本懐を遂げる時が来ました!サリー!」
「はっ!」
「あなたは他のメイド達と協力して夜のローテーションを組みなさい。もちろん、カーミラ様を始めとしたお三方の夜伽のローテーションを優先してね。我々メイド隊以外にも魔王様の寵愛を狙っている輩が多いわ!」
「それは分かります。魔王様は魔王城にいる独身女悪魔達全員が狙っている存在!」
「そうよ!だから、私達メイド隊がお三方以外の女を寄せ付けないようにするのよ。お三方が空いている夜は全て私達が愛してもらうように!魔王様がお疲れの時は添い寝だけでも構わないわ!決して他部署の女共が入り込む隙を与えたらダメ!常に私達が24時間体制でお側に仕えるのよ。私達は完璧なメイドを目指して頑張ってきたのですから、それくらいの事は容易に出来ると信じていますね。そんな完璧なローテーションを作るの!魔王様が夜伽を始められたからね。もう遠慮してはダメよ!分かった?」
「「「勿論です!我らメイド隊に魔王様の寵愛を!」」」
「「「メイド長レナ隊長に忠誠を!」」」
「「「私達の熱いパトスを魔王様に!」」」
「「「邪魔者には死を!」」」
「「「おぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」」
魔王の知らないところで更なるハーレム計画が進んでいた。
しかも、かなりヤバい方向に・・・