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6話 女神セイレーンを討伐しちゃいました②

女神がギリギリと俺を睨んでいる。


まぁ、目の前にいる女神は本体じゃなくて依り代の体だから、厳密には女神とは違うのか?


「魔族のクズどもがぁあああああああああああああああ!」


両手を頭上に掲げた。


「例え依り代の体だろうが!この私の女神の力は普通に使えるんだよ!クズが私の本気の力で死になぁあああああああああああああああ!」



「タイダル!ウェーブ!」



おぉおおお!


ここはダンジョンの最深部で水場は見当たらないけど、女神の魔法はそんな物理法則も無視するんだ。

女神の頭上に巨大な水球が出来上がっている。

これは重そうだな。十数トンは軽くあるだろうし、こんなのをまともに上からぶつけられてしまえば、全身の骨がバラバラになってしまうのは確実だろう。

さすが女神と言うだけある。人間の魔法使いではここまでの強大な魔力は出せないだろうな。

人間より強力な魔族でも無理だろう。


(まっ!普通の魔族ならな!俺なら簡単に出来る程度だけどな!)


「ブラック・ホール!」


シュオン!


水球の中に小さな黒点が出来た瞬間に、その黒点へとあっという間に吸い込まれてしまい水球が消滅してしまう。


「へっ!」


女神が間抜けな声を出して、唖然とした顔で水球のあった頭上の場所を見ていた。


「そ、そんな・・・、私の魔法を消滅させる?そんなのは私よりも魔力が強大でないと出来ないのよ・・・」


女神から感じる魔力は正直ねぇ・・・


「おいおい、これが本気なのか?女神様、男遊びし過ぎてボケたか?」


「キィイイイイイイイイイイ!」


あぁ~~~、ヒステリーを起こしたか?

そんなに煽っていないはずなんだけど、えらく沸点が低い神様だよな。

さっきからの態度から見てもフライドは相当高そうだし、今まで自分の思った通りに出来ていたから、今の状況は納得出来ないのだろうね。


「これならブラック・ホールでも相殺出来まい!極大魔法!」


今度は俺達の方へ両手の掌を向けた。


「全てを凍り尽くせ!アブソリュート!ゼロォオオオオオオオオオ!」


女神の掌から超超低温の吹雪が襲ってきた。この吹雪を喰らえば完全に凍り付き砕けてしまうだろう。


(でもねぇ~)


「極大魔法でもこの程度か?」


王女様を後ろに下がらせて、右手の掌を女神へ向けた。


「ディスペル!」



フッ!



俺へと迫っていた吹雪が掻き消えてしまった。


「ば!馬鹿なぁあああああああああああああ!」

女神が真っ青な顔になって怒鳴っていた。

「私の極大魔法がかき消されるなんてぇええええええええええええええええええ!貴様ぁあああああ!どんなイカサマをしたのだぁあああああ!」


「知らん!普通に中級のディスペルだぞ!そんなレベルでかき消されるお前の魔法が悪い!」


本当にこの女神は・・・



弱い・・・


弱過ぎる・・・



まだ王女様の方が強いと思うよ。


「さて、次は何をする?」


俺が挑発すると今度は真っ赤になってギリギリと歯軋りをしているよ。ホント忙しい女神だな。

感情もセーブ出来ない状態だから、全身から大量の魔力が溢れている。

まぁ、それが目的だけどな。


「もう許さない!絶対に地獄に落としてやる!」


「良いのか?こんなに魔力を垂れ流していても?そろそろ足下をすくわれるぞ。」


「何を訳の分からない事を言っている!」


突然、女神がピクンと震えた。


「いやっ!貴様は誰だ!や、止めろ!この私に何をする!」


ガクンガクンと震えていたが、ピタッと動きが止り糸の切れた人形のように崩れ落ちた。



「終わったぞ!」


カーミラの声だ。

声が聞こえた方に振り向くと・・・



「へ・・・」



(何だこの物体は?)



人間の大きさくらいある肉まんに、短い手足と大きな翼が付いた意味不明の物体を、カーミラがその翼を握りながらズルズルと引きずっていた。


「おい・・・、コレって女神?」


「信じられんがそうじゃ・・・」


(マジかい・・・)


「コレって超肥満体なのか?これじゃ男遊びどころか、どんなデブ専でもご遠慮願いますのレベルの豚だな。いや、見た目通りに肉まんだよ。」

依り代であるカトレアを見た。

「絶対に女神詐欺だよな・・・、女神って言えば美人の代名詞だしなぁ・・・」


「妾も此奴がこんな姿だったのを見て最初は信じられなかったぞ。こんな体じゃからな、依り代がいないと何も出来んどころか動く事もままならんだろうし、しかも下界からの貢ぎ物で贅沢三昧だ、取り返しのつかないレベルまで太ってしまったのだろうな。妾の力でも持ち上げるのは気持ち悪かったぞ。」


いやぁ~、見れば見るほどに肉まんソックリだよ。

白い肌に白い服。

全身が黄色か茶色だと『〇ん〇』に見えたりして?


「ぶふっ!」


いかん!ちょっとツボに嵌ってしまって軽く噴き出してしまった。


「これがわたし達が崇めていた女神・・・、嘘でしょう?」


王女様もこの女神を見て信じられない顔で呟いていた。


(俺だって信じられんよ。)


だけど、カーミラが女神の魔力を追って捕まえたのだ。本物の女神に間違い無いだろう。

魔力を使わせる為に散々と挑発したのだ。俺もこの肉まんからの魔力とさっきまでのカトレアから発せられていた魔力が同一なのに間違いはない。


「は、離せ・・・、私は女神セイレーンだぞ。私に逆らったらどうなるか?」


「ん?」


何だ?肉まんの頂上部に青い髪の毛?が生えているけど、その下(多分顔だろう)の窪んだところが光った気がした。


「ふふふ・・・」


おや?肉まんが何だか自信満々な声だぞ。


「魔王よ!貴様は男だ!私の魅了ボイスは依り代からだと効果は無いが、直接聞かせると100%私の虜になるのだ!いくら強くても無駄だ!私がセイレーンと呼ばれている所以がこの声での魅了だからな。きゃはははぁああああああああ!」


ブルンと肉まんが震えた。


「魔王よ!私を助けるのだ!そしてこの女どもを殺せぇえええええええええええええ!」



「嫌だね。」



何でこんな事をしなければならん。

それ以上に女神の下僕になるなんて死んでも嫌だよ。まだカーミラの下僕の方がましだ。


「魔王様よ・・・」


どうした?カーミラの視線が熱っぽい!


(ま、まさか・・・)


「ふふふ・・・、妾の下僕ならOKとは・・・、どんな事をさせようか?はぁはぁ・・・、いろんな・・・、えへへ・・・そう思うと・・・」


パタン・・・


「あっ!」


カーミラがプルプル震えながら鼻血を噴き出して倒れてしまったよ。一体どんな妄想をしたのだ?

まぁ、碌な妄想ではないことは確実だろう。


(いや!それ以前に俺の心を読むなよぉおおおおおおおおお!俺の心にもプライパシーが欲しい。)


「な、何で私の魅了ボイスが効かない?」


おっと、今度は肉まんが震えている。

ブルンプルンとまるで真っ白なプリンみたいだな。食べたら絶対に食中毒確実だろうけど・・・


「どうしてなのよぉおおおおおおおおお!私は女神なのよ!何でゴミの魔族ごときの男に私の力が効かないのよ!」


「はぁ~」


とことん上から目線の女神だよな。

いい加減どちらが上の存在か分からせておかないと煩い。


「おい!クソ女神、何で効かないのか良く見てろよな!」

あんまりこの姿にはなりたくなかったけど、こいつには冥土の土産だ。よく見てろよ!

「これが俺の本当の姿だ!」

精神を集中し魔力を最大限に高めた。


「そ、そんな・・・」


あらら、王女様の方が慌ててしまったかもな。


「ば、馬鹿なぁああああああああああああ!」

少し遅れてクソ女神が叫んだ。

「その背中の3対6枚の真っ白な翼は・・・、天界の伝説の・・・、神に逆らって堕天した天界最強の天使ルシ・・・」



バクッ!



GYUGAGAGAGAGAGAAAAAAAAAAAAAAAAA!


いきなり女神が巨大なドラゴンに飲み込まれてしまった。


「おっ!無事に生き返ったみたいだな。」


俺の目の前には王女様が倒した銀色のドラゴンが鎮座している。

しかし、ジッと座って俺を見ているだけで何もしてこない。

どうやら、俺が生き返らせた事が分かっているみたいだ。そしてあの女神は敵だった事も理解していたのだろう。だから一息に丸飲みしたのだろうな。

さすがはエンシェントドラゴン、知性は神に匹敵すると言われているだけある。


だけどな・・・、あの脂肪の塊を食べて大丈夫だったのだろうか?

アレはかなりの勇気がいるぞ。

まぁ、脂身だらけの物体だから咀嚼せずに丸飲みしたのはナイス判断ではないかな。

だけど食中毒にならない事を祈る。


ドラゴンが突然輝き始めた。

元々が銀色に輝くシルバードラゴンだったし、更に煌びやかになったかもしれないな。


更に輝き、目を開けられなくなってしまう程に眩しい。

あの巨体がみるみるうちに小さくなり、俺と同じくらいの大きさまで小さくなって輝きが消えた。


「はい?」


俺の目の前にいたのは・・・


「「魔王様ぁああああああああああああ!見るなぁああああああああああ!」」



「げふぅううううううううううう!」



王女様と目を覚ましたカーミラのツープラトンアッパーが俺の顎に炸裂し、十数メートルは打ち上げられただろう。

そのまま頭から地面へと落下し、頭が埋まった記憶を最後に意識を失った。



(お前達、見事な連携だったぞ・・・)



ガクッ・・・






「はっ!」


(ここは?)


知らない天井だ・・・


「そんな訳あるか!」


カーミラに突っ込まれてしまったけど、今の俺はカーミラに膝枕されている状態だった。

2人からの攻撃を受け見事に気絶してしまった俺だけど、カーミラが優しく俺を膝枕で介抱してくれていたのだな。


タラリ・・・


背中に嫌な汗が流れる。


「心配するな、妾は何もしていないぞ。ずっと膝枕をして頭を撫でていただけじゃ。まだ2、3分しか経っていないしな。しかしじゃ!魔王様の顔が目の前にあってどれだけこの唇を奪いたかったか!妾の鋼の意志で魔王様の貞操は守ったからな、安心しろ。楽しみは後に取っておくものだからな。ふふふ・・・」


ニヤリとカーミラが笑い舌なめずりをした。


(今夜はどうやって逃げようか?)


そんな事ばかりを考えてしまうが、俺の考えは間違っていないと思う。


「それにしても、この魔王様の翼は・・・」


おいおい、俺の翼に頬ずりするな!

あっ!よだれが付いているぞ!


「ふふふ・・・、妾が生まれ変わってまで生き永らえただけあった。こうして5000年前に失ったあなたをやっと見つけられたのだからな。妾の永遠の想い人、ルシファー様よ・・・」


(やっぱりそうか・・・)


俺がこの力に目覚めた時、俺は全てを思い出した。

母親を亡くした時に、わが身の不甲斐なさを呪った瞬間に俺の魂の記憶が蘇った。

同時に悪魔でありながら神の力をも使えるようになった。

そして、今のカーミラの面影に思い当たる人物を思い出した。


「カーミラ、いや、ミカエル・・・」


ポタポタと俺の頬に涙が零れてきた。

あのカーミラが涙を流しながら俺を見つめていた。


いきなり唇を塞がれた。


しばらくするとゆっくりと唇が離れる。

とても嬉しそうにカーミラが微笑んでいた。


「5000年前、あなたが無実の罪で天界から追放されてからずっと・・・、追放される5000年前からあなたを見て一目惚れして結ばれる事を夢見て1万年・・・、とうとう、ついに・・・」


うわぁ~、やっぱりそうだったかぁ~~~

カーミラがずっと俺を追いかけていた理由がスッキリ!ハッキリ!したよ。


カーミラは俺を追いかけて転生したのは間違いない。

永遠に俺を探すた為に不死族の中でも最強の真祖のバンパイアになってまで・・・

わざわざ俺を追いかけて天界を捨てなくても、お前なら立派な神になれたのにバカだよ。


ストーカーにヤンデレを拗らせて1万年、最強のヤンデレが誕生していたかぁあああああああ!


(カーミラ、その執念に負けたよ・・・)



「ん!」


ちょっと待ったぁああああああああああああああ!


俺の記憶が確かなら・・・


ヤバイ!ヤバイ!


人生最大の危機を感じている・・・



確か・・・、ミカエルって?




アイツは男の天使だったぞぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!




かつての俺に惚れたのは俺がまだ天界にいた時だし、ミカエルもカーミラに生まれ変わる前だったよな?


チラッとカーミラをみると・・・


ポッ!と頬を赤く染めている。とても可愛いしカーミラの新しい一面を見た感じだ。


「ふふふ・・・、妾の始めてのキス、最高に蕩けそうだった。天にも昇る気分というのはこんな気持ちなんだな。」


今のカーミラは間違いなく女だ。それは確かだろう。


しかしだ!ミカエルの時から俺に惚れていたって?



あいつは同性愛者だったのかぁあああああああああああああああ!



恐ろしい記憶を思い出してしまった。そんな記憶なんか思い出したくなかったよ。

だけど、ミカエルは可愛い女の子のような天使だったな。そのまま成長して綺麗になったら今、目の前にいるカーミラのような感じになっているかも?


(とほほほ・・・)


カーミラがそっと俺の頬を撫でニコッと微笑んだ。


「妾が生まれ変わる前は男だったのは別に関係無いぞ。男が男に惚れて何が悪い。愛があれば性別は関係無いのじゃ。まぁ、妾が生まれ変わった時は、其方と後ろ指を差されずに添い遂げられるように女に生まれ変わったから、堂々と妾を妻として娶れるからな。」




「もう2度と離れない。愛しているぞ。」




今のカーミラは間違いいなく生物学的にも女だろう。性転換手術で女になっていないよな?


色々と諦めるしかないようだ。

俺も年貢の納め時か・・・




「魔王様って実は神様だったのか?この翼は魔族の翼じゃないからな。」


今度は王女様が俺の顔を覗き込んできた。


「いや、俺は普通に魔族だぞ。まぁ、本当は魔族と人族のハーフだけどな。多分、人間の血の中に天使の血が混じっていて、それが覚醒したのだろう。」


「そういう事か・・・」

ウンウンと王女様が頷いている。

「見た目が人間と変わらないから、これで納得した。私にも魔王様との子が成せるのだな。安心したぞ。」

頬に手を当ててポッと恥ずかしがっている。


何なのだ!さっきから王女様の仕草がどれも可愛いから、ドキドキが止らん!

非常に対応に困る!


(王女様の女子力・・・、侮れん・・・)


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