4話 王女様危機一髪
SIDE シルヴィア
情けない・・・
何て私は情けないのだろう・・・
魔王を倒すと息巻いて魔国へと攻めた。
この王国と接している魔王の中でも1番弱いと言われている悪魔王の魔王が統治している領地のはずが・・・
門番の悪魔にあっさりと負けてしまうなんて・・・
何度も戦っても簡単に負けて返り討ちにされてしまった。
仲間はもっとあっさりと負けてしまって使い物にならない。まぁ、あいつらは金で地位を買った連中ばかりだから全く当てにしていないけどな。
頼れるのは自分自身!
女の幸せを捨て、勇者として!王国の剣として頑張ってきた!
同年代の女子達の恋バナも聞き流して!
私だって!
本当はこんな事などしたくなかった・・・
普通の女の子として可愛いドレスを着て、カッコイイ男性とのラブロマンスに憧れて・・・
私の周りにはいつの間にかそんな浮いた話すら無くなった。
侍女達の陰口も聞こえている。
『鉄の処女』『行き遅れ姫様』『男を選び過ぎ』『実はレズ』『残念王女』
等々の・・・
私だって!普通に恋に憧れる女の子だ!
まぁ、今は20歳だし、15~16歳で結婚する王族や貴族の女子に比べれば確実に行き遅れだ。
それでもだ!燃え上がる恋というものをしてみたい!
でも・・・
一緒にいるパーティーの男連中は私の体を狙っているのは視線で分かる。分かりやすい程にスケベな視線で見てくる!王城にいる時もだ!どの男も同じ視線だ!
こいつら以外の貴族の男共もいやらしい視線で私を見てくる。本来、私は王女だし城内ではドレスを着るはずがだが、男共の視線が嫌でいつも鎧を着るようになった。
どの男もいつもあの手この手で私をナンパしてくるけど、全くときめかないどころか嫌悪している。
正直、コイツ等とはパーティーも組みたくないし、城にいる事自体が苦痛の場所と思っているのが本音だ。
そんな奴等に私の貞操を散らされたくない!
私を大切にしてくれる人、そんな人に出会う夢をいつも見ている。
もう勇者なんて嫌だ・・・
誰か私を連れ去って・・・
私をこの地獄から解放して・・・
「うっ!」
頭が!
【何を弱音を吐いているのですか?あなたは私に選ばれた使徒ですよ。】
(女神セイレーン様!)
【あなたはこの世界を救う宿命の戦士です。あなたが頑張らないとこの地が魔族に奪われ地獄に変わるのですよ。そんな未来になっても良いのですか?】
(そ、それは!)
【そうですよね。あなたが頑張らないと無垢な国民が犠牲になりますしね。あなたが頑張って魔族を蹴散らせばこの国も豊かになるのですよ。魔族は滅ぼさなくてはね、あなたも分かっていますよね?】
(は、はい・・・、それは・・・)
【分かればよろしいです。今のあなたではあの魔族に勝てませんから、新たな修行場を選定しました。Sランクのダンジョンですが、あなたなら必ず困難を乗り越えるでしょう。期待していますよ。】
(女神様のご期待に添えるよう頑張ります。)
【ふふふ・・・、頑張って下さいね。】
女神様の声が聞こえなくなった。
「はぁ~、また修行の日々か・・・、あのクソ連中と一緒だとなぁ・・・」
気分がとても重い。
だけど、今の私の実力ではあの魔王城の門番ですら勝てない。
そして・・・
そいつの後ろに控えている四天王や悪魔王はどれだけの強さなのか・・・
【ホント使えない勇者ね・・・、そろそろ次の勇者を選定しなければいけないかも・・・】
うおぉおおおい!
本音が聞こえたぞ!私は用無しか?!
何も声が聞こえない。
女神の野郎!無視かい!
だけど、生れてから20年・・・
私はずっと勇者として頑張ってきた。女の幸せを捨てて・・・
それがそんな仕打ちだって!
悲しくなってきたら、あの門番の悪魔の顔が浮かんできた。
あいつは悪魔族なんだろうけど、なぜか見た目は我々人族にソックリだ。本当に悪魔族なんだろうか?
しかし圧倒的な強さで私の力では全く歯が立たなかった。
魔族は人族の女は食料か性奴隷としか思っていないはずだ。
最初に負けた時に私はこの魔族に陵辱されると覚悟した。そんな事をされれば舌を噛み切って死ぬつもりだった。
それなのに・・・
彼は負けた私に何もしなかった。
それどころか、毎回傷まで直して(まぁ、あの後ろのスケベ共は放置だったけど)くれた。
10回以上は戦っただろう。
毎回負けても彼は何もしなかった。
そして戦う度に私の心の中に不思議な感情が段々と湧き上がってきた。
また会いたい・・・
私が負けた時は悲しそうな目で私を見てくれた。
多分だが、女神の神託で嫌々戦っている私の気持ちを察知してくれたのかもしれない。
私がこの地獄から抜け出したいと願う気持ちが、そうやって都合良く思い込んでいるのかもしれない。
もしかして?
私のこの気持ちは?
違う!私は勇者だ!
この国を!世界を救う宿命がある!
例え女神に踊らされていたとしてもだ!
私が頑張らないとこの国が滅ぶのは間違いない!
だけど、また思考が最初に戻ってしまう。
そんな答えの出ないループをどれだけ繰り返せば良いのだろう。
Sランクダンジョンの近くにある拠点としている街へやって来た。
「やっぱり女神の呪縛から逃れられないのだな・・・」
宿に入り部屋に入り寛いでいた。
明日から本格的にダンジョンの攻略を始める。
「コイツ等は本当に役に立たない・・・、国の重鎮の息子でなければ、私がこの場で斬り殺すのだが・・・」
隣の部屋からアイツ等のハッスル声が聞こえる。
勇者パーティーなんて形式的なものだ。
これといって才能も無く、私にとってはお荷物以外に何者でもない。
騎士団長の息子であるナイトのボンクーラ。
女神セイレーンを祀る教会の教皇の息子であるヒーラーのノウナッシー。
宰相の息子である魔法使いのスネカジ。
その3人が連れてきた自称賢者の女カトレア。
まぁ、この女は実際に戦闘で戦うのを見た事が無い。
いつもあの3人の後ろで見ているだけしかしていないのだ。
あの女の本当の役割は分かっているけどな。
前回までは私に遠慮していたのか、宿自体も私とは別々にとっていた。
しかし、今回は遠慮せずに同じ宿に泊まり、奴らは隣の部屋で4人一緒に一部屋で泊まっている。
その目的は男との経験が無い私でも分かる。男と女の情事の知識は王族の姫としての教育で知っている。
毎晩毎晩飽きもせずに頑張るものだ。それだけの性欲があるからバカ息子達は私の事も好色な目で見てくるのだろう。
私の数少ない信用ある密偵の報告では、あのカトレアは単に娼婦あがりの女との事だ。確かに美人でとても男好きの感じがする女だし、旅に出るアイツ等3人の性欲処理に同行していると内々で聞いている。
しかもだ!今までは4人で私よりも高級な宿に泊まり食事も贅沢三昧をして、その経費は全て国が払っていた。
我が国の国民が頑張って収めた税を、何を無駄に我が身の欲望に使っている!
今回は遠慮しないで私にも痴態を見せつけているし、私をその気にさせようとしているのか?
アホらしいし、気持ちが悪くてサブイボが出てくる。
今回に限ってどうしてこんな事をするのか訳が分からないが、本当に殺してやりたい・・・
(我慢だ・・・、今は・・・)
国の重鎮の息子達でなければ・・・
そして、父である国王も今では贅沢で怠惰な生活に溺れ、政はほとんどが宰相とその側近が牛耳っている事も知っている。それで自分達の箔を付ける為にも息子共を私と一緒に行動させ、勇者パーティーと言うふざけた名前まで付けて、私をプロパガンダとして国の威光を上げるのに利用しているのも知っている。
父だけでない!
私の兄上達も宰相の計略で骨抜きの傀儡と化している。
民が困窮している事もお構いなく、王家やその取り巻き連中が贅を凝らした生活をして、更に民が困窮する悪循環に陥っているのに・・・
私には女神様の神託でしか生きる事が出来ないのだろうか?
何が勇者だ!
何の為の勇者なのだ!
あまりの怒りと無力感でギュッと握った手から血が滴り落ちた。
「はぁはぁ・・・」
目の前には巨大な銀色のドラゴンの死体が横たわっていた。
「凄い・・・」
相変わらず私の後方で何もしない馬鹿共が感嘆の声を上げている。
私でも驚きだった。
目の前のドラゴンはドラゴンの中のドラゴンでもあるエンシェントドラゴンの1体であり、Sランクダンジョンに相応しいボスキャラでもあった。
そんなモンスターを私1人で倒せるんて・・・
(信じられない・・・)
確実に私は強くなっていた。
(もしかして?)
私が強くなったのはあの門番のおかげ?
思い出すとそう感じる。
私の剣の振り方や構えから始まり足さばきもそうだ、何かにつけて色々とダメ出しをされていた覚えがある。
その指摘があまりにも頭に来て何度も突っかかっていた。
その度にボロボロにされ負けていたけど、決して私の命を取る事も無かったし、怪我も回復させてくれた。
そのおかげか今回のドラゴン戦では以前よりも体が軽く、自分の思った技がスムーズに出てくれた。
確実に私は強くなっていた。
(本当にあの門番は何者だ?)
そんな事を疑問に思っていたが、私の後ろにカトレアが近づいてきた。
今まであのバカ達の後ろにいるだけで何もしなかった女がだ!
ニコッと微笑んで水筒を渡してくれた。
「王女様、お疲れ様でした。」
(何だ?その笑顔が気持ち悪い。何を考えているのだ?)
しかし、喉が渇いていたので水筒を受け取り中の水を飲んだ。
「うっ!」
(こ、これは!)
体に力が入らない。聖剣も握れなくなり落としてしまった。
しかも、全身の鎧がとても重く、立っていられなくなってしまい、その場で倒れてしまう。
「き、貴様・・・、何を・・・」
カトレアがとても妖艶な顔で私を見ていた。
こんな顔は見た事が無い。
「王女様、本当にお疲れ様でした。今回の戦いをもって勇者を辞めてもらいますね。勇者はこの世でたった1人しか存在が出来ません。ですから、新しい勇者を選定するにはね・・・」
カトレアがニヤリと笑った。
「死んでもらいますね。」
この女は何を言っているのだ?
(はっ!)
「貴様はもしかして?女神様・・・」
「ふふふ・・・、よく分かりましたね。今の私は女神セイレーン、この女は私の依り代としてずっとあなたを見ていたのですよ。まぁ、天界では男遊びも出来ないので、こうしてこの女に乗り移って楽しんでいますけどね。こんな快楽を覚えると止められませんね。男はバカばっかり、ちょっと色気を見せればホイホイと私の思うがまま、こいつらも私の魅力に骨抜きですよ。」
(こいつは本当に女神様なのか?)
「本当ですよ。私はれっきとした天界に住み、この世界の管理を任されている3姉妹の女神の1人ですからね。まぁ、残りの姉達は他の国を見ていますが、私はこのバーミリオン王国を管理しているのです。天界は本当に暇で暇で、こうしてあなた方人間を駒にして戦争ごっこを行って暇潰しをしているのですよ。」
(私の心を読むなんて・・・、これが我々が崇めていた女神様だっただと?そんな事で戦いを起こしていたのか!)
「だけどね、あなたはちょっと面白くないのです。真面目なのは良い事かもしれませんが、何事も限度があるのですよ。あなたは私の駒らしく無様に立ち回ってくれないと面白くないです。このダンジョンであなたは儚く命を散らせてしまう予定だったのに・・・、そして新しい勇者を選定して、私の理想の駒を作る計画が・・・、何でエンシェントドラゴンに勝ってしまうのかな?私の計画に沿わないってね・・・」
「そうなると、使えないおもちゃは破棄するしかないでしょう・・・」
ゾッとする目で私を見つめています。
だが、体が痺れて指1本も動かない!何も出来ない女だと思って油断した私が馬鹿だった。
「だけど面白い趣向を考えましたわ。あなたは最初からこのダンジョンで死んでもらう予定だったから、私は遠慮しないで彼らと楽しんでいたのよ。あなたが帰る事がないから何も言われる事が無いから最高の贅沢と快楽を味わっていたのにね。」
ペロリと舌舐めずりをして楽しそうに私を見ている。
いけない!この笑顔は非常にマズイ!単に私を殺すつもりではない!
パキィイイイイイイイン!
「どうして!」
私の鎧が砕けてしまった!
今の私は鎧の下に着込んでいる下着と薄い服だけだ!
(動け!動け!私の体よ動け!)
「ふふふ・・・、無駄ですよ。今の体は依り代といっても普通に女神の力は使えますからね。邪魔な鎧は壊しました。動けないあなた・・・、薄い服と下着だけしか纏っていないあなた・・・、あの男達の視線を見れば分かりますよね?抵抗も出来ない状態で男達に陵辱されるあなたはどんな悲鳴を上げてくれるのでしょうね。あぁぁぁ・・・、ゾクゾクするわ。」
カトレアが涎を垂らして上気した顔で私を見ていた。
ザッ!
(足音?)
「お前達!何をする!」
「王女様、これが俺達が一番望んでいた事だよ。」
ノウナッシーが舌なめずりをしている。
「女神様の神託が父上にあってな、もう今の勇者は要らないって・・・、だから俺達の好きにしていいとな!」
ノウナッシーとスネカジが私の手足を掴んでいる。ボンクーラが私に跨がって服を破り始めた!
(こ、こんなの!)
上着が全て剥ぎ取られ上半身があらわにされてしまう。
コイツ等の欲望に満ちた顔が私の胸をジッと見ていた。
「へへへ、こいつはたまらん・・・、カトレアよりもデカい胸だな。」
痛い!
ボンクーラが私の胸を乱暴に揉んでいる!
誰も触らせた事も無いのに!こんなクズ男に陵辱されるなんて!
体が痺れて何も出来ない。悔しくて涙が出てくる。
「きゃはははぁああああああ!王女様、どう?コイツ等はねぇ、ずっとアンタを抱きたかったのよ。私を抱く時も姫様、姫様って、私とアンタを抱き比べたいっていつも言っていたわ。あんたはどうせここで死ぬのよ。せめて最後くらいはコイツ等の役に立ってね。アンタの心が壊れる様が最高の楽しみだわ。」
「俺が姫の処女をもらうぞ。」
3人の中で親の地位が一番高いスネカジが私の下着を剥ぎ取った。
(誰か!誰か助けて!)
下着も全て剥ぎ取られ全裸になってしまった。どれだけ体に力を入れようが細かく震えるだけで力が全く入らない。
地面に仰向けで倒れて動けないでいる私を、3人がニタニタ笑いながら見ていた。
涙が止まらない。
どうして?私がこんな目に遭わなければならないの!この国の為に頑張ったのに!辛い修行も女の幸せも捨ててまで頑張ったのに!
(これが私達が崇めていた神だったの?)
私の信じていた事は単に神々の暇つぶしの為?
その為にどれだけの国民が犠牲になったの?
もう信じられない・・・
だけど!こいつらから辱めを受けるくらいならいっそ!
首から上は痺れていないから、舌を噛んで自害は出来る!心が壊れる前に死んでやる!
「さぁ、そろそろいただくとするか。」
スネカジが私の上に覆い被さってきた。
「姫様、いつも凜々しい顔が涙でグシャグシャだな。へへへ、心配するなよ。すぐに気持ち良・・・」
舌を噛みグッと力を入れようとした。
ドン!
「へぶぅうううううううう!」
いきなりスネカジが吹き飛んでゴロゴロと地面を無様に転がっていた。
ファサァァァ
私の体にマントが掛けられ、いきなり抱き上げられてしまった。
突然の事で舌を噛む事すら忘れてしまった。
(何が起きたの?)
「あ、あなたは!」
私を抱いていた人の顔が見えた途端にまた涙が流れてくる。
(どうして彼がココに?あの門番の彼が?)
「王女様、安心しろ。この俺が来たからには全てを終わらせてやる。そこにいるクソ女神にもちゃんとお仕置きしてあげるからな。俺の平穏な生活の為にもこのクソ女神はぶっ殺す!」
彼は悪魔なのに・・・
どうして?彼の逞しい腕に抱かれていると心が落ち着く・・・
彼の横顔がとても神々しく見えるなんて・・・
私のドキドキが止りません!