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3話 (続)会議なんだけど・・・

カーミラのおかげで脱線してしまった、元の議題に戻そう。


「それでは妾が報告を行う。」


(何だ、次はカーミラかい・・・)


「魔王城や城下町のインフラ整備はかなり進んでいる。ウイッチ族のゴーレム技術部が頑張っているおかげだな。そして空が飛べるガーゴイル族も協力してくれるおかげで物流がとても楽だ。」


そして俺をチラッと見る。


「それにしても良く考えたものじゃ。土魔法で建物や城壁を作る事は昔からしていたが、それだとどうしても魔法に適性のある者しか現場に行けなかったからな。こうしてブロックと言う物を作る者、それを運ぶ者、現場で組み立てる者、見事な分業だな。妾も長年生きていたが、これだけの効率の良い作業は初めて見たぞ。さすがは妾の見込んだ旦那様だけある。」


(おい!いつの間にお前の旦那になった!妄想も大概にしろ!)


どさくさに紛れて変な事を言うなよ。


「これは人間の国から学んだ事だ。人間は俺達に比べて非力過ぎるからな。それなのにあんな立派な建物や町を作っているんだ。それを真似しないと勿体ないだろう?」


「そうだな、妾達は人間を虫けらと同等の存在とだけしか見ていなかったぞ。初めて聞いた時は、そんな技術もあったとは驚きだったな。」


カーミラがうんうんと頷いている。確かにヤンデレに間違いないが、こういう時の彼女は本当に頼りになる。頭が固く人間は奴隷か食料として見ていない連中が多い中、彼女は俺の話をしっかり聞いてくれるし、いろいろと助言もしてくれる。


(本当にヤンデレさえなえれば・・・、本当にな!)


こいつはいきなり突然病気になって、目が据わって涎を垂らしながらじりじりと近づいて来るんだよ!あの襲われ方が本当に怖いからあまり近くに寄らないようにしている。


「それと、本人たちの希望であのバーミリオン王国の王都にサキュバス族が出店した娼館だが、恐ろしいくらいに流行っているぞ。あっちの国の男はどれだけ女に飢えているのだ?まぁ、おかげでサキュバス族も男の精を搾り取れるし、男も喜ぶ、まさにウインウインの関係だな。ここまで繁盛するとは予想外だったし、人間の国の外貨もかなりの入ってきたぞ。この国に不足している物資を輸入するのも助かっているな。この領地は他の魔王の領地に比べ、かなり潤っているのは間違いない。」


あのサキュバス族だしな、彼女達は種族特性で全員がとてつもない美人だ。翼や角は隠す事も出来るから、人間に変化されると魔族とは見えないだろう。そんな美人集団の娼館だ、繁盛しない訳がない。

説明を終えたカーミラが嬉しそうに俺の顔を見ている。

この時の顔は本当に綺麗だし、思わず見惚れてしまって顔が赤くなっていた。

俺の反応が分かったのか、更に嬉しそうにして、1枚の資料を俺に渡してくれた。


「ほれ、娼館の支配人から常連客のリストをもらったが、ちょっとあの国は大丈夫か?と心配になるがな。」


そう言って俺に向かってニヤニヤした表情で資料をくれた。

目を通すと・・・


「ホント、この国は大丈夫か?」


俺も思わず声が出てしまう。


娼館の一番お金を落とす客が国王だって?


(マジかい?)


何度も資料を確認したが、やはり国王だった。しかもだ!お忍びで来店するならともかく、息子3人を連れての大豪遊ときたものだ。まぁ、息子は誰1人も結婚していないからギリギリセーフかもしれんが、いや!ちょっと待て!確かみんな婚約者がいたよな?そんな連中が風俗遊びだって?


(これじゃいつかは国が傾くぞ・・・)


サキュバス族のテクニックにメロメロになって通い詰めているからなのか、最近の報告で国王と嫁さん達の関係は最悪だとあったよな?このままだとあのバカ息子達も婚約解消になったりして?

しかも、国庫のお金をかなりつぎ込んでいるから、あの国の財政も厳しいかもしれん。


人間、身を滅ぼすのは『酒・女・博打』と言われているけど、この国は女で滅ぼすかも?


ある意味、サキュバス族は恐ろしいよ。

権力者達を女に溺れさせるんだものなぁ~

『傾国の美女』ならぬ『傾国の美女達』なんかじゃないかな?

バーミリオン王国以外にもサキュバス族経営の娼館を出店したらどうなるか?


それだけで人間の国はいくつか滅びたりして?


(ま!そんな事は無いと思うけど、万が一もあるかもしれん・・・、カーミラには自重するように話をしておこう。)



ふと、俺に負けて涙を滲ませていた王女の顔が浮かんできた。


(あの王女が父親や兄貴達の痴態を知ったらどんな顔をするか?)


彼女は俺から見ても相当なクソ真面目人間だ。

そんな事を知ったらショックを受けるのは間違いないだろうな。自分が血の吐くような思いで訓練をしているのに、親兄弟は血税を自分達の快楽で湯水のように使っているのだ。


アイツらの首が物理的に飛ぶのが想像出来た。


(ホント、あの国はもう終わっているんじゃないのか?アホばっかだしな。)



「それでは、次は私、シャドウがご報告させていただきます。」


シャドウは四天王の中でも諜報に特化した悪魔だ。

自分の影の中に潜む事も出来るし、『影移動』といった影から影へと移動できるスキルを持っている。

相当に気配を読める強者でない限り、こいつの気配を感じ取れる事は出来ないだろう。

しかも、いくつもの自分の分身を生み出す事も出来るし、この世界に散らばっている分身から我が領地の内外の情報を集めてくれるので、非常に大助かりだ。

魔国はまだ情報戦の大切さを分かっていないようだが、人間との交渉に関しては情報が一番ものを言う。どれだけ相手の弱みを握って交渉のマウントを取るか、必ずしも肉弾戦で戦うだけが全てではないのだよ。

それに、彼はアサシン・マスターの称号を持っているだけあって暗殺も得意である。まぁ、最近は暗殺なんてしないけど、相手の枕元にいつの間にか弱みを書いたメモを置いて、ビビりまくっている姿を見るのが楽しいと言っていたな。


「最近は魔王様のおかげで我が領内の治安はとても良くなっています。少し暇すぎて困りますが・・・」


そう言って俺を見るとニヤリと笑う。


「魔王様、カーミラ殿の言っていましたバーミリオン王国ですが、少し私が引っ掻き回しますか?愚王にふさわしい舞台を作ってさしあげますが?そして魔王様があの国を影から支配する。そのようなシナリオもアリですね。」


「ちょっと待ってくれ。このままでもそんなに遠くない未来にあの国は潰れるだろう。報告にあった度重なる増税に国民が逃げ出していて、隣の教国への難民がかなり増えているとの事だったな。」


「左様です。」


シャドウが恭しく頭を下げた。


「ふむ・・・」


まただ・・・、あの王女の顔が浮かんでくる。あの国はどうでもいいけど、あの王女だけでも助けてあげたいと思っている俺がいる。

人間を気にするなんて、俺に流れている母親の血の影響かもしれないな。


どうせなら、さっさとあの国を潰すか?

国王と馬鹿息子達を失脚させて、あの王女を女王にすれば良いかも?

ついでにあの王女を煽らせている女神も黙らせれば完璧だな。


(よし!俺の平穏な生活の為にあの国は潰す!)


そうと決めれば・・・


「カーミラ!」


「何じゃ?」


「お前の管理している種族にインキュバス族がいたな?サキュバス族とは正反対のイケメンだけしかいない種族がな。」


「そうじゃが、そいつらがどうかしたか?」

突然カーミラがニヤリと笑った。

「そういう事かい?」


「どうやら分かったようだな。」


「魔王様の考えは分かったぞ。バーミリオン王国にインキュバス族の店を出すつもりだな。シャドウから報告も合せると、王族を含め上流貴族の男どもはサキュバス族にゾッコンじゃ。当然、そいつらの妻共は相手にされていない状態じゃな?」


「正解だ。さすがはカーミラだ、頼りになる。」


カーミラがとても嬉しそうだ。

さっきまで返り血だらけの姿だったのに、いつの間にか肌で血を吸収したのか元の綺麗な状態に戻っていた。

時々こんな光景を見るのだが、カーミラの七不思議の1つと思っている。

俺に負けたが、あの時は本気だったのか?


謎だらけの女だよな。


「娼館と違って、インキュバス族の店は肉体関係の方は無しに徹底する。そして、女性客はひたすら持ち上げろ。惚れさせるのも一つの手だな。」


「その心は何ぞや?」


「女どもにはかつての恋心を甦らせるのだよ。イケメン軍団に言い寄られてみろ、自分がお姫様になったと思うかもしれない。勘違いして自分に気があるかもしれないと思うかもしれない。インキュバス族は女の扱いが上手いからな。その気にさせて貢がせるのさ。貢げば貢ぐほどに相手は自分に気があると思い込ませる。下心のある者ほど簡単に引っかかって貢ぐのは男も女も同じだろう。特に夫婦仲が悪い貴族の女はイチコロだろうな。」


そしてカーミラとは別の男を見る。


「シャドウ!」


「は!」


「お前は特に夫婦仲の悪い貴族連中を調べ上げろ。その資料を元にインキュバス族の接客の作戦を考えろ。」


「畏まりました。」

シャドウがニヤリと笑った。

「これは面白くなってきましたね。そう遠くない内に国を傾かせますよ。ふふふ。楽しみです・・・」


「魔王様よ、エグいことを考えるな。」


カーミラが俺を見てニヤリと笑う。


「いや、別に大した事は考えていないぞ。男共がアホ過ぎたから女連中も遊んでも良いと思っただけだ。ここまで腐った国だから出来る手だけどな。」


「確かにな・・・、だが、あの姫はどうする?上の者でまともな奴はアイツだけじゃないのか?このまま国が滅びてしまうと不憫じゃな。」


カーミラが人間を気にするとは珍しい。

何があったのだろう?


「魔王様、どうした?妾が人間を気にかけるのが珍しいのか?」


ドキッ!


「何で分かる?」


カーミラがニヤッと笑ったけど、何だろう、とても嫌な気がする。


「妾は魔王様の言動に全てを注いでチェックをしているのじゃぞ。魔王様の仕草1つで全てを察する事も出来るようになった。だから安心するが良い。欲求不満になった時は妾がいくらでも相手をしてあげるからな。安心して妾に欲望を吐き出すが良い。」


こいつはそうだ・・・

俺に纏わりつくようになってからはセクハラ発言が多すぎる。

こいつの方が欲求不満が溜まっているのでは?

それこそ、お前の方がインキュバス族に相手をしてもらってくれ!間違いなく女王様扱いになるだろうし、俺はお前にはなびかないからな!


ホント、勘弁してくれよ・・・

もう1人の四天王であるドリアード族のマナが真っ赤な顔になっているぞ。

この子も何でかいつも俺にくっついてくるんだよな。まだ成人前のロリっ子美少女に見えるけど、多分、カーミラの次に年配者に間違いない。

俺に会うまでずっと森の奥にいたけど、植物に関しては一族の中でも右に出る者がいない程に優秀な人材だよ。彼女のお陰で領内の開墾や農耕作業がとても向上しているから、食糧事情も自給自足どころか人間の国にまで輸出が出来るようになった。

しかもだ!その品質は最高で、とても良く売れていたりする。


まぁ、それだけ領内が豊かな土壌になったものだから、あのクソ王国が侵攻してきた理由の1つでもあるんだよな。

豊かではない国にとっては俺の豊かな領地は喉から手が出るほどに欲しいのだろう。開墾する技術も人材もいないから、奪って自分の土地にすれば良いって考えなんて、どっちが野蛮なんだ?

それに、あのクソ女神がもっと貢物をを要求しているみたいだし、バカ国王に跡取りもバカ・・・、ホント、あの国は終わっているわ。


俺は立ち上がりマナの前に行くと小さな頭を撫でた。


「マナよ、いつもご苦労だな。お前のお陰でこの領地は劇的に豊かになったよ。かつてクソ親父が統治していた時みたいに食料を奪い合う事も無くなったしな。街にも笑顔が溢れるようになった。感謝しているぞ。」


「ま、魔王様に頭を撫でられるなんて・・・、最高のご褒美です・・・」


真っ赤な顔で恥ずかしそうに上目遣いで俺を見てくる。


(た、たまらん!可愛い過ぎるぞ!)


照れているマナを見ていると、何か俺の禁断の扉が開きそうだ。


違う!俺は断じてロリコンで無い!それは断言できる!



ただねぇ・・・、マナが可愛い過ぎるものだからねぇ・・・



「ちっ!これをロリコンと言うのだよぉぉぉ・・・」


怖い!怖い!カーミラの視線が怖い!今にも呪われそうな感じだよ。


「ならば!妾も!見ろ!」


シュン!


何だ?


(うっそぉおおおおおおおおおおおおおおお!)


目の前にロリっ子カーミラが立っていた。

腰に手を当てふんぞり返っているけど、何かこの仕草が可愛い・・・

あの妖艶なカーミラが単純に可愛い女の子になるなんて、俺の想像を超えてきたぞ!


「どうじゃ?この姿なら妾に欲情するか?ふふふ・・・、鼻の下が伸びているぞ、もう妾の魅力に陥落寸前だな。魔王様がロリコンだったのは盲点だった。てっきり色気に弱いと思っていたのにな。」


ロリっ子カーミラがニヤリと笑って俺を見ていた。


確かに可愛い!それは間違いない!


(だけどなぁ・・・)


「やっぱりマナの方が可愛いな。」


そう言ってマナを抱き上げると、「嬉しい・・・」と呟いて嬉しそうに俺の胸に頬をスリスリしてくる。



「うっ!」



その光景を見ていたカーミラが四つん這いになって落ち込んでいた。


「妾が、あの乳臭い小娘に負けるとは・・・・」


そしてウルウルした目で俺を見てくる。


(こんな目で見ないでくれよ・・・)


ロリっ子カーミラが泣いているのはさすがに俺にも罪悪感が出てきた。

あの女とは分かっているけど、小さい姿で泣かれるとなぁ・・・


(悪魔の俺だけど、ホント、人間以上にお人好しだよ・・・、自己嫌悪するわ・・・)


「今回だけだからな。」


そう言って空いた方の手でカーミラを持ち上げると、カーミラも嬉しそうにマナと同じように俺の胸にスリスリしてきた。


(こんな仕草は可愛いんだけどなぁ・・・、普段は何であそこまで残念な言動ばかりなんだろうな。」


謎だ・・・




「平和だな。」


シャドウが呟くとシュラがうんうんと頷ていた。


「今の魔王様の統治になってからは、この領内はかつてない程に平和で豊かになった。私やお前は戦いでしか存在意義を見つけられなかったが、こうして平和な中にいるのも悪くないと思っている。」


シャドウも嬉しそうな顔で2人のロリっ子の相手をしている魔王を見て微笑んでいた。


「そうだ。俺達もこんな生き方が出来るとはな・・・、その機会を与えてくれた魔王様には感謝しかない。家族が安心して暮らせる、こんな嬉しい事はないよ。」



「我らが忠義を尽くすお方に間違いないな。」


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