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2話 会議なんだけど・・・

俺は魔王城の門番の真似事をしているが、この国を治めている魔王の1人だ。


魔王の1人というのは・・・

この俺のいる国がちょっと変わっていて、正式な国名は『魔国』と言うのだが、この国には4人の魔王が存在している。

この4人の魔王が国を4つに分割して治めているって訳だ。


・龍族をまとめる竜王と呼ばれる魔王


・獣人族、魔獣をまとめる獣王と呼ばれる魔王


・不死族をまとめる不死王と呼ばれる魔王


そして、悪魔族の頂点に立っている悪魔王である俺だ。


魔王は基本的に種族の中で1番強い者が魔王を名乗っている。俺もクソ親父をぶっ倒してこうして魔王になった訳だが、正直、魔王の仕事は思った以上に大変だった。

まぁ、あのクソ親父や他の魔王のように、『ただ強ければ偉い』『強ければ何をしても許される』と好き勝手出来ればいいのだが、俺はそんな慣習が嫌いだった。


元々、俺は人間の母親との混血で、幼少期は本当にひどい目に遭った。

親父には妻が138人もいたし、最後の妻が俺の母親だった。その母親も親父が隣の人間の国に遊びに行って、たまたま目の前に美人がいたから攫ってきただけのものだった。そして、無理やり親父と一緒に生活をさせられ、俺を身籠って、飽きたからと言って捨てられた・・・


あのクソ親父の血が流れている俺だったが、母親は俺をとても愛してくれた。子供には罪は無いということで・・・

だけど、捨てられてしまって、しかも人間の母親とそのハーフの俺はこの国では最底辺の存在で、俺が小さい頃に病で寂しく亡くなってしまった。


俺は母親をボロ雑巾ように捨てたクソ親父に復讐する為に魔国中を回り、ひたすた強くなるよう徹底的に鍛えた。

クソな親父でも魔王の血が流れている俺はみるみると強くなり、今から5年前、15歳の成人となった時に再び親父の前に現れ、徹底的に叩きのめした。

親父には母親以外に137人の妻がいたけど、子供が出来にくい種族なので親父の子供は50人もいなかった。

もちろん、そいつらも全員叩きのめして母親共々追放したけどな。

今は辺境の地で俺の部下に監視されながら開拓をさせている。少しは働く喜びを覚えて欲しいものだ。


誰にも勝つ事が出来なかった親父を倒した俺はすぐさま魔王として認められた。

こんな簡単に魔王の交代が出来るとは想像していなかった。

ホント、この国は強さが全てと実感した。



だけど!



俺はこの国の慣習を打破したかった。

長い修行の間に色んな人に出会ったが、弱くても良い人はたくさんいた。母さんと底辺の生活をしていた時も、そんな人達は俺達親子を助けてくれた。そのおかげで俺はこうして強くなれたと思うし、人間の国のような民が笑って暮らせる国を作りたいと思った。

魔国は常に上に媚びを売るか、顔色を伺いながらビクビクした生活を強いられていたから・・・


まぁ、ここまでが大変だったし、いい加減にゆっくりとした生活をしたいのが本音だけどね。

自分は働かずに基本的な事は部下に任せるつもりだ。

『君臨すれども統治せず』

人間の国々もこの魔国と同じように君主制がほとんどだけど、エスペランサ共和国が共和制という統治制度をとっている。俺はこの制度を手本にしたいんだよな。

俺はお飾りで十分、だってね、君主だといろんな事を決済しなければならないんだよ。そんな面倒な事はしたくない。

俺の理想の組織が出来上がればそれだけ楽になるからね。


(そう思いたい。)


そんな訳でクソ親父をぶっ飛ばして政変を起こして5年も頑張っていたら、いつの間にか『優しい魔王』と民から慕われてしまっているが・・・

別に民からの好感度を上げる為に頑張っている訳ではないよ。


でもね、少しずつ理想の悠々自適ライフに近づいていると思う。






「さて、今回の報告をしてもらおう。」


俺の前に4人の部下が並んで座っている。

いゆる四天王という存在だ。とても優秀で彼らがいなければ俺の領地の発展はなかっただろう。


「最初は防衛及び外交担当の私から報告させていただきます。」


額に角が生えた鬼神族のシュラと呼ぶ男だ。とってもイケメンでファンがとても多い。

魔王城の俺直属のメイド隊以外のメイドからは、いつも熱い視線を向けられれいる。俺よりも確実にモテていると思う。

彼は鬼系の種族のまとめ役を行っている。

ゴブリン、オーガなども彼の部下で頑張ってもらっている。彼らは戦闘民族なので領地の防衛にとても役に立ってくれているので大変感謝しているよ。


「最近は他の魔王からの侵攻が減っています。バーミリオン王国の戦争に勝った事で他の魔王が尻込みをして大人しくなったかもしれません。そして、不死王からは別の話が来ています。『頼むから前魔王を返してくれ!私ではまとめられない!』と必死に懇願されていますね。どうしますか?」


「う~ん・・・」


思わず頭を抱えたくなってしまった。

その元凶に視線を向けると・・・


「魔王様・・・、そんなに妾を見つめて、改めて惚れ直したか?」


とても蠱惑的な笑顔で俺を見つめてくる。

見た目は20代前半かな?真っ黒な艶やかなロングヘアーに真っ赤な瞳は印象的だ。胸もとても大きく、その大きさを自慢するかのように大きく胸元が開いた真っ赤なドレスを着ている。

美人の中の美人に間違いないだろうし、とても色っぽいから彼女の熱い視線には毎回苦労させられている。

正直、困った存在だ。


「カーミラ、いい加減に元の魔王に戻らない?お前の部下が不死王を継いでいるけど、お前ほどのカリスマ性も無いし、戻って欲しいと泣きが入っているのだが・・・」


しかし、そんな俺の言葉を無視してニコッと微笑んだ。


(クッソ~~~、全く聞く気が無いよ。しかもだ!こいつのおかげで俺は恋愛も出来ないんだぞ!)


「何度も言っているが、妾は戻る気はないぞ!我が身を捧げるのは魔王様、あなただけだ。それ以外の者からの指示は受けない!」


「じゃぁ戻れ!命令だ!」


「そ、そんな!」


ガーン!とした顔で俺を見つめている。


「俺以外の指示は受けないんだろ?そういう事は、俺の指示なら聞くんだよな?不死族の魔王との関係を良好にしたい。だから戻れ。」


「そうか・・・、分かりました・・・」


スッと彼女の姿が消えた。

いきなり戻るとは驚きだけど、こんなに素直に俺の言う事を聞いてくれるなんて、絶対に何か裏があると勘ぐってしまうのだが・・・


1分もしないうちに彼女が戻ってきたよ。

しかもだ!全身がなぜか返り血だらけなんだけど・・・


(怖い!怖いよ!)


そして俺の前まで来て封筒を差し出した。


「何だ?」


ニコッと彼女が微笑んだ。

とても美しい顔の笑顔で、本来なら魂まで抜かれる程に見惚れてしまうのだろうが、顔にも返り血がべったりと付いているし、完全にホラーだよ!美人が台無しだ!


封筒を受け取り中の手紙を取り出して読むと・・・


『もう2度とカーミラ様に戻って欲しいと言いません。魔王様にご迷惑をおかけし大変申し訳ございませんでした。カーミラ様とは末永くお幸せに。PS.結婚式に呼ばなくても大丈夫です。体の修復にかなりの時間がかかるもので・・・』


「おい・・・」


何なのだ、この文章は?

しかもだ!この手紙にも血が大量に付いているぞ!


「カーミラさんや・・・、これは何かな?」


とても清々しい笑顔でカーミラが微笑んだ。

ただし、返り血だらけの顔だし、ホラーな状況は変わらないけどね。


「見ての通りだ。現不死王とじっくりとOHANASHIをしただけだぞ。いやぁ~、素直に妾の話を聞いてくれて良かった。」


カラカラと彼女が笑っているが、あっちの方でどんな惨劇が起きたか想像が出来る。

じっくりと言ったが、1分も経っていないお話なんて碌な話じゃないだろうな。

本気の彼女にやられて無理やり手紙を書かされたのだろう。それもマッハの速さで・・・


(このヤンデレ吸血鬼め・・・)


彼女が元の場所に戻り席に座った。相変わらずの血まみれの恰好だけど・・・


「これで妾も四天王の一員として問題無いな。もう2度と不死王からの懇願は無いから、ずっと妾は魔王様と一緒にいられるのだ。ふふふ・・・、早く妾を受け入れろ。寂しい童貞生活も終わりにしてやるからな。」


(勘弁してくれよ・・・)


他の3人の四天王も苦笑いをしているよ。

何でこの場で俺が童貞だとバラされなくてはならん!

恥ずかしさで穴があったら入りたい・・・


このカーミラは悪魔族ではなく不死族なんだよな。

しかも、不死族最強のバンパイアだ。本人は永遠の20歳と言っているけど、俺が知っている限りでは数千年も生きているはずだ。それだけ長生きしているから強いのは分かる。

だけど、歳の事になると誰も話をしようとしないし、カーミラを見てブルブルと震える程だった。

まぁ、カーミラの前で歳の話はしない方が身の為だね。誰だって死にたくないしな。


彼女は俺がクソ親父を倒し新たに魔王を名乗った直後に俺の領地に侵攻してきた。

俺が領地の人民を掌握していないだろうと読んで攻めてきたのもあるけど、暴君と言われた親父に勝った俺の実力を見たいといったのが本音だろう。

魔王の中では親父の次に好戦的だったし、下剋上が起きたと聞いて血が騒いだと言っていたな。

その彼女を俺が返り討ちにしたのだが、ホント、よく勝てたと思うよ。それくらい彼女は強かった。多分、竜王や獣王よりも強いのでは?

俺は他の領地に攻める気は無いので、残りの2人の魔王とは争いを起こす気は無い。

だけど、カーミラに勝った後に2人から親書が届き、お互いに不可侵の条約を結ぶように言ってきたので、俺はその話を承諾した。

まぁ、不可侵条約を結んではいるけど、この国は血の気が多い戦闘民族ばかりの国だ。領地の境界では小競り合いがよく起こっているが、まぁ一種のガス抜きみたいなものだと思っている。

本気で領地へと侵攻するつもりは無いだろう。多分な・・・

条約を結んだ際に人質?として竜王と獣王の娘が1人ずつ送られてきたけど、彼女達には手を出していないし、今はメイドとして働いてもらっている。

2人揃ってとても美人だ。いつかは俺の部下と結婚させてもいいかもしれない。

俺との結婚は絶対に無理だしな。


(絶対にあのカーミラが黙っていないからなぁ・・・)


俺に負けたカーミラだが、やはり魔国の習わしなのか強者に絶対服従との考えが強く、それからずっと俺のそばにいる。今まで負けた事も無かった彼女だし、俺に負けた事で完全に惚れられてしまった。

最初はストーカーから始まったけど段々と過激になり、いつの間にか四天王の1人を精神的に追い込んで失脚させてしまい、その座を奪って現在は四天王の1人として堂々と俺に結婚を迫ってくる。

基本は変態女だけど、さすがに数百年も魔王をしていただけあって仕事に関してはとても優秀だ。


(このヤンデレが無ければ完璧超人なんだけどなぁ・・・、その奇行で全てを台無しにしてしまうよ。)



今は会議の時間なんだけど、カーミラのおかげでかなり脱線してしまった。


早く終わらせて帰りたいのに、そう上手くいかない。

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