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第5話

「ならこれが証拠になるかしら?」


 そう私はブラウン家の紋章が入ったドレスのボタンを見せる。


「え?これって本物?

あんたが本当にあのレイラ・ブラウン?」


 そう男は一瞬戸惑った顔をしたが、すぐ様その顔は怒り顔へと変わっていった。


「お前が、俺の親の仇!」


 そう男は今にも飛びかかって来そうな勢いだったが、私はすぐ様トランクを見せつける。


「半分あげるわ」


「はぁ!?何言ってんだあんた!

あんたがレイラ・ブラウンだと分かってて生きて帰すわけねーだろ!」


 激昂する男に対して、私は冷静に話す。


「あなたのご両親がブラウン家のせいで何かあったとすればごめんなさい。謝るわ」


「謝って済む問題じゃねーんだよ!!」


 そう男は叫ぶ。


「そうね。謝っても宝石をいくら渡しても許されないでしょうね」


「あったり前だ!!」


「でも残念ながら、今の私はもうレイラ・ブラウンじゃないの」


 それを聞いて男は意表を突かれた様な顔をする。


「は?証拠まで見せて何言ってるんだよ?」


「つい先程私は家から追放された。

今はただのレイラよ」


 男はそれを聞いて少し納得した。


「ははーん、成る程ね、あんたの我が儘っぷりにとうとう家を追い出されたと。

はははっ!そりゃあざまーねーな!」


 男はそう馬鹿にする様に笑ってみせた。


「明日にでも私のことは街中に言われるでしょうね。

諸悪の権化が居なくなったって」


「それなら清清するぜ!

これで街も昔の様に安泰だな!」


「それはどうかしら?」


 私は男に疑問を投げかけた。


「本当に街は治安が良くなると思う?」


「は?あんたがもういないんなら、あんな我が儘政治はもう終わるだろ?」


 私はニヤリと笑った。


 ユーリはきっとそこまで計算に入れてないはずだ。


「ところで、貴方は私を殺すの?

殺したところで貴方は今後犯罪者として生きていくことになるけれど?

しかもこれから治安が良くなるというなら、これ以上に警備だって厳重になるんじゃないかしら?」


 私は至って冷静に判断する。


「あんたさ、さっきから状況を分かってなくないか?

俺以外にも、あんたを殺したがってる奴は五万といるんだぜ?」


 男はそうポケットからナイフを取り出した。


「俺が直々に仇打ち出来るなんて、ラッキーだ」


「そう、残念ね。

結局貴方も民衆も騙されてる馬鹿ばかりか」


 私は落胆しながらそう言った。


「はぁ!?馬鹿ばかりとは何だよ!?」


「私を殺したい気持ちは分かったけれど、どうせ殺すなら犯罪者ではなく勇者としての方が良くないかしら?」


 私はそうナイフを握る男に提案する。


「何言ってんだあんた」


「だから、公正な場で私を裁くのよ。

今殺したら貴方はただの犯罪者だけれど、みんなから死刑宣告されたら貴方は犯罪者にはならない。

悪を滅ぼした勇者ということ」


 その提案を、しかし男は首を横に振った。


「死刑になったら、普通は死刑執行人が殺すだろ。

そんなの勇者になれない」


「だから、私が死刑になったら、その死刑執行人に貴方を選ぶわ。

最期の私の我が儘くらいは通るでしょうし」


 確かに、死刑囚の最期の願いというやらは、実現可能なものであればなるべく叶えるのがこの国の方針だ。

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