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第16話

「……ごめん、なさい」

　それからアンドリューは小声で謝ってきた。

「え？別に謝らなくてもいいわよ。

仕方ない事だし」

　そうレイラはあまり気にも留めずに答えた。

　すると、アンドリューは土下座し出した。

「申し訳ございませんでした！」

　それを見てレイラはびっくりする。

「いや、ちょっと、急にどうしたの？」

　レイラは慌ててアンドリューの元へ駆け寄った。

「だって、俺あんたの事親の仇だと思って酷い事したし……」

　そうアンドリューは何とも申し訳なさそうな顔をする。

　いつも不機嫌な顔しか見ていなかったから、こんな顔もするんだなとびっくりする。

「それに、正直途中から聞いていた話と全然違ってて、でも親の仇だって無理矢理思い込む様にしてて……」

「そう言えば、アンドリューのご両親は何があったの？」

　私はそう尋ねる。

「ああ、実は……」

　そうアンドリューは話し出した。

　アンドリューの両親は宝石店を経営しており、割と裕福な生活をしていた。

　ところが、突然増税と宝石類の献上が決まり、取り立ての人達がこぞって店に入ってきた。

「レイラ・ブラウンお嬢様からの命令だ。

ありったけの宝石を献上しろ。　」

「そんな、突然困ります！」

　父は勿論抗議した。

　しかし、すぐ様取り立ての人は父を殴り飛ばした。

「ぐはっ！」

「父さん！」

「あなた！」

　俺と母は殴られた父の方へと駆け寄った。

　すると、宝石のショーケースの角に頭が当たったらしく、父はそのまま亡くなってしまったのだ。

　取り立ての人たちも、まさか死んでしまうとは思わなかったらしく、動揺していた。

「この人殺し！」

　そう母は叫んだ。

「なっ！大体この男が抵抗するから悪いだろ！？」

「でもこのままではまずいですよ！」

　そうもう1人の取り立て屋が言う。

「……なら、目撃者全て消せばいいだけさ」

　そう取り立ての男が笑った。

そして、俺と母に銃を突きつけて……

「俺は銃を撃たれた後、当たってはいなかったがびっくりして気絶したのを、死んだと勘違いされて助かったんだ」

　私はその話を聞いて固唾を呑んだ。

　私が知らない間に、街でそんな事が起こっていたとは。

「目が覚めた時には、宝石や、他の金も全部持ってかれて、残されていたのは、父と母の遺体だけだった。

それから俺は、日雇いなりして何とか生き延びていた。

本当は復讐なんて考えてなかった。

あんたの名前を聞くまでは」

「……そうなんだ」

　てっきり盗み何かで生計を立ててるとばかり思っていたと言うのはよそう。

「あんたの名前を聞いた途端、父と母の事を思い出した。

俺が今まで生き延びたのは、あんたを殺して復讐を果たす為だったんだと思った」

「そっか……

それはさぞかし辛かったわよね、

私、何も知らずに、まさかそんな事が街で起こっていたなんて……」

　私は何と言ったらいいか分からなかった。

「でも、あんたも被害者なんだろ？

その妹のユーリ？って奴が本当に悪い奴なんだっけ？」

　そうアンドリューは私に尋ねる。

「ええ、でもアンドリュー、もしユーリを捕まえたら復讐の為に殺すの？」

　私はアンドリューの目を見据えて聞いた。

「……

分からない。

正直憎いよ、両親を殺したあの取り立て屋も、下らない事を決めたユーリって奴も。殺してやりたいくらい憎い」

「でも、私アンドリューには人を殺して欲しくないな。

きっと、後悔すると思うから」

　私はそうアンドリューにお願いした。

「……考えとく」

　そうアンドリューは俯きながら小さく答えた。