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イラナイ

 俺はあの日を思い出していた。


 RIBERIONが、アマチュアバンドとしては有名になり始めた頃。声をかけてきたプロダクションがあった。


 そのプロダクションは有名なところで、見る目だって確かだった。プロモーションも抜群に上手い、まさしくやり手という言葉がふさわしいところだった。


 だが、プロダクションってやつはそれぞれに特色ってやつがあるもんだ。当然、RIBERIONに声をかけてきたプロダクションだってある特色を抱えていた。


 それは、女性アーティストのリリースに特化している、というもの。


 当然俺は言われた。


「キミは、うちには要らないかなあ」


 ――その日、俺の部屋がひとつ封印された。


 * * *


「ここは……」


 みづきを連れてやってきたのはμ’sだった。


 すでにライブを終えたμ’sの窓は、しかしまだ明るかった。軒先では何人かがタバコを吸いながら駄弁っていて、二階のバーからは打ち上げの最中からか、時折笑い声なんかが聞こえていた。


「どうしてここに?」


「ついてくりゃ分かる」


 後ろのみづきにそう告げて、μ’sの中に入る。


 するとたまたま、奥の方からオーナーがちょうど現れたところだった。


「おうりゅーこ。なにしに来たんだお前」


「ッス、スタジオ、借りようと思って」


「はあ? これからだぁ?」


 盛大にオーナーが顔をしかめる。とても嫌そうな顔だ。


「お前時間分かってんのか。無理に決まってんだろこれからなんて」


「そりゃ、分かってますけど」


「分かってますけど、じゃねーよバカ野郎。帰れ帰れ」


 そんなこと言いながらも、オーナーは一度また奥に消えると、すぐに出てきて俺に鍵を放って渡してきた。


「ったく……久々に顔出したと思ったら、こんな時間にスタジオ貸せとかよお。ほんと、お前変わってねーなこのボケが」


「オーナーの口の悪さも相変わらずっすけどね」


「俺のどこが口悪いってんだ? ぶん殴るぞコラ」


 そういうところだよ。


「それじゃ、借りますね」


 みづきを伴い、スタジオへと向かう。だが、そんな俺にオーナーが話しかけてきた。


「おいりゅーこ。言っとくけど、スタジオはラブホじゃねえかんな。妙なことすんなよ」


「誰がそんなことするか! 別にただ……ちょっと探し物するだけっすよ」


「探し物か」


 なるほどな、とオーナーが呟いた。

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