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誰よその女

「おっ」


 いつものコンビニに辿り着いたところで、俺はそんな声を上げていた。


 コンビニの軒下、毎朝俺が一服しているその場所で、最近では見慣れてしまったピンク髪の女子高生が、スマホ片手に佇んでいたのである。


 スマホからはイヤホンコードが伸びていて、彼女の耳に繋がっている。音楽でも聴いてるのかもしれないその少女は、言うまでもなくみづきであった。


 今日は学校は休みなのだろう、いつもの制服姿ではなく、ホットパンツにTシャツといったラフな服装だった。


「わあ……キレー……」


 と、隣の奏が感嘆の声を漏らす。彼女の気持ちが俺にも分かった。


 ま、みづきは確かに見た目だけならとんでもない美少女だ。日本人離れしたハーフ顔に、金髪と赤毛の入り混じったピンクブロンドはとにかく目を惹く。可愛いと綺麗を兼ね備えていて、下手なアイドルよりも華がある。


 実際のところは、万引き未遂をしたりとか、未成年の癖に酒やタバコを買おうとしたりするとんでもない娘なのだが……そんなものは見た目からでは分からない。


 初見の奏がうっとり見惚れるのも無理のない話である。


 みづきに近づくと、彼女はこちらに気づいたのかイヤホンを耳から外しながら顔を上げた。


「よぉ。奇遇だな、こんなところで」


 そう話しかけると、彼女はムスッとした表情でこちらを睨みつけてくる。


「……奇遇だと思ってんのはどこかのお節介で説教臭いおっさんだけだし」


「あ?」


 ぼそり、と何事かをみづきは呟くが、声が小さくてよく聞き取れない。


 つい問い返すと、彼女は不機嫌な声で、「別になんでもないから」とつっけんどんに言い放った。


「なんで、出会い頭で不機嫌よ」


「……朝から待ってた……三時間も待ってた……もうくったくた……」


「だから、声が小せぇって」


「うるさいなあなんでもないじゃん」


「お前のその態度の、どこが何でもねぇんだよ」


「お前なんて人知らない」


 ぷんすかとみづきが顔を背ける。なんだこの態度の悪さは。


 ったく……相変わらず、ガキみたいなやつだ。いや、ガキなのか? 十六だし。めんどくせえやつだなあ……。


「あのなあみづき。不満があるなら、言ってくれねえと分からねえだろうが」


「言ってもいいけど」


 瞳にやや恥じらいの色を浮かべ、彼女は少し視線を落とした。


「…………恥ずかしい」


「ああそう。じゃ、無理に聞かねえよ」


「うん。……それより」


 そこでみづきは、不意に視線を奏に向けると、どこか冷淡な声で問いかけてきた。


「誰よその女。タツトラ君のいったいなに?」


 ……なんだよそのメロドラマみたいな言い回しは。

しゅらーば

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