本当にその作品、諦めきれますか? SF風に教える作品再建のためのリブートとリメイク
作品を投稿して、自分の思うような評価を得られない事はごく当然にあります。
いくら自分が面白いと思って書いてもウケなくて、ヘコむことも沢山。
長期的な連載を見越して念入りに随所の設定を練り、何年も連載した――。
とはいいものの、その熱の入れ具合とは裏腹に読者が全然つかず、大勢の人から批判や否定的な意見ばかりもらって燃え尽きてしまう人もいる。
中にはもう完全に心が折れてしまい、アカウントも作品も全て消し飛ばしていなくなる人も珍しくありません。
ただですね、ちょっと待って下さい。
私はそういう人たち、なりかけてる人たちに一つ訊きたいことがあります。
本当にその作品、諦めきれますか? あなたに心残りは何もないのですか?
もしも、まだわずかでも後悔や未練を感じ、諦めきれないのであれば――。
タイムリープしてみませんか?
過去に戻り、今度こそ世界を救うのです。あなたの自慢の、そして大切な作品の世界を。
かつて自信に満ち溢れたあなたが愛をこめて作り上げた世界を。
そしてその世界に住まうキャラクターたちを。
無論、現実の時間を遡ることは不可能です。
が、あなたの作品世界の次元だけならば、あなたがその気になれば巻き戻すことが可能です。
あなたの心が折れる原因となった悲劇が起こる以前に、<リブート>または<リメイク>という古代から伝わる"魔法"を使うことで戻れるのです。
<リブート>により物語の歴史をゼロに巻き戻し、それまでと異なる歴史を突き進むか。
それとも<リメイク>によりこれまで歩んできた物語の歴史をもとに、新たな歴史を紡ぐかはあなた次第です。
まだまだ展開したかったが誰も見向きせず、物語途中で打ち切りするしかなくなってしまった作品。
完結はしたが低評価で自分の思うような評価を得られなかった作品。
それらをもう一度だけやり直すことで、自分の理想に近づけられる可能性がわずかでも生まれます。
過去を遡ってもあなたが経験したものは引き継がれます。つまり、遡る前の強さを過去へ持っていくことが可能です。
見てみて下さい。間違いなく今のあなたはその遡った先の部分を昔書いていた頃よりも、作風に変化があるはずです。
どんなに些細なことでもいいんです。例えば、この頃に比べれば今は三点リーダーやダッシュが上手く使えてるなとか。表現が上手いなとか。
そして一番気づくことがあるはずです。『今読んでみるとこの頃の自分の作品ショボイな』と。
それこそがあなたの成長です。これまでの道を歩いてきたからこそ培われたもの。『今ならもっと良いの書けるぞ』と思いませんか?
ならばそれを武器にもう一度、過去に戻って世界を救う道もあります――。
ところが当然、タイムリープも良いことばかりではありません。悪いこともあります。
一つが作品展開が巻き戻るため、それまでの話の続きを楽しみにしていた読者にとっては酷であること。
<リメイク>はゲームやアニメのシリーズみたいに何かを記念して現行作品の制作を続けながら一種の催しとして行うことも出来ますが、ここで扱うものは作品やシリーズをやり直すための<リメイク>なので意味が異なります。
もう一つが過去に遡るゆえにそれまでに倒された悪役や不幸にも死んでしまったキャラクターも一緒に蘇ることになり、主人公と周辺人物の人間関係もリセットされてしまいます。
何かしらのアイテムが物語の鍵を握り、それが消滅したり敵に使われることで物語が大きく動くのであれば、尚更そのアイテムの扱いも考えなければいけませんね。
これらは<リメイク>の場合は遡った先でそれまでの物語の歴史に沿った新たな書き直しが必要となります。でないと<リメイク>とは言えないでしょう。
むしろその反対こそまさに――それまでの物語の歴史に囚われない意味で――<リブート>と言えます。
そして最後。これは、それまでのあなたの作品世界と別れなければならないことです。
<リブート>にしても<リメイク>にしても、ストーリー展開を変えたり、設定用語の呼称を変えたり、キャラクターの設定や人間関係、役割を変えたりすると一種のパラレルワールドが生まれます。
つまりそれまでの作品世界とは実質異なってくるわけです。完全にタイムリープ出来るのはあなたと、あなたがこれまで培った経験だけなのです。
そのパラレルワールドが元の作品世界とかけ離れればかけ離れるほど、その別れが精神のコストとなって重くのしかかるでしょう。
作品を再建させるためのこれらタイムリープはそう何度も出来ません。
それを繰り返せば、"ここまで紡いできた歴史"と"生まれたばかりの歴史"がごっちゃになり、読者は混乱し自分さえも何がしたいのか分からなくなり、目的を見失ってしまいます。
タイムリープの度に新たな歴史が生まれるのです。
同じ悲劇を繰り返さないためにも、焦って動き出すよりはじっくり時間を置いて心を整理する時間も必要だと思います。
過去へ行く前に参考書を読んだり取材活動を活発化させたり、悲劇を体験した上で反省点を振り返り、遡った先で活かすといいでしょう。
同じ悲劇をもう繰り返さない。一度失敗した作品を過去に遡ってやり直すことを決められたのなら、あなたはいわば時空を遡るタイムトラベラーです。
ここまで自分で紡いできた歴史の流れを一度断絶し、やり直すことが<リブート>、<リメイク>という魔法を利用したタイムリープです。
勿論、ここまでのことをしてやり直しても、その作品が必ずしもヒットするとは限りませんし並大抵のことでは難しいでしょう。
タイムリープは自分の夢や野望、理想を必ず実現してくれるツールではありません。
一番大切なのは時を遡るチカラではなく自分はこの作品とどうしていきたいのか。
『もう無理だ、この作品でやるのは諦めた。だから全く新しい新作を作る』
それも立派な選択ですし、タイムリープとは違うそれまで紡いできた歴史の断絶です。
失敗して、そこからどう創作活動の舵取りをするか――。
そのために出てくる様々な選択肢の一つに、タイムリープがあるだけにすぎないのです。
読んで下さってありがとうございました。
自作品をボロボロに叩かれて、その作品に対して後悔や未練があるならば、時間かけても一度は立ち上がってそれを満たすための活動をすることが一番の薬であり、諦めきれない感情が自分のどこかにある証拠です。
挑戦権は誰にもあります。このエッセイが自作品の再建、あるいは挫折からの立ち上がりのきっかけになれば幸いです。