九十六話「夜明け......スズハと嘘、そして飛翔する舟(アメノトリフネ)」
もう少しで百話ですか
実は外伝でも書こうか考えてます。
スズハのプラモデルボディは、陶器の器が壊れるかの如く衝撃により四散した。
「見つけた! データカード! 」
砕けた上半身パーツの背部に、データカードを発見するユナ。
おもむろに拾い上げると、熊手ソードで回路と、データカード部分を器用に引き裂いた!
クマの背後に浮かび上がる赤い血文字のイメージ。
「 FATALITY ! ( フェイタリティ! )」
街的なファイターなイメージかと思いきや、モータルでコンバット的な殺伐なイメージでござった。
「これで大丈夫! 回路が焼ける前にボディを壊した! 」
「更にデータカードと回路の間も、ついでに真っ二つ! この隙を生じぬ二段構え! (ドヤ顔)」
ユナはこれでもかと言う程に、スズハの危機を救った......が。
「パープルの話......きっと嘘ね」
「 へ? 」
霊体になったスズハは、高らかに掲げるポーズでデータカードを持つユナに、事実を伝える。
「アドミニストレータが言ってたけど、軛データなんて存在しないわよ......きっと嘘の演技ね、彼は劇団員だもの」
ボディを失ったスズハは、虚空に浮かび上がる霊体になった、亡霊なら消滅もあり得る緊急事態だが......霊体は消えない。
「私......やっぱり、まだ生きてたのね。」
「処理装置とか言ってたけど、本当は......それがハッタリね、パープルさんはやっぱり嘘が下手だわ......」
「ええええええ! 」
ガックリくるユナを尻目に、スズハは壊れたプラモデルボディを見て言う。
「このボディの縛り......自分で思い込んで、強くしてしまった私を......解き放つための細工と演技だと思うわ」
「焼け始めて驚いた所を、誰かにボディを壊して貰う......、初めから私を解き放つ算段じゃないかしら......」
スズハの霊体は崩れる事なく輝く、これから長きに眠って居た自身の肉体に、向き合う覚悟を見出だしたかのように。
「殻に閉じ籠って誤魔化して亡霊を演じてきたけど......もう殻に閉じ籠っても籠る殻が無いわ」
空を見上げる。
光が見える。
もう夜明けが近い。
「大人しく戻ってあげるわよ、元の体で会えたら覚えてなさい、......ザジ」
微笑みかけてトゲのある言葉を言うスズハに、ザジは微笑み返して言う。
「うん、覚えとくよ......助け出せたら二依子と三人で会おう! 」
「......」
スズハは霊体が肉体に引き寄せられる感覚を覚える。
「時間ね、言えた義理じゃ無いけど......」
「お願い、二依子を救って......」
そう言うと彼女の霊体は、朝の日の光に乗るように、流れ星の軌跡を描き......
飛び去っていった。
朝日が射し込み、スズハの帰還を歓迎している様に大きく、街を包んでいく......
「さあ、覚悟しなさい......ってあれ? 」
ユナの敵意はパープルとポリマーに向けられる......
筈だった。
だがそこには居らず、ユナの視界の遥か遠くに映っていた。
「ああああ! 逃げた! 卑怯者! 」
「......してやられたな」
荒ぶるユナを宥めるザジ。
プラモデルボディからはみ出た霊体は、参ったなと言わせる様なジェスチャーをしていた。
******
「良い演技でしたパープル、今回の作戦の要をよく遂行してくれました。」
教団亡霊ポリマーとパープルはすでに、ザジ達の前から姿を消していた。
そしてポリマーに運ばれて、パープルはアドミニストレータより労いの通信をもらっていた。
「慌ててるあのガキ二人の顔が滑稽だったぜ、アイツら掌で踊ってたとも知らずに頑張りやがった」
「お陰で、ずいぶん楽に秋山を体に戻せたよな」
パープルは清々しい顔で感想を述べる。
「パープルさん、スズハちゃん気に入ってたでしょ? 生前に結構気にかけてましたよね」
パープルを運ぶポリマーが言い、パープルはスズハの事を語る。
「やっぱり天国は俺達だけで良い、あの子は俺達の紅一点であって、キールとちょっと良い関係だった......それだけだ」
ポリマーがパープルの返事に笑う。
「それ、絶対あばよ! ってカッコつけて演技してるだけじゃないですか」
「んだよ! 悪いかよ! モテない亡霊の僻みだよ、モテる必要性ないけどな! 」
パープルとポリマー、教団亡霊二人の談笑が続く。
目の前に舟の霊体の艦橋が見えてきた。
「夜明けだ、出航の準備だ! 錨を上げろ! 」
「行こうぜ! 天国! 」
パープルの霊体は、アドミニストレータの前で大きく手を空に上げて、掴むように仕草した。
「ええ、こちらも出航の準備が出来ました、キール君をちゃんと解き放つ事に成功しましたよ。」
「後は"鍵役"の二依子ちゃんを起こして、俺達で天国の扉を開くだけだ! 」
出迎えたアドミニストレータの霊体に、上げていた手でパープルがハイタッチ。
その後パープルとポリマーは二依子のプラモデルボディを脱ぎ捨てる。
二人は新たなオリジナルボディを得るために、棺の様な格納庫に入った。
「俺達の旅路に乾杯」
棺の中でそう言う仕草をしながら、彼は新たなボディを得て状態を確認していた。
******
舟の霊体下部では、サーバーの電源破壊のため、菊名と愛華、ねぱたとよしこが行動していた。
「こちら第一サーバーの愛華&菊名、電源装置を破壊に成功! 」
電源装置には沼島ナックルが突き刺さっている。
「第二サーバーのねぱたや、こっちも破壊に成功したで! 」
ねぱたも破壊が終えており、近くにはねぱたの今のボディの持ち主の子供も、助け出す事に成功している。
「アオンワオオオン! (此方よしこ第三サーバー、破壊成功)」
よしこもテイルブレードにより、電源装置を破壊していた。
「おおおおお! やった!やったぞ! 」
これら吉報を皮切りに、すべての人質達が一斉に称賛の声を挙げ始めた。
「ありがとう! みんな! 亡霊の人達には感謝しかない! ありがとう! 」
ザジ達亡霊には、思いもよらない感謝の声はとても大きく、ちょっともどかしく思える程に......。
「あかーん、そんな言われたらテレるわー! 」
テレテレで困り果てるねぱた、サーバーから帰還している三組(ねぱた、よしこ、菊名&愛華)は喜びの仕草を見せた。
愛華と菊名は言う。
「あと一人、助けなきゃならない人が居ます! 」
「「二依子センパイです! 」」
「みんなの力を貸して下さい、最期の一人の救出をするために! 」
この二人の願いと宣言と同時に、残る二依子の救出に力が入った。
「よし!......後は艦橋のサーバーだな! 行くぞ全員突撃! 」
ダニエル達が集う憑依玩具戦線の最期の攻撃である。
戦艦AWAJISIMAが突撃形態で発進する!
......
「パージ」
......
何処からともなく聞こえた声、霊声は明らかに舟の霊体から聞こえており。
その言葉はまさしく切り離しを意味していた。
「何!? 」
「何や!? 」
「ギャオン! (これは! )」
内部で電源装置の破壊を行って、撤収していた三組は大きくたじろく。
鳥の声や大きな音が周囲に鳴り響く!
パージ......その言葉の通り。
第一サーバー、第二サーバー、第三サーバー。
それぞれが舟の霊体の下部から、抜け落ちるように切り離される!
「何じゃと! サーバーを捨ておったぞ!」
頭目がその舟の、変わっていく霊体の姿をみて驚く。
舟の霊体は外装を脱ぎ捨てると、大きな翼を広げ始める。
その姿は......
恐ろしい亡霊の舟"ナグルファル"が割れ......
輝く、"アメノトリフネ"が出てくるような幻想的な光景だ!
「いかんぞ! 奴ら飛ぶ気じゃ! 」
......そう!
舟の霊体が飛ぼうとしているのである。
巣を思わせる結界が破れ、天井らしき部分が割れ、舟の霊体が浮き上がった!
その姿を少し離れた場所で、ザジ達も見ていた。
「二依子......! 」
ザジは急いで戻ろうと必死だが、間に合わない。
「させるかね! 諸君、行くぞ! 今が踏ん張り時だ! 」
上空で舟の霊体と、対峙するダニエル率いる戦艦AWAJISIMAが激突する!
大きさは舟の霊体の方が遥かに大きい、だが防壁を失った以上、勝算を感じる。
ダニエルはそう確信していた。
「いやあ、御対面だねえ......」
その声に戦艦AWAJISIMAは、舟の霊体の艦橋前で停止。
声の主である、艦橋サーバーの上で舵を握る謎の亡霊の姿を見て、ダニエルと憑依玩具戦線の残存勢力は射撃武器を構える。
「君がアドミニストレータだね、今回の事件の首謀者で間違いないね」
「ご同行願おうか......」
ダニエル達残存勢力は、ついにアドミニストレータにチェックメイトを差すべく、全ての戦力の標準を突きつけたのだ!。




