九十四話「スズハの真実」
ゆっくり結末に向けて進んでいきます
何とか暇が取れそう
「よく、そのボディで出てきてくれたわね......」
スズハが激しく睨み付けて言う。
それもそのはず、彼女達の教団亡霊のボディである二依子のプラモデルは。
過去にザジに破壊されたのを改修したものだ。
そしてその時のザジのボディが、今のオリジナルボディ。
ここで会ったが百年目......スズハ達にとって、そう言うべき相手だ。
「忌々しい! 今度こそ串刺しにしてやる! 」
スズハはまるで親の仇にも会ったかのような、鬼の形相で飛び出してくる。
「......」
ザジは静観しながらも、その突撃を捌く為にシールドを構える。
スズハの赤いプラモデルボディが怒涛の連撃!
霊力スキルの乗った刺突攻撃が幾度となく繰り出される。
だがザジの構えたボディのシールドには、先程の霊力スキル「ハイ・ファントム・クリスタルシールド」の効果が残っており。
シールドに張り付くように残った霊力の結晶が、スズハの槍の連撃を防ぎ切った。
「く......、クソ過ぎるわよ、そのスキル! 」
スズハは憤慨しながらも霊力不足で疲労困憊である。
ザジはそれを静観しながら、哀れみを感じているのか反撃に移らないでいた。
その情けにスズハが怒り、更に荒ぶる。
「ふざけないで! 何が"ハイ・ファントム"(上位亡霊)よ! 人間の魂なんてみんな同じよ! 」
「なのに何故"強さ"に差が出るの? "何が"違うの! 」
彼女は自身の霊力の無さを嘆いていた。
せめて舟の霊体に繋がってる時位は......と背伸びするように加護を受けていた。
だが舟から離れたらどうだろう。
実際、霊力量がユナにも及ばないと言う現実が、彼女に突きつけられているのである。
「ザジ君......この人まさか......」
ユナはザジの様子を見て何かに気が付いたようだった。
「ああ......そうだな」
ザジはこのスズハの様子に確信を得ているようだ。
人は生きている以上。
魂からやってくる"力"が在るとするなら、肉体に充てられてるのが殆どであり......
憑依プレイヤーの様に、一部の余剰部分から霊力を切り出して充てる事で、肉体以外のボディが動く。
......というのが此処の世界での常識と見てもらっていい。
肉体のないザジ達の熟練した亡霊の様に、その"力"をもて余すことなく使いこなしている者も居れば......
同様の教団亡霊の様に熟練性は無いものの、多様性に富んでいる者も居る。
ここでの彼女、スズハの霊力は明らかに弱い、背後に居る教団亡霊二人の方がずっと強い。
ユナは疑問に思っていた。
肉体に霊力が充てられてる?
つまり彼女の"肉体"は、生存しているのではないか?
それは、彼女の事を調べていた頭目の意見でもある......
「家族による死の偽装」などで生存しているのではないか?
という推理が始まっていたのだ。
「落ち着いて聞いて下さい、秋山青々花さん」
ユナが改まってスズハの自身の存在を問う。
「やはり貴方は"生き霊"なんです、まだ何処かで生きている。」
スズハはその言葉に反応した!
「うるさい!」
「そんな事は聞きたくない! 」
そう......それは明らかな自覚。
彼女は自身の生存を否定したいが、現実がそうではない事を恨んでいるのだ!
「あのボディを破壊しよう......ユナ」
「ザジ君......! 」
ザジがここで攻撃の提案をしてくる。
ユナはその意見に賛成のようだ。
「スズハの状態はアプリで憑依している状態に近い、肉体の生存が霊力に出ているなら......」
「霊体と肉体の"軛"は壊れていない! 」
そのやり取りの中で、スズハの後ろにいる教団亡霊パープルとポリマーの二人は、何やら合図を送っている。
「パープル......」
「ああ......そうだな」
スズハにもわからない様に行われた、二人のアイコンタクト。
ライフルの様な射撃武器を構えて、教団亡霊のパープルが目の前のザジやユナ、スズハに対して以外な行動に出る!。
「動くな!」
唐突にパープルが射撃武器の銃口を、「目の前に向けて」叫んだ!
「......え! どうして? 」
ここで声を上げたのは、何とスズハ。
パープルのライフルの銃口は、明らかにスズハの背中に向けて。
突き付けられているのである!
「パープルさん......何をしているの! 冗談はやめて! 」
混乱するスズハ、だがここでパープルは強く叫んだ!
「動くな! そう言ってるだろうヒドランジア......いや秋山......! 」
ザジがこの状況に怒りを覚え、パープルに問う。
「どういうつもりだ! 仲間じゃないのか!? 」
「仲間だよ......でも亡霊仲間じゃあない」
冷酷なパープルの返しに、スズハが驚愕した!
「なんで? どうして! こんなことに意味なんて無いでしょ? 」
「意味は有るさ......銃口の先にあるのは、霊核データの詰まったデータカードだ、我々のボディに仕込まれてる。」
パープルの言葉に反応し、同僚のポリマーがボディの背中をザジ達に見せる。
明らかに何かを取り付けた部分が見える。
「ここさ、こういう部分に入っているデータカードだ」
「僕達のカードには霊核のデータが入っているが、彼女のカードには......」
「肉体との軛である、軛データが入っている! 」
その事実にスズハが驚いた!
「嘘......! 嘘よ! やめてよパープルさん! どうして......」
「こんなことするの!? 」
動けないスズハは固まったまま動揺する!
ザジもユナもこの裏切りに介入出来ないでいた。
教団亡霊パープルが言う。
「これは初めから計画されていた事なんだ。」
「状況においては、君を真っ先に"切り捨てる"予定だったんだよ......」
パープルは、霊体のまま赤いプラモデルのスズハに銃で撃ち殺すジェスチャーをした。
「どういうこと......!? 私が何をしたって言うの? 」
パープルとドッキング準備に入ったポリマー、いつでも脱出できる状態を完成させて言う。
「あたりまえだ、君は覚えて無いだろ......入滅の日に逃げ出した事を。」
「え? ......私は......そんな事を!? 」
スズハは霊体で愕然としている、だが次第に思い出してきた様に記憶がフラッシュバックしていく。
......そう、日下部 喜一と共に入滅の日に逃げ出したという......「彼女」とは。
ヒドランジアこと、秋山青々花だったのである。




