九十一話「愛華の拳」
今度またキャラやプラモデルのイメージのまとめをやります
「どう言うこと? みんな意思を持ったまま捕まってるってこと?」
菊名は教団亡霊との戦闘中に解放された霊体が、教団亡霊に妨害行動をしていた事を思い出した。
「うん......、意識がはっきりしないと霊力を吸収出来ないんじゃないかって、みんな言ってた」
囚人が檻に捕らえられる中、他の囚人との会話が可能な状況が、菊名に想像させる。
「他のサーバーもあってここを含めて3つあるって聞いたよ」
「センパイはどこ? 」
愛華の話を聞いて、菊名は二依子の居場所を問いかけた。
「......」
愛華は首を横に降って答える。
「センパイは何処のサーバーにも確認されてないの......、呼び掛けにも反応がなかった。」
菊名はその回答に困惑を隠せない。
「一体何処に......」
二人の会話に割り込む様に、先程の教団亡霊が起き上がって来る。
そして静かに菊名の疑問の声に答える。
「きっと彼女なら船のデッキにあるサーバーだろう、眠らされている可能性が高い」
立ち上がった教団亡霊、プラモデルのボディは先程の不意討ちで胴体の損傷があり......
霊力の漏れが確認された。
「そんなこと話していいの? 」
プラモデルからはみ出る様にして姿を見せる教団亡霊の男、その疲れたサラリーマンのような背広の姿を見せる。
「もうどうでもいいんだよ!! 天国とか! 人質とか! 」
「俺には知らない関係ない! どうでもいいんだ! 」
「......」
男の様子は変わりなく情緒不安定で、菊名も愛華もその様子に何とも言えない表情を見せていたが......
「......菊名ちゃん、代わって......」
唐突に愛華が菊名に交代を要求してきた。
「? 愛華? 一体何を? 」
菊名が戸惑って居る内に、愛華が宣言する!
「チェンジ・ポゼッション! 」
「 AIKA! 」
フィギュアのパーツが外れる。
菊名を象徴するツインテールの髪パーツが外れ、頭部の一部のパーツが反転。
愛華のショートカットをイメージするパーツが展開し、ヘルメットを象徴するパーツが割れてショルダーアーマーになる。
失った左手のパーツに、沼島ナックルの背面ジョイントが同じ企画のパーツの為に結合が可能であり。
菊名のスタンダードスタイルから、一気に近接格闘スタイルにチェンジしたのだ。
「チェンジ完了! 」
菊名と愛華は、コンビで同じフィギュアを使うプレイヤーである。
交代するというのは、アプリに登録された霊力スキルで、霊力が枯渇しかかった片方に、もう片方が憑依することで霊力をチャージするスキルだが......
「ちょっと......ここで今チェンジしたら......! 」
そう......この状況でのチェンジは、沼島ナックルに入っている愛華と、フィギュアに入っている菊名とのチェンジになる。
「ちょっとおおおおお! 私がナックルになってるじゃない! 」
菊名は沼島ナックルから霊体を乗り出して愛華に訴える様に抗議するが......
愛華は全く見えてない様に感じられる。
「......? 愛華? 」
愛華の視界に先程からウジウジと「どうでもいい」を連呼している、教団亡霊の男の姿。
どうやらこの彼に憤慨しているようである。
「歯あああ食いしばれえええええええええ! 」
大きく振りかぶる愛華のフィギュアボディ。
歪に大きい左手の沼島ナックルが、今......黄金の左となって、教団亡霊の男に襲いかかった!
「これは菊名ちゃんの分! 」
衝撃の初ゲンコツ、けたたましく響く打撃音。
「これは捕まってた私の分! 」
更に続けてセカンド的ナックルが打ち込まれた!
「そしてこれは、貴方を心配していた......お婆ちゃん分だああああ! 」
大きく振りかぶって、トドメのラストブリット的一撃!
沼島ナックルでの強力な三連撃!
教団亡霊のプラモデルのボディは、床に叩きつけられる様に激しく殴り倒された!
「ぐああああああ! (教団亡霊の男)」
「ぎゃあああああ! (ナックルの菊名)」
張り倒された教団亡霊のプラモデルボディの前で、ビシッと指を指した愛華とそのフィギュアボディ。
声高らかに愛華が叫ぶ!
「これで目が覚めたかしら! 起きたら、貴方のお婆ちゃんの所に行って、すぐに迷惑かけた事を謝りに行くのよ! 」
「ちょっと......愛華! まさか今ここで? 」
ナックルの中で困惑する菊名、何か言い出したい様な顔を見せる。
すぐさま殴られた教団亡霊の男が起き上がる。
「何が目を覚ませだ! 何がババアの所に行って謝れだ! 」
「何を言ってるのわかってるのか? 俺は亡霊だぞ! 」
「「死んでいるんだぞ! 」」
(......)
この物言いに菊名と愛華は、互いに顔を合わせ頷いた。
「貴方に、日下部 喜一さんに、"伝えたい事"と"聞きたい事"が有ります。」
愛華と菊名は教団亡霊の男、日下部喜一に「ある事実」を伝えた。
「貴方はお婆ちゃんの前から......"居なくなった"訳で......"亡くなった"訳じゃないんです。」
この二人の言葉に、驚愕の表情を見せる教団亡霊の男、喜一。
慌てて弁解するように叫ぶ。
「嘘だ! 俺はあの時死んだんだぞ! 」
「実際にこのボディにずっと入っているじゃないか! 」
「俺は......あの時......あの......」
教団亡霊の男、喜一は何か思い出したかのように、目を見開いて震えていた。
何かがフラッシュバックしている。
彼の記憶が呼び覚まされた様に見てとれる。
それを見た菊名と愛華は真実を伝えた。
「......貴方は生きているんです」
菊名は喜一に眼差しを向けて語る。
「貴方は入滅の日の前日、一人逃げ出して近隣の山奥で衰弱したところを保護されているの!」
あわせて愛華も、真実を連ねる。
「そして、とある病院で眠ったままになって生かされてるんです!」
「病院以外から"知らない圧力"がかかって、貴方の存在は秘匿になり......貴方のお婆ちゃんは、自分が生きている内にはもう会えないかもしれないと......」
「だから、もう"居なくなった"と教えてくれたんです!」
その事実を受けて、教団亡霊の男、喜一は倒れ込む。
「ああ......何で、こんな事になったんだ......」
喜一は激しく動揺した。
愛華は手を差し伸べて言う。
「教えてください......入滅の日の事、貴方に何があったのかを......」
手を差し伸べている愛華、その霊体からにじみ出る探求の心と、全てを許す慈愛の心が喜一に伝わっていく。
「......そうだ......俺はあの日、逃げ出したんだ......」
喜一は、愛華の問いかけに対し、その事実を語り始めた。




